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■平成18年一般-第4問(労働経済)

次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、この問において「倫理憲章」とは(社)日本経済団体連合会の「2006年度・新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章」のことであり、「白書」とは、「平成17年版労働経済白書」のことである。


(A)倫理憲章において、企業は、在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するために、採用選考活動の早期開始の自粛が規定されており、まして卒業学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む、こととされている。

(B)白書によれば、大学卒業者の就職状況は、平成16年3月時点の卒業者に占める就職率が55.8%、一方、就職も進学もしていないいわゆる無業者が20.0%と高水準となっている、としている。また、高校卒業者の就職状況は、卒業者に占める就職も進学もしない者の割合については、増加傾向で推移していたが、近年は、おおむね横ばいとなっている、としている。白書の分析では、高校卒業者に占める就職率は16.9%、就職も進学もしない者の割合は7.5%としている。また、採用した新規学卒社員の1年目の離職率は、高校卒業新入社員では25.0%、大学学部卒業新入社員では15.3%となっている。
白書では就学期間を終え職業選択を行い、積極的に社会参加できることは1人ひとりの人生にとって重要であるが、現代の若者は就学から就
業への円滑な移行を果たすことができない場合が増えている、としている。

(C)白書によれば、若年者に対しては、長期的視点に立った計画的な採用を行い、基礎的な職業能力開発を行うことなどを通じて定着を促し、人材を育成することによって、その能力を活用していくことが重要である、若年者が定着しないという課題を抱える企業は多いが、積極的な能力開発の実施、面接を通じたフォローアップ、指導係の設置などは、若年者の定着にとって有効であると考えられる、としている。

(D)厚生労働省「平成17年上半期雇用動向調査」により、平成17年1月から6月までの事業所への入職状況をみると、常用労働者のうち一般労働者としての入職は、新規学卒者からは75万人、新規学卒以外の未就業者からは35万人となっており、一方、常用労働者のうちパートタイム労働者としての入職は、新規学卒者からは21万人、新規学卒以外の未就業者からは58万人となっている。

(E)平成17年の職業安定法の改正により、公共職業安定所は学校と連携、協力して、学生若しくは生徒のみならず学校卒業者についても、積極的に職業紹介や職業指導を行うとともに、求人開拓を行い、彼らの能力に適合した職業のあっせんを行わなければならない、と規定された。



■解説

(A)正解
2006年度・新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章
倫理憲章には、採用選考活動早期開始の自粛として「在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動の早期開始は自粛する。まして卒業学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む。」と記述されている。
よって、問題文は正解である。

(B)正解
平成17年版労働経済白書(142ページから162ページ)
平成17年版労働経済白書の第II部第2章第1節「若年者の意識と就業促進に向けた課題」では、大学卒業者の就職状況について、「2004年3月時点における卒業者数に占める就職率は55.8%である」とし、「その一方で就職も進学もしていないいわゆる無業者が20%と高水準となっており、大学卒業時の就職環境も厳しい状況にある」としている。
また、高校卒業者の就職状況について、「卒業者に占める就職も進学もしない者の割合については、増加傾向で推移していたが、近年は、おおむね横ばいとなっている」としている。
白書の分析では、高校卒業者に占める就職率は16.9%、就職も進学もしない者の割合は7.5%としている。
そして、離職率について「入社3年以内の離職率については、2001年就職者における3年以内に離職する者の割合は、高校卒業者の48.9%、大学卒業者の35.4%と高水準になっている。さらに、入社1年以内の離職率は、2003年就職者において高校卒業者の25%、大学卒業者の15.3%と特に高い水準になっている」としている。
最後に、総括として「若年期は、その職業生涯において学校から就業への円滑な移行期であり、基礎的な職業能力の形成期であり非常な重要な時期である。こういった時期に安定的な雇用が確保されていないことなどから労働市場に参加しなかったり、非正規での就労を余儀なくされ十分な職業能力開発がなされなかったりと様々な問題を抱えている。こうしたことが若年者の仕事に対する意識を変化させている。今後は学校から就業への円滑な移行及び職場への定着のため、若年者の実態を十分に把握するとともに、企業、教育機関、行政が密接に連携し、若年者の就業に対する意欲の涵養及び職業能力の向上に努めていくことが求められる。」と締めくくっている。
よって、問題文は正解である。

(C)正解
平成17年版労働経済白書(242ページ)
労働経済白書では、「若年者に対しては、長期的な視点に立った計画的な採用を行い、基礎的な職業能力開発を行うことなどを通じて定着を促し、人材を育成することによって、その能力を活用していくことが重要である。若年者が定着しないという課題を抱える企業は多いが、積極的な能力開発の実施、面接を通じたフォローアップ、指導係の設置などは、若年者の定着にとって有効であると考えられる。」としている。
よって、問題文は正解である。

(D)正解
平成17年上半期雇用動向調査
平成17年上半期雇用動向調査結果における、平成17年上半期の新規学卒入職者の状況を就業形態別にみると、一般労働者は75.0万人、パートタイム労働者は21.3万人であり、一般未就業からの入職者の状況を就業形態別にみると、一般労働者は35万人、パートタイム労働者は58万人であった。
よって、問題文は正解である。

(E)誤り
職業安定法26条1項
職業安定法26条1項において、公共職業安定所は、学生生徒等の職業紹介等については、学校と協力して、学生生徒等に対し、雇用情報、職業に関する調査研究の成果等を提供し、職業指導を行い、及び公共職業安定所間の連絡により、学生生徒等に対して紹介することが適当と認められるできる限り多くの求人を開拓し、各学生生徒等の能力に適合した職業にあっせんするよう努めなければならないとされている。
この規定については努力規定であり、平成17年の改正により義務規定に改められておらず、問題文は誤りとなる。

  

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