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■平成25年一般-第2問(労働組合等)

労働組合等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)日本の労働組合の最大の特徴は、労働組合が企業別に組織されているいわゆる企業別組合である点にあり、使用者は、労働者の労働条件の変更を行う場合には、まず企業内の多数労働組合と団体交渉を行う義務を負う。

(B)プロ野球選手、プロサッカー選手等のスポーツ選手は、労働組合法上の労働者に当たらないため、これらのプロスポーツ選手が労働組合を作っても、団体交渉を行う権利は認められない。

(C)使用者が組合員の賃金から組合費を控除しそれを労働組合に引き渡す旨の、労働組合と使用者との間の協定(いわゆるチェック・オフ協定)は、それに反対する組合員にチェック・オフを受忍する義務を負わせるものではなく、組合員はいつでも使用者にチェック・オフの中止を申し入れることができるとするのが、最高裁判所の判例である。

(D)労働組合が、総選挙に際し特定の立候補者支援のためにその所属政党に寄付する資金を集める目的で組合員にその費用を負担することを強制することは、労働組合の連帯の昂揚や存立基盤の確立のために必要不可欠なものであり、組合自治の原則に基づいて許されるとするのが、最高裁判所の判例である。

(E)労働組合の目的は、賃金等の労働条件を維持改善し労働者の経済的地位の向上を図ることにあるから、いわゆるセクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどを予防するための職場環境の整備は、いわゆる義務的団体交渉事項に含まれない。



■解説

(A)誤り
労働組合法6条ほか
使用者が労働者の労働条件の変更を行う場合には、まず企業内の多数労働組合と団体交渉を行うという義務は規定されていない。
よって、問題文は誤りとなる。

(B)誤り
日本プロフェッショナル野球組織事件(平成16年9月3日東京高裁判決)
プロスポーツ選手が労働組合を作った場合、労働組合法上の団体交渉を行う権利を有することになる。
よって、「団体交渉を行う権利は認められない。」とした問題文は誤りとなる。

(C)正解
エッソ石油事件(平成5年3月25日最高裁判決)
チェック・オフ協定が労働協約の形式により締結された場合であっても、当然に使用者がチェック・オフをする権限を取得するものでないことはもとより、組合員がチェック・オフを受忍すべき義務を負うものではないと解すべきであると最高裁判所は判断した。
よって、問題文は正解となる。
なお、使用者と労働組合との間に労働協約が締結されている場合であっても、使用者が有効なチェック・オフを行うためには、チェック・オフ協定の外に、使用者が個々の組合員から、賃金から控除した組合費相当分を労働組合に支払うことにつき委任を受けることが必要であって、委任が存しないときには、使用者は当該組合員の賃金からチェック・オフをすることはできないものと解するのが相当であるというのが最高裁判所の判例である。

(D)誤り
国労広島地本事件(昭和50年11月28日最高裁判所判決)
政治意識昂揚資金は、総選挙に際し特定の立候補者支援のためにその所属政党に寄付する資金であるが、政党や選挙による議員の活動は、各種の政治的課題の解決のために労働者の生活利益とは関係のない広範な領域にも及ぶものであるから、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかは、投票の自由と表裏をなすものとして、組合員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断ないしは感情等に基づいて自主的に決定すべき事柄である。したがって、労働組合が組織として支持政党又はいわゆる統一候補を決定し、その選挙運動を推進すること自体は自由であるが、組合員に対してこれへの協力を強制することは許されないというべきであり、その費用の負担についても同様に解すべきであるとするのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文は誤りとなる。

(E)誤り
根岸病院事件(平成19年7月31日東京高裁判決)
労働者の団体交渉権(憲法28条)を実質的に保障しようとする労働組合法7条2号の趣旨に照らすと、義務的団交事項とは、団体交渉を申し入れた組合の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇、当該団体と使用者との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なものと解するのが相当であるとされている。
したがって、いわゆるセクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどを予防するための職場環境の整備についても義務的団体交渉事項に含まれると考えられる。
よって、問題文は誤りとなる。

  

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