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■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成26年一般-第10問(社会保険の沿革)

次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)社会保障のなかで相対的に遅れていた高齢者福祉への国民の関心が、高齢者の増加や人口の都市集中に伴う家族形態の変化などを背景に急速に高まり、昭和28年7月に老人福祉法が制定された。老人福祉施設については、生活保護法に位置づけられてきた養老施設が老人福祉法上の養護老人ホームという類型に引き継がれたほか、新しく特別養護老人ホームと軽費老人ホームという類型が加わった。

(B)高齢化が進展する中で、老人福祉法が昭和37年に改正され、翌年1月から老人医療費支給制度が実施された。この制度は、70歳以上(寝たきり等の場合は65歳以上)の高齢者に対して、医療保険の自己負担分を、国と地方公共団体の公費を財源として支給するものであった。

(C)高齢者の医療費の負担の公平化を目指して、老人保健法が昭和47年に制定され、翌年2月から施行された。同法においては、各医療保険制度間の負担の公平を図る観点から老人保健拠出金制度が新たに導入された。また、老人医療費の一定額を患者が自己負担することとなった。

(D)老人保健法が全面改正された「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、後期高齢者医療制度が平成10年4月から実施された。本制度は、現役世代と高齢者の費用負担のルールを明確化するとともに、都道府県単位で全ての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合を運営主体とすることにより、運営責任の明確化及び財政の安定化を図り、75歳以上の者等を対象とする、独立した医療制度として創設された。

(E)深刻化する高齢者の介護問題に対応するため、介護保険法が平成9年に制定され、平成12年4月から施行された。介護保険制度の創設により、介護保険の被保険者は要介護認定を受ければ、原則として費用の1割の自己負担で介護サービスを受けられるようになった。



■解説

(A)誤り
平成19年版厚生労働白書
戦後当初の我が国の高齢者福祉施策は、ごく一部の低所得者を対象に、生活保護法に基づいて養老施設に収容保護する事業が行われる程度であった。当時は、多世代同居が一般的であり、高齢者の世話は家族の仕事と考えられていた。
しかし、高齢者の増加、産業構造の変化による高齢者の就業機会の減少、人口の都市集中に伴う家族形態の変化など、高齢者を取り巻く環境も変わりつつあった。こうした状況を受けて、高齢者の福祉を幅広く推進し発展させていくための独立した制度が期待されるようになり、1963(昭和38)年7月に老人福祉法が制定され、国と地方公共団体が高齢者の福祉を増進する責務が定められた。これによって、高齢者福祉施策は、それまでの低所得者を保護する救貧施策の枠を越えて、加齢に伴う一般的な介護ニーズが制度の対象として位置づけられることとなり、一つの節目を迎えることとなった。
老人福祉法には、具体的施策として、老人福祉施設の設置、健康診査の実施、社会参加の奨励などが盛り込まれた。このうち、老人福祉施設については、生活保護法に位置づけられてきた養老施設が養護老人ホームという類型で引き継がれたほか、新しく特別養護老人ホームと軽費老人ホームという類型が加わった。
よって、「昭和28年7月に老人福祉法が制定」とした問題文は誤りとなる。

(B)誤り
平成19年版厚生労働白書
我が国の医療保険制度は、大きく分けて被用者保険と国民健康保険に分かれているが、かつては、加入する医療保険によって保険給付率が異なっており、また、主に市町村国保に加入することとなる高齢者は複数の疾患を抱えて長期の療養生活を送ることも多いことから、高齢者の医療費負担をいかに軽減するかが大きな問題となっていた。こうした中で、1969(昭和44)年に東京都と秋田県が老人医療費の無料化に踏み切ったことを契機に、各地の地方公共団体が追随し、1972(昭和47)年には、2県を除いて全国で老人医療費が無料化される状況となった。
このような状況を踏まえ、国の施策として1972年に老人福祉法が改正され、1973(昭和48)年から老人医療費支給制度が実施されることとなった。この制度は、70歳以上(寝たきり等の場合は65歳以上)の高齢者に対して、医療保険の自己負担分を、国と地方公共団体の公費を財源として支給するものであった。
この制度により、1970(昭和45)年から1975(昭和50)年までの5年間で、70歳以上の受療率が約1.8倍になるなどの結果が生じ、「必要以上に受診が増えて病院の待合室がサロン化した」との問題も指摘されるようになった。また、介護サービスを必要とする高齢者の受け皿が家庭や福祉施設に乏しいとともに、社会福祉施設に入所するよりも入院の方が手続も容易な上、老人医療費が無料であるため医療機関に入院する方が費用負担が軽いこともあって、いわゆる「社会的入院」を助長しているとの指摘もなされるようになった。
よって、「老人福祉法が昭和37年に改正」とした問題文は誤りとなる。

(C)誤り
平成19年版厚生労働白書
老人医療費無料化以降、老人医療費は著しく増大した。オイルショックを契機に、日本経済が高度成長から安定成長に移行する中で、特に高齢者の割合の高い市町村国保の財政負担は重くなった。こうした中で、高齢者の医療費の負担の公平化を目指して、老人保健法が1982(昭和57)年に成立した。老人保健法においては、各医療保険制度間の負担の公平を図る観点から、全国平均の高齢者加入率に基づいて算出された拠出金を各医療保険者で等しく負担する仕組みが新たに導入された。また、老人医療費の一定額を患者が自己負担することとなった。
よって、「老人保健法が昭和47年に制定」とした問題文は誤りとなる。

(D)誤り
平成25年版厚生労働白書
高齢化の進展に伴い増大する医療費を制度横断的に社会全体で支えるため、2008(平成20)年4月に新たな高齢者医療制度が創設された。これは、旧老人保健制度で指摘されていた問題点を解消するため、@高齢世代と現役世代の負担割合を明確化し、A都道府県単位の財政運営とすることで、原則、同じ都道府県で同じ所得であれば同じ保険料とすることなどを狙いとしたものである。
制度施行以降、広域連合や市町村による運営面の努力とともに、75歳以上に着目した診療報酬の廃止等運用面の対応を重ねてきた結果、6年目の現在、制度は概ね定着しつつある。
よって、「後期高齢者医療制度が平成10年4月から実施」とした問題文は誤りとなる。

(E)正解
平成18年版厚生労働白書
ゴールドプラン、新ゴールドプラン等を中心として、高齢者保健福祉基盤の整備が急速に強化され、それぞれの地域において必要なサービスの量が確保されていくのに合わせて、利用者一人一人に応じたサービスの質の向上を求める声が強まるとともに、増大する介護費用を国民全体で支え合い賄っていく必要性が高まった。
また、寝たきりや認知症の高齢者の増加、介護期間の長期化など、介護ニーズはますます増大した。その一方で、核家族化の一層の進展など家族をめぐる状況も大きく変わり、家族にとって、介護は身体的・精神的にも大きな問題と認識されるようになった。
このような中、国民的な広がりを持った議論を経て、社会全体で高齢者介護を支える仕組みとして、介護保険法が1997(平成9)年に成立し、2000(平成12)年4月にスタートした。
よって、問題文は正解となる。
なお、介護保険の被保険者は要介護認定を受ければ、原則として費用の1割の自己負担で介護サービスを受けられる。(介護保険法)

  

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