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■平成28年一般-第1問(労働契約法等)

労働契約法等に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

(ア)労働契約法第5条は労働者の安全への配慮を定めているが、その内容は、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められる。

(イ)労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が必ず書面を交付して合意しなければ、有効に成立しない。

(ウ)いわゆる在籍出向においては、就業規則に業務上の必要によって社外勤務をさせることがある旨の規定があり、さらに、労働協約に社外勤務の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金その他の労働条件や処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられているという事情の下であっても、使用者は、当該労働者の個別的同意を得ることなしに出向命令を発令することができないとするのが、最高裁判所の判例である。

(エ)使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないが、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」以外の場合よりも狭いと解される。

(オ)労働契約法は、使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約及び家事使用人の労働契約については、適用を除外している。

(A)一つ

(B)二つ

(C)三つ

(D)四つ

(E)五つ

■解説

(ア)正解
労働契約法5条、平成24年8月10日基発0810第2号
労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)には、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとすると規定されている。
このうち、「必要な配慮」とは、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められるものであることとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、労働安全衛生法をはじめとする労働安全衛生関係法令においては、事業主の講ずべき具体的な措置が規定されているところであり、これらは当然に遵守されなければならないものであることとされている。

(イ)誤り
労働契約法6条、平成24年8月10日基発0810第2号
労働契約法第6条(労働契約の成立)では、労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立すると規定されている。
このうち、「合意することによって成立する」とは、労働契約は、労働契約の締結当事者である労働者及び使用者の合意のみにより成立するものであることとされている。したがって、労働契約の成立の要件としては、契約内容について書面を交付することまでは求められないものとされている。
よって、「必ず書面を交付して合意しなければ、有効に成立しない。」とした問題文は誤りとなる。
また、労働契約の成立の要件としては、労働条件を詳細に定めていなかった場合であっても、労働契約そのものは成立し得るものであることとされている。

(ウ)誤り
新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件(平成15年4月18日)
就業規則に業務上の必要によって社外勤務をさせることがある旨の規定があり、さらに、労働協約に社外勤務の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金その他の労働条件や処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられているという事情の下では、個別的同意なしに、従業員としての地位を維持しながら出向先においてその指揮監督の下に労務を提供することを命ずる出向命令を発令することができるというのが最高裁判所の判例である。
よって、「個別的同意を得ることなしに出向命令を発令することができない」とした問題文は誤りとなる。

(エ)正解
労働契約法17条、平成24年8月10日基発0810第2号
使用者は、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないこととされているが、このうち「やむを得ない事由」があるか否かは、個別具体的な事案に応じて判断されるものであるが、契約期間は労働者及び使用者が合意により決定したものであり、遵守されるべきものであることから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」以外の場合よりも狭いと解されるものとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び使用者が合意していた場合であっても、当該事由に該当することをもって「やむを得ない事由」があると認められるものではなく、実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるか否かが個別具体的な事案に応じて判断されるものであるとされている。

(オ)誤り
労働契約法22条2項
使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約については、労働契約法は適用しないこととされている。
よって、「家事使用人の労働契約」には適用を除外されておらず、問題文は誤りの肢となる。
なお、親族については、民法において、夫婦の財産、親子の財産等に関する様々な規定が定められており、中でも同居の親族についてはその結びつき(特に経済的関係)が強く、一般の労働者及び使用者と同様の取扱いをすることは適当でないことから、同居の親族のみを使用する場合の労働契約については、法を適用しないこととしたものである。

※正解は、(ア)(エ)であるため、(B)が正解となる。

  

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