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■平成30年一般-第2問(労働経済)

我が国の家計所得や賃金、雇用に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、本問は、「平成29年版厚生労働白書(厚生労働省)」を参照しており、当該白書又は当該白書が引用している調査による用語及び統計等を利用している。

(A)1990年代半ばから2010年代半ばにかけての全世帯の1世帯当たり平均総所得金額減少傾向の背景には、高齢者世帯割合の急激な増加がある。

(B)「国民生活基礎調査(厚生労働省)」によると、年齢別の相対的貧困率は、17歳以下の相対的貧困率(子どもの貧困率)及び18〜64歳の相対的貧困率については1985年以降上昇傾向にあったが、直近ではいずれも低下している。

(C)非正規雇用労働者が雇用労働者に占める比率を男女別・年齢階級別にみて1996年と2006年を比較すると、男女ともに各年齢層において非正規雇用労働者比率は上昇したが、2006年と2016年の比較においては、女性の高齢層(65歳以上)を除きほぼ同程度となっており、男性の15〜24歳、女性の15〜44歳層ではむしろ若干の低下が見られる。

(D)2016年の労働者一人当たりの月額賃金については、一般労働者は、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業など、非正規雇用労働者割合が高い産業において低くなっており、産業間での賃金格差が大きいが、パートタイム労働者については産業間で大きな格差は見られない。

(E)過去10年にわたってパートタイム労働者の時給が上昇傾向にあるため、パートタイム労働者が1か月間に受け取る賃金額も着実に上昇している。



■解説

(A)正解
平成29年版厚生労働白書
全世帯の1世帯当たり平均総所得金額減少の背景には、高齢者世帯割合の急激な増加がある。高齢者世帯の全世帯に占める割合は増加傾向にあり、1986年の6.3%から2016年には26.6%と、ここ30年で4倍以上となっている。1世帯当たり所得水準が全体よりも低い高齢者世帯割合の増加は全世帯の平均総所得金額の減少要因となる。1994年から2015年にかけての全世帯の1世帯当たり平均総所得金額の減少要因を分析すると、全世帯の1世帯当たり平均総所得金額の減少分17.9%のうち9.1%が高齢者世帯割合の増加によるものとなっており、全体の減少分のうち5割程度が現役世帯よりも平均総所得金額の低い高齢者世帯割合の増加によるものである。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
平成29年版厚生労働白書
「国民生活基礎調査」によると、全世帯員の相対的貧困率は、1985(昭和60)年以降2012(平成24)年までは上昇傾向にあったが、2015(平成27)年には15.7%となり2012年に比べて0.4%ポイント低下している。この背景としては、2012年から2015年にかけて、経済の好転、雇用の増加により、現役世帯、特に児童のいる世帯の所得が増加したことがある。年齢別の相対的貧困率を見ると、17歳以下の貧困率(子どもの貧困率)及び18〜64歳の相対的貧困率は1985年以降上昇傾向にあったが、児童のいる世帯の所得の増加を背景に、直近ではいずれも低下しており、子どもの貧困率は2015年には13.9%(2012年に比べて2.4%ポイントの低下)、18〜64歳の相対的貧困率は2015年には13.6%(2012年に比べて0.9%ポイントの低下)となっている。
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
平成29年版厚生労働白書
正規雇用労働者が雇用労働者に占める比率を男女別・年齢階級別に見ると、1996年から2006年までは、男女ともに各年齢層において非正規雇用労働者比率は上昇したが、2006年から2016年にかけては、女性の高齢層を除きほぼ横ばいとなっており、男性の15〜24歳、女性の15〜44歳層ではむしろ若干の低下が見られる。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
平成29年版厚生労働白書
2016(平成28)年における産業別・就業形態別の労働者1人あたりの月額賃金(現金給与総額)を就業形態別に見ると、一般労働者の賃金は、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業など、非正規雇用労働者割合が高い産業において低くなっており、産業間での賃金格差が大きい。一方で、パートタイム労働者の賃金については、一般労働者とは異なり、産業間での大きな格差は見られず、おおむね10万円前後となっている。
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
平成29年版厚生労働白書
パートタイム労働者の時給は、男女ともに近年は上昇が続いており、2016(平成28)年は男女計1,075円、男性1,134円、女性1,054円となり、いずれも過去最高となっているが、1日当たりの所定内実労働時間数については、男女ともに2001年から2006(平成18)年にかけて減少した後、おおむね横ばいで推移している。
以上のことを踏まえ、時給に対する実労働日数の相関を見ると、強い負の相関関係にあることがわかる。このことから、パートタイム労働者の賃金において、時給の上昇による増加は、実労働日数の短縮によって相殺されている傾向にあり、パートタイム労働者が1か月間に受け取る賃金額はあまり上昇していない。
よって、「賃金額も着実に上昇している」とした問題文は誤りとなる。

  

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