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トップページ過去問研究室(一般常識) 平成30年一般-第3問(労働契約法等)
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■平成30年一般-第3問(労働契約法等)

労働契約法等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

(ア)いわゆる採用内定の制度は、多くの企業でその実態が類似しているため、いわゆる新卒学生に対する採用内定の法的性質については、当該企業における採用内定の事実関係にかかわらず、新卒学生の就労の始期を大学卒業直後とし、それまでの間、内定企業の作成した誓約書に記載されている採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立しているものとするのが、最高裁判所の判例である。

(イ)使用者は、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に、安全配慮義務を負う。

(ウ)就業規則の変更による労働条件の変更が労働者の不利益となるため、労働者が、当該変更によって労働契約の内容である労働条件が変更後の就業規則に定めるところによるものとはされないことを主張した場合、就業規則の変更が労働契約法第10条本文の「合理的」なものであるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、使用者側が負う。

(エ)「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことをもって足り、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていない場合でも、労働基準法に定める罰則の対象となるのは格別、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずることに変わりはない。」とするのが、最高裁判所の判例である。

(オ)労働契約法第18条第1項の「同一の使用者」は、労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断される。

(A)(アとウ)
(B)(イとエ)
(C)(ウとオ)
(D)(アとエ)
(E)(イとオ)



■解説

(ア)誤り
大日本印刷事件(昭和54年7月20日)
企業が大学の新規卒業者を採用するについて、早期に採用試験を実施して採用を内定する、いわゆる採用内定の制度は、従来わが国において広く行われているところであるが、その実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきである。したがって、具体的事案につき、採用内定の法的性質を判断するにあたっては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要があるというのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文の内容は誤りとなる。

(イ)正解
労働契約法5条、平成24年8月10日基発0810第2号
使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負うこととされている。
よって、問題文は正解となる。

(ウ)正解
労働契約法10条、平成24年8月10日基発0810第2号
労働契約法第10条は、「就業規則の変更」という方法によって「労働条件を変更する場合」において、使用者が「変更後の就業規則を労働者に周知させ」たこと及び「就業規則の変更」が「合理的なものである」ことという要件を満たした場合に、労働契約の変更についての「合意の原則」の例外として、「労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによる」という法的効果が生じることとなることを規定しており、「就業規則の変更」が労働契約法第10条本文の「合理的」なものであるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、使用者側が負うものであることとされている。
よって、問題文は正解となる。

(エ)誤り
フジ興産事件(平成15年10月10日)
使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。そして、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものとするのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文の内容は誤りとなる。

(オ)正解
労働契約法18条1項、平成24年8月10日基発0810第2号
労働契約法18条1項の「同一の使用者」は、労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断されるものであることとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、使用者が、就業実態が変わらないにもかかわらず、労働契約法18条1項に基づき有期契約労働者が無期労働契約への転換を申し込むことができる権利(無期転換申込権)の発生を免れる意図をもって、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に他の使用者に切り替えた場合は、法を潜脱するものとして、同項の通算契約期間の計算上「同一の使用者」との労働契約が継続していると解される。また、派遣労働者の場合は、労働契約の締結の主体である派遣元事業主との有期労働契約について労働契約法18条1項の通算契約期間が計算されるものとされている。

※誤っているものの組合せは、(ア)(エ)であるため、(D)が正解となる。

  

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