社会保険労務士試験に楽に合格する方法論を研究するサイト
社会保険労務士試験情報局
トップページ過去問研究室(健康保険法) 平成28年健保-第7問(保険給付)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成28年健保-第7問(保険給付)

保険給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)被保険者が単に経済的理由により人工妊娠中絶術を受けた場合は、療養の給付の対象とならない。

(B)引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者、特例退職被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者が傷病により労務不能となり、当該労務不能となった日から3日目に退職した場合には、資格喪失後の継続給付としての傷病手当金の支給を受けることはできない。

(C)被保険者が予約診察制をとっている病院で予約診察を受けた場合には、保険外併用療養費制度における選定療養の対象となり、その特別料金は、全額自己負担となる。

(D)保険医療機関等は、生活療養に要した費用につき、その支払を受ける際、当該支払をした被保険者に交付する領収証に入院時生活療養費に係る療養について被保険者から支払を受けた費用の額のうち生活療養標準負担額とその他の費用の額とを区分して記載しなければならない。

(E)引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者、特例退職被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者がその被保険者の資格を喪失し、国民健康保険組合(規約で出産育児一時金の支給を行うこととしている。)の被保険者となった場合、資格喪失後6か月以内に出産したときには、健康保険の保険者がその者に対して出産育児一時金を支給することはない。



■解説

(A)正解
昭和27年9月29日保発第56号
人工妊娠中絶のうち、妊娠4ヵ月以上のものについては療養の給付及び出産の給付の対象とする。ただし、母体保護法第14条第1項各号の医師の認定による人工妊娠中絶のうち、単に経済的理由によるものは療養の給付の対象としない。
よって、問題文は正解となる。
なお、健康保険による出産育児一時金は、母体を保護する目的のために、分娩の事実にもとづいて支給されるので、妊娠4ヵ月以上(85日以後)の分娩については、生産、死産、流産(人工流産を含む。)又は早産を問わずすべて出産育児一時金が支給される。(昭和27年6月16日保文発第2427号)

(B)正解
法99条1項、法104条、昭和32年1月31日保発2号の2
被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者、特例退職被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く)であった者が、資格喪失の際に傷病手当金の支給を受けている(現に給付を受けているものだけでなく受給権者も含む。)場合は、資格喪失後の継続給付として傷病手当金を受けることができる。
しかしながら、労務不能となった日から3日目に退職した場合には、待期期間が完成したのみで実際に傷病手金の支給を受けていないため資格喪失後の継続給付を受給することはできない。
よって、問題文は正解となる。

(参考)
待期は、労務不能状態が3日間連続することが必要であり、かつ、これをもって足り「休休休休」の場合は待期完成であるが、「休出休休」は待期は完成していない。ただし、資格喪失後の受給は、資格喪失の日前に労務に服することができない状態が3日連続しているのみでは受けることができない。(昭和32年1月31日保発第2号の2)

(C)正解
法86条、平成18年9月12日厚生労働省告示495号(一部改正 平成28年3月4日厚生労働省告示第60号)
予約に基づく診察は選定療養とされている。
よって、問題文は正解となる。

(参考)
厚生労働大臣の定める評価療養、患者申出療養及び選定療養

■評価療養
1.別に厚生労働大臣が定める先進医療(先進医療ごとに別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合する病院又は診療所において行われるものに限る。)
2.医薬品医療機器等法第2条第17項に規定する治験(人体に直接使用される薬物に係るものに限る。)に係る診療
3.医薬品医療機器等法第2条第17項に規定する治験(機械器具等に係るものに限る。)に係る診療
4.医薬品医療機器等法第2条第17項に規定する治験(加工細胞等(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第275条の2の加工細胞等をいう。)に係るものに限る。)に係る診療
5.医薬品医療機器等法第14条第1項又は第19条の2第1項の規定による承認を受けた者が製造販売した当該承認に係る医薬品(人体に直接使用されるものに限り、別に厚生労働大臣が定めるものを除く。)の投与(別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合する病院若しくは診療所又は薬局において当該承認を受けた日から起算して90日以内に行われるものに限る。)
6.医薬品医療機器等法第23条の2の5第1項又は第23条の2の17第1項の規定による承認を受けた者が製造販売した当該承認に係る医療機器又は体外診断用医薬品(別に厚生労働大臣が定めるものを除く。)の使用又は支給(別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合する病院若しくは診療所又は薬局において保険適用を希望した日から起算して240日以内に行われるものに限る。)
7.医薬品医療機器等法第23条の25第1項又は第23条の37第1項の規定による承認を受けた者が製造販売した当該承認に係る再生医療等製品(別に厚生労働大臣が定めるものを除く。)の使用又は支給(別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合する病院若しくは診療所又は薬局において保険適用を希望した日から起算して240日以内に行われるものに限る。)
8.使用薬剤の薬価(薬価基準)に収載されている医薬品(別に厚生労働大臣が定めるものに限る。)の投与であって、医薬品医療機器等法第14条第1項又は第19条の2第1項の規定による承認に係る用法、用量、効能又は効果と異なる用法、用量、効能又は効果に係るもの(別に厚生労働大臣が定める条件及び期間の範囲内で行われるものに限る。)
9.医薬品医療機器等法第23条の2の5第1項又は第23条の2の17第1項の規定による承認を受けた者が製造販売した当該承認に係る医療機器(別に厚生労働大臣が定めるものに限る。)の使用又は支給であって、当該承認に係る使用目的、効果又は使用方法と異なる使用目的、効果又は使用方法に係るもの(別に厚生労働大臣が定める条件及び期間の範囲内で行われるものに限る。)
10.医薬品医療機器等法第23条の25第1項又は第23条の37第1項の規定による承認を受けた者が製造販売した当該承認に係る再生医療等製品(別に厚生労働大臣が定めるものに限る。)の使用又は支給であって、当該承認に係る用法、用量、使用方法、効能、効果又は性能と異なる用法、用量、使用方法、効能、効果又は性能に係るもの(別に厚生労働大臣が定める条件及び期間の範囲内で行われるものに限る。)
■患者申出療養
別に厚生労働大臣が定める患者申出療養(別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合する病院又は診療所であって、当該療養を適切に実施できるものとして厚生労働大臣に個別に認められたものにおいて行われるものに限る。)
■選定療養
1.特別の療養環境の提供
2.予約に基づく診察
3.保険医療機関が表示する診療時間以外の時間における診察
4.病床数が200以上の病院について受けた初診(他の病院又は診療所からの文書による紹介がある場合及び緊急その他やむを得ない事情がある場合に受けたものを除く。)
5.病床数が200以上の病院について受けた再診(当該病院が他の病院(病床数が200未満のものに限る。)又は診療所に対して文書による紹介を行う旨の申出を行っていない場合及び緊急その他やむを得ない事情がある場合に受けたものを除く。)
6.診療報酬の算定方法に規定する回数を超えて受けた診療であって別に厚生労働大臣が定めるもの
7.別に厚生労働大臣が定める方法により計算した入院期間が180を超えた日以後の入院及びその療養に伴う世話その他の看護(別に厚生労働大臣が定める状態等にある者の入院及びその療養に伴う世話その他の看護を除く。)
8.前歯部の金属歯冠修復に使用する金合金又は白金加金の支給
9.金属床による総義歯の提供
10.齲う蝕に罹り患している患者(齲う蝕多発傾向を有しないものに限る。)であって継続的な指導管理を要するものに対する指導管理

(D)正解
法85条の2、則62条の5
保険医療機関等は、生活療養に要した費用につき、その支払を受ける際、当該支払をした被保険者に対し、入院時生活療養費に係る療養について被保険者から支払を受けた費用の額のうち生活療養標準負担額とその他の費用の額とを区分して記載した領収証を交付しなければならないことになっている。
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
法106条、法附則3条6項、平成23年6月3日保国発603002号・保保発603002号
資格喪失後の出産育児一時金の給付について規定した健康保険法第106条は、労使の協調関係を基盤として運営する健康保険において、法制定当初、女子の被保険者で妊娠によって解雇された者の保護を目的として設けられたものであるが、現在も、国民健康保険では出産育児一時金の給付内容や方法が条例又は規約で定めるところによるものであることを踏まえ、健康保険の被保険者が「出産について被保険者として受けることができるはずであった保険給付」を受けることができるよう、法律上、明示的に規定しているものである。
したがって、1年以上健康保険法の規定による被保険者であった者が、その被保険者の資格を喪失した日後6月以内に出産した場合に、当該被保険者であった者(対象者)が健康保険法第106条の規定に基づく出産育児一時金の支給を受ける旨の意思表示をしたときは、健康保険の保険者が当該対象者に対して出産育児一時金の支給を行うものである。
また、健康保険の保険者は、この法律の規定の趣旨を踏まえ、被保険者がその意思に基づき、保険給付を受けることができるよう、付加給付がある場合にはその内容を含め、被保険者に対して十分に説明することが求められる。
よって、「健康保険の保険者がその者に対して出産育児一時金を支給することはない。」とした問題文は誤りとなる。

  

→社会保険労務士試験過去問研究室(健康保険法)に戻る
Copyright (C) 2005 社会保険労務士試験情報局 All Rights Reserved