社会保険労務士試験に楽に合格する方法論を研究するサイト
社会保険労務士試験情報局
トップページ過去問研究室(健康保険法) 平成30年健保-第4問(法令全般関係)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成30年健保-第4問(法令全般関係)

健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)健康保険事業の収支が均衡しない健康保険組合であって、政令で定める要件に該当するものとして厚生労働大臣より指定を受けた健康保険組合は、財政の健全化に関する計画を作成し、厚生労働大臣の承認を受けたうえで、当該計画に従い、その事業を行わなければならない。この計画に従わない場合は、厚生労働大臣は当該健康保険組合と地域型健康保険組合との合併を命ずることができる。

(B)全国健康保険協会管掌健康保険において、事業主が負担すべき出張旅費を被保険者が立て替え、その立て替えた実費を弁償する目的で被保険者に出張旅費が支給された場合、当該出張旅費は労働の対償とは認められないため、報酬には該当しないものとして取り扱われる。

(C)全国健康保険協会管掌健康保険の任意継続被保険者の妻が被扶養者となった場合は、5日以内に、被保険者は所定の事項を記入した被扶養者届を、事業主を経由して全国健康保険協会に提出しなければならない。

(D)国庫は、予算の範囲内において、健康保険事業の執行に要する費用のうち、高齢者医療確保法の規定による特定健康診査及び特定保健指導の実施に要する費用の全部を補助することができる。

(E)全国健康保険協会管掌健康保険及び健康保険組合管掌健康保険について、適用事業所以外の事業所の任意適用の申請に対する厚生労働大臣の認可の権限は、日本年金機構に委任されている。



■解説

(A)誤り
法28条、法29条
健康保険事業の収支が均衡しない健康保険組合であって、政令で定める要件に該当するものとして厚生労働大臣の指定を受けたもの(指定健康保険組合)は、政令で定めるところにより、その財政の健全化に関する計画(健全化計画)を定め、厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この承認を受けた指定健康保険組合は、当該承認に係る健全化計画に従い、その事業を行わなければならず、この計画に従わない場合、厚生労働大臣は、当該健康保険組合の解散を命ずることができる。
よって、「当該健康保険組合と地域型健康保険組合との合併」とした問題文は誤りとなる。

(B)正解
法3条5項、標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集(平成29年6月2日事務連絡)
「報酬」及び「賞与」(報酬等)は、健康保険法第3条第5項及び第6項において「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」と規定されており、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを包含するものである。
よって、問題文は正解となる。

具体的事例
(1)現実に提供された労働に対する対価に加え、給与規程等に基づいて使用者が経常的(定期的)に被用者に支払うものは、「報酬等」に該当する。労働の提供と対償の支払が時間的に一致する必要はなく、将来の労働に対するものや、病気欠勤中や休業中に支払われる手当であっても労働の対償となり、「報酬等」に該当する。また、雇用契約を前提として事業主から食事、住宅等の提供を受けている場合(現物給与)も「報酬等」に含まれる。
(例)賃金、給料、俸給、賞与、インセンティブ、通勤手当、扶養手当、管理職手当、勤務地手当、休職手当、休業手当、待命手当
(2)労働の対償として受けるものでないものは、「報酬等」に該当しない。
(例)傷病手当金、労働者災害補償保険法に基づく休業補償、解雇予告手当、退職手当、内職収入、財産収入、適用事業所以外から受ける収入
(注)退職手当は、毎月の給与や賞与に上乗せして前払いされる場合、被保険者の通常の生計に充てられる経常収入と扱うことが妥当であり、「報酬等」に該当する。
(3)事業主が負担すべきものを被保険者が立て替え、その実費弁償を受ける場合、労働の対償とは認められないため、「報酬等」に該当しない。
(例)出張旅費、赴任旅費
(4)事業主が恩恵的に支給するものは労働の対償とは認められないため、原則として「報酬等」に該当しない。
(例)見舞金、結婚祝い金、餞別金
(5)恩恵的に支給するものであっても、労働協約等に基づいて支給されるもので、経常的(定期的)に支払われる場合は、「報酬等」に該当する。
(例)傷病手当金と給与の差額補填を目的とした見舞金
(6)労働の対償として支給されるものであっても、被保険者が常態として受ける報酬以外のものは、「報酬等」に含まれない(支給事由の発生、支給条件、支給額等が不確定で、経常的に受けるものではないものは、被保険者の通常の生計に充てられるものとは言えないため)。ただし、これに該当するものは極めて限定的である。
(例)大入袋
※ここで挙げた(例)は一般的な場合を想定しており、その名称だけでなく、実態に合わせて「報酬等」に該当するかどうか判断を行うものとする。

(C)誤り
則38条1項・5項
任意継続被保険者は、被扶養者を有するとき、又は被扶養者を有するに至ったときは、5日以内に、所定の事項を記載した被扶養者届を保険者に提出しなければならないことになっている。
よって、「事業主を経由して全国健康保険協会に提出」とした問題文は誤りとなる。

(D)誤り
法154条の2
国庫は、予算の範囲内において、健康保険事業の執行に要する費用のうち、高齢者医療確保法の規定による特定健康診査及び特定保健指導の実施に要する費用の一部を補助することができる。
よって、「全部を補助」とした問題文は誤りとなる。

(E)誤り
法31条、法204条1項、則159条1項
適用事業所以外の事業所の任意加入及び任意脱退の申請に対する厚生労働大臣の認可の権限(健康保険組合の設立又は解散を伴う場合を除く。)は、地方厚生局長等に委任されている。
よって、「日本年金機構」とした問題文は誤りとなる。
なお、適用事業所以外の事業所の任意加入及び任意脱退の認可(健康保険組合に係る場合を除く。)にかかる厚生労働大臣の権限に係る事務は、日本年金機構に行わせるものとされている。

  

→社会保険労務士試験過去問研究室(健康保険法)に戻る
Copyright (C) 2005 社会保険労務士試験情報局 All Rights Reserved