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■平成22年厚年-第10問(遺族厚生年金)

遺族厚生年金に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)遺族厚生年金の遺族の順位において、配偶者と子は同順位であるが、配偶者が妻(国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有する者に限る。以下同じ。)の場合には、妻に遺族厚生年金を支給する間、子(所在不明によりその支給が停止されている場合を除く。以下同じ。)の支給が停止され、配偶者が夫(国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有する者に限る。以下同じ。)の場合には、子に遺族厚生年金を支給する間、夫の支給が停止される。

(B)老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていない被保険者が死亡した場合において、死亡した者の妻が遺族厚生年金の受給権を取得したときに、夫の死亡当時遺族基礎年金の支給を受けることができる子がいない場合は、当該妻が40歳に達するまでの間、遺族厚生年金の額に遺族基礎年金の額の4分の3に相当する額が加算される。

(C)遺族厚生年金(その受給権者が65歳に達しているものに限る。)は、その受給権者が老齢厚生年金等のいずれかの受給権を有するときは、当該老齢厚生年金等の額の合計額から政令で定める額を控除した額に相当する部分の支給を停止する。

(D)障害等級1級及び2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が死亡したときは、遺族厚生年金の支給要件について、死亡した当該受給権者の国民年金の被保険者期間を問われることはない。

(E)老齢厚生年金の受給権者が死亡したことにより当該死亡者の子または孫が遺族厚生年金の受給権者となった場合において、当該子または孫が障害等級の3級に該当する障害の状態にあるときであっても、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したときに当該遺族厚生年金の受給権は消滅する。



■解説

(A)誤り
法59条2項、法66条
配偶者及び子については、遺族厚生年金の支給順位が同順位とされていることから次のとおり支給調整されることになっている。
子及び配偶者が遺族厚生年金の受給権者となった場合については、原則として配偶者に遺族厚生年金を支給し、子に対する遺族厚生年金は支給停止されることとされている。
しかしながら、配偶者に対する遺族厚生年金が、配偶者の申出により支給停止されているとき、被保険者等の死亡について、配偶者が遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって子が当該遺族基礎年金の受給権を有するとき(先妻の子と後妻で生計を同一にしていないようなケース)、配偶者が所在不明により遺族厚生年金が支給停止されているときは、受給権を有する子に遺族厚生年金が支給されることになる。
よって、「夫(国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有する者に限る。以下同じ。)の場合には、子に遺族厚生年金を支給する間、夫の支給が停止される。」とした問題文は誤りとなる。

(B)誤り
法62条1項
夫の死亡当時40歳以上の妻、40歳到達時に遺族基礎年金の受給権を有する妻(子を養育する妻)が受給する遺族厚生年金を対象として中高齢寡婦加算を加算することとされている。この加算は、その寡婦が65歳に達するまでの間、支給することとされているが、これは65歳からは老齢基礎年金が支給されるためである。
また、この加算は、老齢厚生年金の受給に必要な加入期間の要件を満たしている者が死亡した場合については、死亡した者の被保険者期間が20年以上である場合に限り行われる。したがって、昭和60年改正前の、旧制度の通算遺族年金に相当する加入期間の短い遺族厚生年金については、この加算は行われないこととなる。(この要件については40歳以後の加入期間が15年以上ある者は、20年以上の加入期間を有するものとみなされる。)
この中高齢寡婦加算の加算額は、遺族基礎年金の4分の3に相当する額とされている。
よって、問題文の事例の場合、中高齢寡婦加算の対象とならず、「遺族基礎年金の額の4分の3に相当する額が加算される。」とした問題文は誤りとなる。
なお、昭和31年4月1日以前に生まれた者については、その者が死亡した厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者であって国民年金の任意加入期間が短い場合には、65歳に達した後に支給される老齢基礎年金の額が低額となることもあることから、その者が65歳に達した後も、生年月日に応じて経過的に一定額の加算が行われることとされ、65歳到達の前後で受給する年金額がさがらないように配慮されている。

(C)正解
法64条の3第1項
遺族厚生年金の受給権者が65歳以後に老齢厚生年金等の受給権を有しているときは、遺族厚生年金のうち当該老齢厚生年金等に相当する額の支給を停止することとされている。(当該受給権者が退職共済年金の受給絵権者である場合にあっては、退職共済年金のうち政令で定める額(職域加算部分)を控除した額が支給停止額となる。)
よって、問題文は正解となる。
なお、従来の遺族厚生年金と老齢厚生年金の受給権を有する場合の併給調整の仕組みでは、遺族厚生年金を受給した場合には、自分自身の被保険者期間に基づく老齢厚生年金が受給できない(遺族厚生年金の3分の2と老齢厚生年金の2分の1の併給の場合にあっても、自分自身の老齢厚生年金の2分の1は受けられなかった)ために「掛け捨て感」生じる問題があった。このような問題を踏まえ、平成16年改正による遺族給付の受給方法では、まず、自分自身の老齢厚生年金を優先的に受給し、遺族厚生年金の年金額については、従来の受給方法で受けることができた額の中で最も多い額とし、そのうち優先的に受給する老齢厚生年金相当額を支給停止する仕組みとなったことから、新たに設けられたものである。

(D)正解
法58条1項
遺族基礎年金と同様、被保険者が死亡した場合及び老齢厚生年金を受けることができる者(老齢厚生年金の受給に必要な加入期間の要件を満たしている者を含む)が死亡した場合に遺族厚生年金を支給することとしている。そのほか、初診日において被保険者であった者が被保険者でなくなった後にその傷病により死亡した場合(初診日から5年以内)及び障害等級1級及び2級の障害厚生年金の受給権者が死亡した場合についても遺族厚生年金が支給されることになっている。
被保険者が死亡した場合及び初診日において被保険者であった者がその傷病により被保険者でなくなった後に死亡した場合(初診日から5年以内)については、保険料納付要件を満たしていることが必要となっている。
よって、問題文は正解となる。

(E)正解
法63条2項
子又は孫の有する遺族厚生年金の受給権は、次のいずれかに該当するに至ったときに消滅することとされている。
(1)子又は孫について、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき。ただし、子又は孫が障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にあるときを除く。
(2)障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある子又は孫について、その事情がやんだとき。ただし、子又は孫が18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるときを除く。
(3)子又は孫が、20歳に達したとき。
よって、問題文は正解となる。


※本問については、選択肢の表現が不的確であり、複数の正答が考えられるため、(A)及び(B)の選択肢を正答として採点する旨、社会保険労務士試験センターから発表があった。

  

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