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■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法)




■業務災害の判断基準

1.法人の代表者等に対する健康保険の適用
健康保険法は、業務外の事由による疾病等に関して保険給付を行うこととされているため、業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病は、健康保険の給付対象とならない。

一方、法人の代表者又は業務執行者(以下「代表者等」という。)は、原則として労働基準法上の労働者に該当しないため、労働者災害補償保険法に基づく保険給付も行われない。

しかしながら、極めて小規模な事業所の法人の代表者等については、その事業の実態等を踏まえ、当面の措置として、次のとおり取り扱う。

(1)健康保険の給付対象とする代表者等について
被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者については、その者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険による保険給付の対象とすること。

(2)労災保険との関係について
法人の代表者等のうち、労働者災害補償保険法の特別加入をしている者及び労働基準法上の労働者の地位を併せ保有すると認められる者であって、これによりその者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関し労災保険による保険給付が行われてしかるべき者に対しては給付を行わないこと。

このため、労働者災害補償保険法の特別加入をしている者及び法人の登記簿に代表者である旨の記載がない者の業務に起因して生じた傷病に関しては、労災保険による保険給付の請求をするよう指導すること。

(3)傷病手当金について
業務遂行上の過程において業務に起因して生じた傷病については、小規模な法人の代表者等は、一般的には事業経営につき責任を負い、自らの報酬を決定すべき立場にあり、業務上の傷病について報酬の減額等を受けるべき立場にない。
こうしたことも踏まえ、法第108条第1項の趣旨にかんがみ、法人の代表者等が、業務遂行上の過程において業務に起因して生じた傷病については、傷病手当金を支給しないこと。

(4)適用について
本通知は、平成15年7月1日以降に発生した傷病について適用すること。
(平成15年7月1日保発第0701002号)


2.業務従事中に生じた事故
(1)列車勤務車掌で駅通過の際通要接授のため上半身を窓外に出し前方注視中、眼に昆虫が入り刺傷をうけた場合、或は、また、蒸気機関車に乗務中の機関手、助手、車掌等が機関車より放出する煤煙が眼中に入って傷病に罹ったときは業務災害である。(昭和10年9月25日保規第298号)

(2)製紙工場の倉庫部常傭人夫で屋外作業を必要とする業務に従事する者が炎天下における作業のため日射病に罹ったときは、炎天下という事情があったにせよ業務外とはならない。(昭和2年11月17日保理第3364号)

(3)業中事業主が厳禁している捲揚機に搭乗し負傷した場合は、業務上の事由による負傷である。(昭和3年10月4日保理第2569号)

(4)工場法適用の発電所の発電手が余暇のある場合、所外において水路番又は架線工事に従事しているとき、その仕事のために負傷した場合は、業務上の事由となる。(昭和3年10月13日保理第2681号)


3.事業主主催の競技会等
(1)事業主主催の競技大会等で、事業主の特命による選手の出場又はその準備訓練中の事故は業務上の事由になる。(昭和23年12月26日基発第575号)

(2)事業主主催の慰安又は健康奨励を目的とする運動会、ハイキング等の場合の事故は業務外の事故である。(昭和23年12月26日基発第575号)


4.通勤途上の事故
使用者が福利施設等として所属労働者にのみ利用させている交通機関によって通勤する場合において使用者の責に帰すべき事由により発生した場合の往復途上の事故、労務管理上の必要により特定の交通機関によって通勤することを強制された場合の事故は、業務上の事故である。(昭和22年11月6日基発第208号)

5.出張中の事故
本社工場の被保険者が出張し、出張目的である用務遂行中、出張地の工場で業務上の事由により疾病に罹ったとき、本社工場の作業によるものではないが、業務上の疾病になる。(昭和5年2月5日保規第187号)

6.休憩中の事故
事業所内における休憩中の事故は、キャッチボール等の任意又は事業主の単なる奨励程度によるものであれば業務外の事故とする。(昭和22年11月27日基発第400号)

7.公的機関又は事業主が衛生上の必要性から実施する場合の事故
(1)工場主が工場管理の必要上勧誘し、承諾した者に工場内においてコレラ、チフス等の予防接種を行ない、これにより疾病に罹り又は、死亡したときは、業務上の事故として取扱う。(昭和7年7月11日収労第184号)

(2)従業員の工場衛生上、事業主において寄生虫駆除を施行した結果、疾病と認められる程度の症状を呈したときは業務上の事故として取扱う。(昭和8年2月25日保規第18号)

(3)一般公衆衛生の必要から行政命令が発せられた等の事情でこれを実施したものであれば業務外の事故である。(昭和8年2月25日保規第18号)、(昭和19年7月13日保発第437号)

(4)保険者が、保健施設として被保険者の寄生虫駆除を施行し、その結果疾病と認めるべき程度の症状を呈したものは、業務外の事由による疾病として取扱う。(昭和7年9月22日保発第714号)


8.経営上の必要性から発した事故
火災の場合、事業主の指揮又は消防に関する工場の規程によって工場のために消防に従事し負傷したときは、勤務時間中であると否とを問わず、また工場の内外を問わずに業務上の事由による負傷とする。(昭和5年6月17日保規第318号)

9.給食による食中毒
(1)工場給食又は事業主が間食として支給した食物による食中毒は、業務上の事故である。また、事業主と労働組合との共同の名において、事業の一部である行事として特配された食物により食中毒にかかったときは業務上の事故である。(昭和22年12月26日基発第575号)

(2)寄宿舎における給食により、明らかに感染したと認められる場合は業務上である。(昭和25年6月16日基収第860号)

10.天災地変による事故
天災地変、不可抗力による場合は、原則として業務外として取扱うが、業務の性質上天災等による危険発生の程度の高い業務について発生した事故又は特に考慮すべき事情のあるときは業務上の事故とする。(昭和24年9月5日基発第985号)

11.事業所設備の瑕疵による事故
職員が宿直勤務のために宿直室に就寝中、屋根が積雪で落下したため、下敷きとなり全身挫傷した場合、積雪という自然現象による事故であっても、その事務所が修理懈怠その他の理由により、同地方における他の建物に比べ設備不完全と認められる程度であれば、業務上と認められる。(昭和23年11月5日保文発第724号)

12.適用事業所以外の事業所での事故
A組合管掌事業所がロックアウト中、その被保険者がB事業所に日雇として雇われ、その作業中負傷(B事業所では業務上と認定)したとき、A事業所とは無関係であるが、事故の発生が、健康保険法の適用事業所におけるものと否とを問わず業務に起因するものである以上、健康保険による給付(事例ではA健康保険組合に傷病手当金を請求)は行なわない。(昭和28年8月4日保文発第4844号)

13.業務災害に起因する傷病
業務上による外傷治療中、治療薬物により皮膚炎をおこした場合、その皮膚炎が業務上疾病に対する正当な療養の結果発生したものと認められる限り、業務上疾病として取扱う。(昭和27年6月6日保文発第3274号)

14.業務災害による傷病が再発した場合
労働基準法及び労働者災害補償保険法においては、業務上の負傷又は疾病が一旦治癒した後、再発する場合等の場合は、その状態について再度認定を行ない、その結果再発と認められたときは、引き続き災害補償を行なう。(昭和24年4月8日基収第206号)

15.業務上外の認定について
業務上外の認定は、第一線機関相互間あるいは審査官相互間で連絡を密にし、いずれからも給付が受けられないということのないように、意見調整困難なものは主管省経伺の上、処理すること。(昭和30年6月9日基発第359号)

16.業務災害として申請中の取扱い
業務上の傷病として労働基準局に認定を申請中の未決定期間は、一応業務上の取扱いをし、最終的に業務上の傷病でないと認定され、更に健康保険による業務外と認定された場合には、さかのぼって療養費、傷病手当金等の給付を行なう。(昭和28年4月9日保文発第2014号)

  

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