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■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法)




■不当利得の徴収等

1.要旨
(1)偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときは、保険者は、その者からその給付の価額の全部又は一部を徴収することができる。(法第58条第1項)

(2)上記(1)の場合において、事業主が虚偽の報告若しくは証明をし、又は保険医療機関等において診療に従事する保険医等が、保険者に提出されるべき診断書に虚偽の記載をしたため、その保険給付が行われたものであるときは、保険者は、当該事業主又は保険医等に対し、保険給付を受けた者に連帯して上記(1)の徴収金を納付すべきことを命ずることができる。(法第58条第2項)

(3)保険者は、保険医療機関等又は指定訪問看護事業者が偽りその他不正の行為によって療養の給付に関する費用の支払を受けたときは、当該保険医療機関等又は指定訪問看護事業者に対し、その支払った額につき返還させるほか、その返還させる額に百分の四十を乗じて得た額を支払わせることができる。(法第58条第3項)

2.「偽りその他不正の行為」とは?
(1)刑法上の犯罪を構成する場合に限らず、社会通念上、不正行為と認められる行為をいう。

(2)甲の被保険者証により、同氏の被保険者資格を確認して診療を行ったときは、その後において当該被保険者資格が不正取得であることが保険者により確認された場合、その不正取得である旨の通知を受けた日以後の診療報酬については患者の全額負担であり、当該通知を受けた日までの診療報酬については、診療担当者に関係なく、保険者が直接患者に対して保険者あて返納せしめる。(昭和29年8月30日保文発第9277号)

3.「全部又は一部」とは?
情状によるという趣旨ではない。字句的に保険給付という広い表現をとった関係上、詐欺その他の不正行為により受けた分が、その一部であることが考えられるので、全部又は一部としたものであって、詐欺その他の不正行為によって受けた分はすべてという趣旨である。(昭和32年9月2日保険発第123号)

4.「徴収する」とは?
法第180条の徴収金に該当するという意味である。
よって、督促を行い、延滞金を課し、滞納処分を行うことができる。

5.保険医療機関等に対する返還金等
保険医療機関等に対する返還金及び加算金については、法第180条に規定する「この法律による徴収金」には含まれない。
よって、不当利得として民法に規定が適用される。

■文書の提出等

1.要旨
保険者は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受ける者(当該保険給付が被扶養者に係るものである場合には、当該被扶養者を含む。)に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問若しくは診断をさせることができる。(法第59条)

2.「保険給付に関して必要があると認めるとき」とは?
傷病手当金の労務不能の判断、療養費の支給の可否、給付制限の確認等の事実確認に必要な場合である。

3.「文書その他の物件」とは?
医師の意見書、診断書、レントゲンフィルム等が該当する。

4.当該職員に含まれる範囲
健康保険組合の職員も含まれる。

5.「診断をさせる」とは?
受診中の被保険者の治療経過が良好でないときその診療を担当していた保険医以外に当該職員をして診断させる場合、及び保険医が就業不適当と認めたが保険者は業務に服し得ると認めその保険医以外に当該職員をして診断させる場合などは、法第59条の診断の範囲に入る。
その他本条は、主として傷病の治癒をは遷延せんとする場合及び虚病の防止を目的とするすべての診断を含む。(昭和8年10月5日保規第365号)

6.参考
この規定に違反しても罰則は適用されないが、法第121条に規定に基づき、保険者は保険給付の全部又は一部を給付しないことができる。

■診療録の提示等

1.要旨
(1)厚生労働大臣は、保険給付を行うにつき必要があると認めるときは、医師、歯科医師、薬剤師若しくは手当を行った者又はこれを使用する者に対し、その行った診療、薬剤の支給又は手当に関し、報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員に質問させることができる。(法第60条第1項)

(2)厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、療養の給付又は入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給を受けた被保険者又は被保険者であった者に対し、当該保険給付に係る診療、調剤又は第八十八条第一項に規定する指定訪問看護の内容に関し、報告を命じ、又は当該職員に質問させることができる。(法第60条第2項)

(3)上記(1)及び(2)の質問を行う当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならなず、その権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。(法第60条第3項)

2.権能の行使する者
保険者に対しては、この規定を行使する権能が付与されていないため、厚生労働大臣(地方社会保険事務局長、社会保険事務所長、地方厚生支局長に権限を委任)に調査を依頼し権限を行使してもらうことになる。

3.「行うにつき」とは?
保険給付の支給決定をする段階という意味である。

4.「手当を行った者」とは?
(1)あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等が該当する。

(2)「行った者」とあるので、この規定が適用されるのは、手当を行った後、給付の支給決定が行われる前である。

5.「これを使用する者」とは?
病院等の開設者又は柔道整復師等を使用する者が該当する。

6.「その他の物件」とは?
レントゲンフィルム等が該当する。

■受給権の保護

1.要旨
保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。(法第61条)

2.「保険給付を受ける権利」とは?
(1)被保険者死亡後に於て其被保険者が請求権を有する傷病手当金又は療養の給付に代えて支給せられる療養費等(分娩費、出産手当金も同じ)は公法上の債権になるも金銭債権であり其の相続権者が当然請求権を有する。(昭和2年2月18日保理第719号)

(2)保険給付を受ける権利の中には、療養の給付は含まれない。
※被保険者の疾病等に対して療養等を受ける権利であり、その時々に発生し、消滅していく権利であるという性質上、譲渡性を有しない権利だから。

3.差し押さえ
差し押えが禁止されているので、当然相殺も禁止である。(民法第510条)

4.参考
保険給付請求権について、被保険者と第三者との間に、譲渡契約が締結されたとしても違法行為になり、原始的不能を内容とするものであるから、絶対的に無効となり、譲渡人はそれを主張することはできない。

■租税その他の公課の禁止

1.要旨
租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。(法第62条)

2.租税
税法に定められている国税及び地方税が該当する。

3.金品
健康保険法で規定されている給付の他、健康保険組合独自の付加給付も含まれる。

  

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