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■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法)




■保険料

1.要旨
保険者は、健康保険事業に要する費用(老人保健拠出金、退職者給付拠出金並、介護納付金、健康保険組合においては、日雇拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため、保険料を徴収する。 (法第155条)

2.保険料の徴収について
保険料の徴収については、法第180条に規定されている督促・滞納処分、法第183条に規定されている国税滞納処分の例による強制徴収、法第190条に規定されている審査請求、法第193条に規定されている消滅時効について適用される。

3.保険料納付義務者が死亡した場合
納付義務者が死亡のときは、その相続人に対して納入告知書が発せられる。(昭和3年10月22日保理第2562号)

4.納入告知書に記載する教示文
保険料の納入告知書の適当な箇所に左の趣旨を附記すること。「徴収金に不服がある場合は、告知書を受け取つた日から60日以内に書面か口頭で社会保険審査会に審査の請求をすることができます。」(昭和29年2月17日保険発第41号)

■被保険者の保険料額

1.保険料額
被保険者に関する保険料額は、各月につき、次の区分に応じ定める額とする。

(1)介護保険第2号被保険者
一般保険料額と介護保険料額との合算額 (法第156条第1項第1号)

(2)介護保険第2号被保険者以外の被保険者
一般保険料額 (法第156条第1項第2号)

(参考)
1.一般保険料額とは?
各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ一般保険料率を乗じて得た額

2.介護保険料額とは?
各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ介護保険料率を乗じて得た額

3.介護保険第2号被保険者とは?
市区町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者(介護保険法第9条)

2.例外規定
(1)介護保険第2号被保険者である被保険者が介護保険第2号被保険者に該当しなくなった場合においては、その月分の保険料額は、一般保険料額とする。ただし、その月に再び介護保険第2号被保険者となった場合については一般保険料額と介護保険料額との合算額となる。(法第156条第2項)

(2)前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない。(法第156条第3項)

3.法156条第1項の「各月につき」とは?
(1)保険料は月を単位として算定する。よって月の最終日に被保険者資格を取得した場合でも、1月分の保険料が徴収されることになる。

(2)同一月内において資格の得喪2回以上に及ぶ場合は、1ヶ月につき2ヶ月分以上の保険料を負担することがある。(昭和19年6月6日保発第363号)

4.法156条第3項の「前月から引き続き」とは?
使用関係又は資格が同一性をもって断続することなく前後の時点が接続していることをいう。(昭和31年10月17日保文発第8410号)

5.法156条第3項の「その月分の保険料は、算定しない」とは?
(1)前月から引き続き被保険者である者が、資格を喪失した場合は、その月分の保険料は徴収しないという意味である。

(2)資格を取得した月に、更に資格を喪失すれば、保険料は1ヶ月分徴収される。(昭和27年7月14日保文発第129107号)

6.参考
(1)健康保険組合では、規約で定めることにより、特定被保険者の保険料額を一般保険料額と介護保険料額の合算額とすることができる。(健康保険法附則第7条)

→ようするに介護保険第2号被保険者以外の被保険者であっても、被扶養者に介護保険第2号被保険者がいる場合は、介護保険料を徴収できるということ。

(参考)
特定被保険者とは?
健康保険組合の被保険者で介護保険第2号被保険者以外の者のうち、介護保険第2号被保険者である家族が被扶養者にいる者。
例えば、40歳未満の被保険者の被扶養者が介護保険第2号被保険者(40歳以上65歳未満の者)である場合や介護保険第1号被保険者(65歳以上の者)である被保険者の被扶養者が介護保険第2号被保険者(40歳以上65歳未満の者)である場合など。

(2)承認健康保険組合
厚生労働大臣の承認を受けた健康保険組合(承認健康保険組合)は、介護保険第2号被保険者である被保険者に関する保険料額を一般保険料額と特別介護保険料額との合算額とすることができる。(健康保険法附則第8条)

→ 簡単にいうと承認健康保険組合は定額の介護保険料額にしてもいいということ。

(参考)
特別介護保険料額とは?
1又は2以上の標準報酬の等級区分について一定額を定めたもの
例えば、39等級を4等級に区分してもいいし、1等級にして全員定額の介護保険料率額にしても問題ない

■一般保険料率

■政府管掌健康保険
1.保険料率
一般保険料率 → 1000分の82(法第160条第1項)

※介護保険料率 → 1000分の12.3(平成18年3月分より)

2.保険料率の決定
(1)政府管掌健康保険の被保険者に関する一般保険料率は、保険給付、老人保健拠出金及び退職者給付拠出金に要する費用の予想額、保健事業及び福祉事業に要する費用の予定額並びに日雇拠出金、国庫補助及び当該事業運営安定資金の予定運用収入の額に照らし、おおむね5年を通じ財政の均衡を保つことができるものでなければならない。(法第160条第2項)

(2)社会保険庁長官は、少なくとも2年ごとに、一般保険料率が上記1の基準に適合していることを確認し、その結果を公表するものとする。(法第160条第3項)

(3)社会保険庁長官は、一般保険料率が上記(1)の基準に適合しないことが明らかになったときは、厚生労働大臣に対し、一般保険料率の変更について申出をすることができる。(法第160条第4項)

(4)上記(3)の申出であって一般保険料率の引上げに係るものは、保険給付の内容の改善又は診療報酬の改定を伴う場合に限り、することができる。(法第160条第5項)

(5)上記(4)に規定する場合のほか、老人保健拠出金若しくは退職者給付拠出金の増加に伴いその納付に必要がある場合又は一般保険料額の総額の減少を補う必要がある場合においては、上記(3)の申出をすることができる。(法第160条第6項)

(6)厚生労働大臣は、上記3の申出を受けた場合において、必要があると認めるときは、社会保障審議会の議を経て、1000分の66から1000の91までの範囲内において、一般保険料率を変更することができる。(法第160条第7項)

(7)政府は、厚生労働大臣が上記6の規定により一般保険料率を変更したときは、速やかに、その旨を国会に報告しなければならない。(法第160条第8項)

■健康保険組合
1.保険料率の決定
(1)健康保険組合が管掌する健康保険の一般保険料率は、1000分の30から1000分の95までの範囲内において、決定するものとする。(法第160条第9項)

(2)上記(1)の一般保険料率の決定は、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。(法第160条第10項)
※権限は地方厚生(支)局長に委任

2.調整保険料
(1)健康保険組合が管掌する健康保険の医療に関する給付又は健康保険組合に係る老人保健拠出金、日雇拠出金若しくは退職者給付拠出金若しくは介護納付金の納付に要する費用の財源の不均衡を調整するため、健康保険組合連合会は、会員である健康保険組合に対する交付金の交付の事業を行うものとする。(健康保険法附則第2条第1項)

(2)健康保険組合は、上記(1)の事業に要する費用に充てるため、健康保険組合連合会に対し、拠出金を拠出するものとする。(健康保険法附則第2条第2項)

(3)健康保険組合は、上記(2)の規定による拠出金の拠出に要する費用に充てるため、調整保険料を徴収する。(健康保険法附則第2条第3項)

(4)調整保険料額は、各月につき、各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ調整保険料率を乗じて得た額とする。(健康保険法附則第2条第4項)

(5)調整保険料率は、交付金の交付に要する費用並びに組合の組合員である被保険者の数及び標準報酬を基礎として、政令で定める。(健康保険法附則第2条第5項)

(6)一般保険料率と調整保険料率とを合算した率の変更が生じない一般保険料率の変更の決定は、法第160条第10項の規定にかかわらず、厚生労働大臣の認可を受けることを要しない。ただし、変更後の一般保険料率を厚生労働大臣に届け出なければならない。(健康保険法附則第2条第8項及び第9項)

■介護保険料率

介護保険料率は、各年度において保険者が納付すべき介護納付金(日雇特例被保険者に係るものを除く。)の額(政府が管掌する健康保険においては、その額から国庫補助額を控除した額)を当該年度における当該保険者が管掌する介護保険第2号被保険者である被保険者の標準報酬月額の総額及び標準賞与額の総額の合算額の見込額で除して得た率を基準として、保険者が定める。

(計算式)
(各年度に納付すべき介護納付金の額)÷(介護保険第2号被保険者の標準報酬月額+標準賞与額の総額の見込額)

■一般被保険者の保険料

■保険料の負担及び納付義務
1.要旨
(1)被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の2分の1を負担する。(法第161条第1項)

(2)事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。(法第161条第2項)

(3)被保険者が同時に2以上の事業所に使用される場合における各事業主の負担すべき保険料の額及び保険料の納付義務については、政令で定めるところによる。(法第161条第4項)

2.保険料の負担に関する解釈
(1)保険料徴収の特例に該当するに至った場合等を除いては、被保険者の資格を有する限り、保険料は負担しなければならない。(昭和2年8月18日保理第2664号)

(2)休職で休んでいても使用関係が存続していれば、被保険者としての資格を喪失したのではないから、保険料の負担義務を負わなければならない。(昭和29年7月1日保文発第7494号)(昭和30年6月20日保文発第5510号)

(3)被保険者が法定期間傷病手当金を受けたが疾病が治癒せず、これが療養のため労務に服しないために収入の途がない場合であっても、被保険者である間は保険料を負担すべき義務は負わなければならない。(昭和2年9月2日保理第3240号)

3.保険料の納付義務に関する解釈
(1)被保険者の資格取得届の遅延と保険料の徴収とは無関係であり、届が遅延している被保険者であっても資格を取得し、確認により効力を発生した日からの分を納付しなければならない。(昭和2年1月15日保理第217号)

(2)事業主は、被保険者に支払う報酬から控除した被保険者の負担する保険料の額のいかんにかかわらず保険料全額の納付義務を負うべきものである。(昭和2年2月14日保理第218号)

(3)被保険者の負担する保険料を被保険者に支払う報酬から控除し得ないことがあっても、納付義務は免れることはできない。(昭和2年保理第713号)

(4)被保険者に対し支払うべき報酬のないため保険料を控除し得ぬ場合又は支払っても控除し得ぬ場合であっても、被保険者の負担すべき保険料は、納付すべき義務を負う。(昭和2年2月14日保理第578号)(昭和4年1月18日事発第125号)

(5)被保険者の資格を喪失した者に関する保険料であって事業主において当該被保険者であった者に支払う報酬から控除し得ない場合であっても、事業主はこれを組合に納付すべき義務がある。(昭和2年2月18日保理第696号)

4.被保険者が同時に2以上の事業所に使用される場合
各事業所の事業主が保険料納付義務を負う。
この場合の各事業主の負担する保険料額は、その被保険者の保険料額を各事業所における報酬月額又は賞与額で按分した額により決定する。(施行令第47条)

■健康保険組合の保険料負担割合の特例
1.要旨
健康保険組合は、法第161条第1項(保険料の負担及び納付義務)の規定にかかわらず、規約で定めるところにより、事業主の負担すべき一般保険料額又は介護保険料額の負担の割合を増加することができる。(法第162条)

2.「規約で定めるところ」の意味
事業主と被保険者の合意により、組合規約に規定しなければいけないという意味である。
※ただし、健康保険組合設立時は、事業主が規約を作成することになるので、事業主が負担割合を定めることになる。

3.「負担の割合を増加する」の解釈
(1)健康保険組合における負担割合も、通常、折半負担の原則のうえにたつべきものであり、法第161条第1項の原則を全く無視して適当に負担割合を増加することができるということではない。(昭和32年2月1日保発第3号)

(2)組合は、相互扶助の精神にもとづき事業主と被保険者がその事業に要する費用をともに負担することによりその民主的な運営をはからなければならないものである。
したがって、保険料額の負担割合については、法第161条第1項及び法第163条に定められているところではあるが、この趣旨からも、事業主の負担を増す場合においても、少なくとも、法定給付費、老人保健拠出金、日雇拠出金及び退職者給付拠出金に要する費用の2分の1以上は、被保険者が負担するように定めることが適当であること。(昭和35年11月7日保発第70号)

(3)被保険者の負担割合を全くなくすことは、法第163条の趣旨から適当ではない。(昭和25年6月21日保文発第1418号)

(4)法第163条の規定に基づき組合の規約で事業主の負担すべき割合を増加した場合の当該増加部分については、被保険者たる組合員に対する給与として所得税を課税することは誤りであり、法第161条第1項、法第163条の規定による事業主負担の保険料額と同様課税しない。(昭和24年4月11日保発第23号)

■組合員である被保険者の負担する一般保険料額の限度
健康保険組合の組合員である被保険者(任意継続被保険者は除く。)の負担すべき一般保険料額が一月につき標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ1000分の45を乗じて得た額を超える場合においては、その超える部分は、事業主の負担とする。(法第163条)

■保険料徴収の特例
1.少年院に収容された場合及び監獄等に拘禁された場合
前月から引き続き被保険者(任意継続被保険者を除く。)ある者が次のいずれかに該当するに至った場合はその月以後(被保険者がその資格を取得した月に次のいずれかに該当するに至った場合はその翌月以後)、次のいずれかに該当しなくなった月の前月までの期間、保険料を徴収しない。(法第158条)

(1)少年院その他これに準ずる施設に収容されたとき。
(2)監獄、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき。

(参考)
1.被保険者がいずれかに該当するに至った月に再び該当しなくなったときは、保険料が徴収される。(法第158条但書)

2.被保険者、事業主いずれも保険料を免除される。

3.任意継続被保険者については、「該当することがあまり考えられないこと」、「あくまで任意加入であること」等を考慮しこの規定は適用されない。

2.育児休業中の場合
(1)要旨
育児休業等をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、保険者に申出をしたときは、その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間、当該被保険者に関する保険料を徴収しない。(法第159条)

(2)「保険者に申出」とは?
申出書の提出は、被保険者の養育する子が1歳に達する日までの育児休業、当該子が1歳に達する日から1歳6ヶ月に達する日までの育児休業、1歳から3歳に達する日までの育児休業の制度に準ずる措置による休業に分け、その都度、当該育児休業等期間中において行うものであること。なお、それぞれの育児休業等期間中において、育児休業等を終了した後に、再度当該子に係る育児休業等を開始したときは、その都度、当該育児休業等期間中において、申出書の提出を行うものであること。(平成17年3月29日保保発第0329001号・庁保険発第0329002号)

(3)保険料免除の始期
保険料の免除の始期については、育児休業等を開始した日の属する月とするものであること。ただし、それぞれの育児休業等をしている期間中に申出が行われたものに限られるものであること。なお、労働基準法又は船員法に定める産後休業期間中は、育児休業等に当たらないものであること。(平成17年3月29日保保発第0329001号・庁保険発第0329002号)

(4)保険料免除の終期
保険料の免除の終期については、当該育児休業等を終了する日(以下「休業終了予定日」という。)の翌日の属する月の前月とすること。なお、当該育児休業等の対象となる子が3歳に達する日以後の休業について労使協定により定められている場合であっても、本制度は3歳未満の子を養育するための育児休業等に限って適用するものであること。(平成17年3月29日保保発第0329001号・庁保険発第0329002号)

■保険料の納付
1.要旨
(1)被保険者に関する毎月の保険料は、翌月末日までに、納付しなければならない。(法第164条第1項)

(2)保険者は、被保険者に関する保険料の納入の告知をした後に告知をした保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき、又は納付した被保険者に関する保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったときは、その超えている部分に関する納入の告知又は納付を、その告知又は納付の日の翌日から6月以内の期日に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができる。(法第164条第2項)

(3)上記(2)の規定によって、納期を繰り上げて納入の告知又は納付をしたものとみなしたときは、保険者は、その旨を当該納付義務者に通知しなければならない。(法第164条第3項)

2.納付期限
法172条(保険料の繰上徴収)に該当する場合を除いて、納期を繰上指定することはできない。

※事業主に対し納入告知書を発する日に前月中に被保険者資格取得を取得した旨の届出があったとき又は1月に資格を取得した被保険者の資格洩れを3月に発見し保険料の追徴を行うような場合には、保険者は随時に保険料を調定し、適当に納付期限を指定することができる。(昭和2年3月28日保理第766)

3.保険料の還付
納期を繰り上げて納入の告知又は納付をしたものとみなしたときにおいて、その後、適用用事業所が解散等によって適用事業所でなくなり、従来の過納保険料の充当残額がある場合は、当然還付することを要する。
また、その残額中の被保険者負担分については、納付義務者から当該被保険者に対して返還すべきものである。

■口座振替による納付
社会保険庁長官は、納付義務者から、預金又は貯金の払出しとその払い出した金銭による保険料の納付をその預金口座又は貯金口座のある金融機関に委託して行うことを希望する旨の申出があった場合においては、その納付が確実と認められ、かつ、その申出を承認することが保険料の徴収上有利と認められるときに限り、その申出を承認することができる。(法第166条)

■保険料の源泉控除
1.要旨
(1)事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。(法第167条第1項)

(2)事業主は、被保険者に対して通貨をもって賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。(法第167条第2項)

(3)事業主は、上記(1)及び(2)の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。(法第167条第3項)

2.「通貨をもって」とは?
通貨に代えて、現物給与を行う場合には源泉控除することができない。

3.「前月の標準報酬月額に係る保険料」とは?
(1)事業主が報酬より控除することを得べき被保険者の負担する保険料は前月分の保険料に限る。(昭和2年2月5日保発第112号)

(2)前々月の保険料を事業主が納付した場合、被保険者の負担すべき保険料については、被保険者は、事業主に対し、私法上の債務を負う。その支払方法は話合できめることになる。(昭和29年9月29日保文発第10844号)

4.「使用されなくなった場合」の源泉控除
(1)死亡した場合も含まれる(昭和2年8月疑義事項解釈)

(2)その月分の保険料とは、その月に取喪があった場合の保険料であって、前月から引き続き被保険者である者が資格を喪失したときは、その月分の保険料は徴収されないのでその月分の保険料の控除も行われない。(昭和27年7月14日保文発第3917号)

5.「報酬から控除」とは?
(1)前月分の報酬をその月に支払う制度の工場においては、前月分の保険料を控除し得る報酬はその月に支払う報酬とする。(大正15年12月4日収保第313号)

(2)その月分の報酬をその月末に支払う制度の工場にあってはその月分の保険料を控除し得るべき報酬は、その翌月末日に支払う報酬とする。(大正15年12月4日収保第313号)

(3)毎月数回に報酬を支払う事業においては、前月分の保険料を報酬から控除する場合は、その月において数回に分って控除するも或はまた1回に控除するのも自由である。(大正15年12月4日収保第313号)

(4)事業主が被保険者に対し支払う報酬から保険料を控除する場合において、その保険料の控除を他の控除金に先立って行うか否かは事業主の任意である。(昭和2年2月1日保理第578号)

(5)事業主が控除しないで被保険者負担の保険料を立替納入した場合でも、当該負担分はあくまで被保険者の負担とすべきもので、事業主は、その部分について私法上の求償権を有する。(昭和25年6月21日保文発第1418号)

■任意継続被保険者の保険料

1.要旨
(1)任意継続被保険者に関する保険料は、任意継続被保険者となった月から算定する。(法第157条第1項)

(2)任意継続被保険者が負担する各月の保険料額の算定方法は一般被保険者の場合と同様である。(法第157条第2項)

(3)任意継続被保険者は納付すべき保険料の全額を負担する。(法第161条第1項但書)

(4)任意継続被保険者は、自己の負担する保険料を納付する義務を負う。(法第161条第3項)
※一般被保険者は事業主が納付義務を負う。

2.保険料の納付期日
任意継続被保険者に関する保険料については、その月の10日(初めて納付すべき保険料については、保険者が指定する日)までとする。(法第164条第1項但書)

3.保険料の免除
任意継続被保険者については、「保険料徴収の特例(免除)」の規定は適用されない。(法第158条)

4.任意継続被保険者の保険料の前納
(1)要旨
1.任意継続被保険者は、将来の一定期間の保険料を前納することができる。(法第165条第1項)

2.上記1の場合において前納すべき額は、当該期間の各月の保険料の額から政令で定める額を控除した額とする。(法第165条第2項)

3.上記1の規定により前納された保険料については、前納に係る期間の各月の初日が到来したときに、それぞれその月の保険料が納付されたものとみなす。(法第165条第3項)

(2)保険料の前納期間
1.原則
保険料の前納は、4月から9月まで若しくは10月から翌年3月までの6月間又は4月から翌年3月までの12月間を単位として行うものとする。(施行令第48条)

2.例外
当該6月又は12月の間において、任意継続被保険者の資格を取得した者又はその資格を喪失することが明らかである者については、当該6月間又は12月間のうち、その資格を取得した日の属する月の翌月以降の期間又はその資格を喪失する日の属する月の前月までの期間の保険料について前納を行うことができる。(施行令第48条但書)

(参考)
前納期間は6月前納(4月から9月、10月から翌年3月)と12月前納(4月から翌年3月)が原則だが、前納期間中に資格取得又は喪失があった場合は翌月以降基準月までの期間分の前納ができる。
例えば5月に任意継続被保険者になった者が6月前納を希望した場合は、6月から9月までの4月前納、12月前納を希望した場合は6月から翌年3月までの10月前納が例外的に認められる。

(3)前納の際の控除額
1.前納に係る期間の各月の保険料の合計額から、その期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の合計額(この額に1円未満の端数がある場合において、その端数金額が50銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が50銭以上であるときは、これを1円として計算する。)を控除した額とする。(施行令第49条第1項)

2.社会保険庁長官は、政府が管掌する健康保険の任意継続被保険者の前納に係る期間の各月の保険料の額から前項に規定する額を控除した額を告示するものとする。(施行令第49条第2項)

(4)前納保険料の充当
保険料が前納された後、前納に係る期間の経過前において任意継続被保険者に係る保険料の額の引上げが行われることとなった場合においては、前納された保険料のうち当該保険料の額の引上げが行われることとなった後の期間に係るものは、当該期間の各月につき納付すべきこととなる保険料に、先に到来する月の分から順次充当するものとする。(施行令第50条)

(5)前納保険料の還付
1.保険料を前納した後、前納に係る期間の経過前において任意継続被保険者がその資格を喪失した場合においては、その者(死亡による資格喪失の場合においては、その者の相続人)の請求に基づき、前納した保険料のうち未経過期間に係るものを還付する。(施行令第51条第1項)

2.上記1に規定する未経過期間に係る還付額は、任意継続被保険者の資格を喪失した時において当該未経過期間につき保険料を前納するものとした場合におけるその前納すべき額に相当する額とする。(施行令第51条第2項)

3.「資格を喪失した時において当該未経過期間」とは?
前納保険料の還付の取扱いは、健康保険法施行令第51条によるが、この場合において、任意継続被保険者が資格を喪失した日の属する月の保険料の還付額については、前納によって割り引かれる前の保険料額となるものであること。(昭和59年12月4日保険発第103号)

※喪失月に関しては前納割引のない、1月分を還付し、翌月以降で前納分の保険料があれば、それらの期間分は前納割引した額を還付する。

4.保険料が前納された後、前納に係る期間の経過前において任意継続被保険者に係る保険料の額の引下げが行われることとなった場合においては、前納された保険料の額のうち当該保険料の額の引下げが行われることとなった後の期間に係る額から当該期間の各月につき納付すべきこととなる保険料の額の合計額を控除した額は当該前納に係る期間の後に引き続き保険料を前納することができる期間に係る前納されるべき保険料の額の一部とみなす。ただし、当該被保険者の請求があったときは、当該控除した額を当該被保険者に還付するものとする。(施行規則第140条)

(6)前納保険料の納付
任意継続被保険者は、保険料を前納しようとするときは、前納しようとする額を前納に係る期間の初月の前月末日までに払い込まなければならない。(施行規則第139条)

■日雇特例被保険者の保険料額

■保険料額
1.標準賃金に対する保険料額(法第168条第1項第1号)
その者の標準賃金日額の等級に応じ、次に掲げる額の合算額を基準として算定した額
(1)標準賃金日額に保険料率をを乗じて得た額
(2)上記(1)の額に100分の31を乗じて得た額

※上記(1)及び(2)の額に10円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる。(施行令第54条第1項)

2.賞与に対する保険料額(法第168条第1項第2号)
賞与額にに保険料率をを乗じて得た額

※賞与額の1,000円未満の端数は切り捨てる。また賞与額が40万円を超える場合は40万円とする。

(参考)
保険料率とは?
1.介護保険第2号被保険者である日雇特例被保険者の保険料率は、政府管掌健康保険の一般保険料率と介護保険料料率を合算した率
2.介護保険第2号被保険者以外の日雇特例被保険者の保険料率は、政府管掌健康保険の一般保険料率

■保険料の負担(法第169条第1項)
1.被保険者負担分
(1)標準賃金
標準賃金日額に保険料率をを乗じて得た額の2分の1

(2)賞与
賞与額に保険料率をを乗じて得た額の2分の1

2.事業主負担分
(1)標準賃金
標準賃金日額に保険料率をを乗じて得た額の2分の1
標準賃金日額に保険料率を乗じて得た額にさらに100分の31を乗じて得た額

(2)賞与
賞与額に保険料率をを乗じて得た額の2分の1

■保険料の納付義務
1.事業主は、日雇特例被保険者を使用する日ごとに、その者及び自己の負担すべきその日の標準賃金日額に係る保険料を納付する義務を負う。(法第169条第2項)

2.上記1の規定による保険料の納付は、日雇特例被保険者が提出する日雇特例被保険者手帳に健康保険印紙をはり、これに消印して行わなければならない。(法第169条第3項)

(参考)
消印
1.事業主は、消印する場合に使用する印章の印影を、あらかじめ、社会保険事務所長等に届け出なければならない。印章を変更しようとするときも、同様とする。

2.上記1の印章は、事業所の名称及びその電話番号を明らかにするものでなければならない。

3.消印は、印影が明瞭に読み取ることができるよう行わなければならない。
(施行規則第147条)

3.日雇特例被保険者手帳を所持する日雇特例被保険者は、適用事業所に使用される日ごとに、その日雇特例被保険者手帳を事業主に提出しなければならない。(法第169条第4項)

4.事業主は、日雇特例被保険者を使用する日ごとに、日雇特例被保険者にその所持する日雇特例被保険者手帳の提出を求めなければならない。(法第169条第5項)

5.事業主は、上記1の規定により保険料を納付したときは、日雇特例被保険者の負担すべき保険料額に相当する額をその者に支払う賃金から控除することができる。この場合においては、事業主は、その旨を日雇特例被保険者に告げなければならない。(法第169条第6項)

6.事業主は、日雇特例被保険者に対して賞与を支払った日の属する月の翌月末日までに、その者及び自己の負担すべきその日の賞与額に係る保険料を納付する義務を負う。(法第169条第7項)

7.過納した場合の6ヶ月以内の繰上げ納付の規定(法第164条第2項及び第3項)並びに口座振替による納付の規定(法第166条)は上記6の規定による保険料の納付(賞与からの保険料納付)について準用する。
また、日雇特例被保険者に対して通貨をもって賞与を支払う場合については、賞与額から日雇特例被保険者負担分の保険料額を源泉控除することができる。(法第169条第8項)

※日雇特例被保険者が1日において2以上の事業所に使用される場合においては、初めにその者を使用する事業主が納付義務を負う。

■日雇特例被保険者の標準賃金日額に係る保険料額の告知等
1.事業主が標準賃金日額に係る保険料の納付を怠ったときは、保険者は、その調査に基づき、その納付すべき保険料額を決定し、これを事業主に告知する。(法第170条第1項)

2.事業主が、正当な理由がないと認められるにもかかわらず、標準賃金日額に係る保険料の納付を怠ったときは、保険者は、上記1により決定した保険料額の100分の25に相当する額の追徴金を徴収する。ただし、決定された保険料額が1,000円未満であるときは、この限りでない。(法第170条第2項)

3.追徴金を計算するに当たり、決定された保険料額に1,000円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。(法第170条第3項)

4.上記2に規定する追徴金は、その決定された日から14日以内に、保険者に納付しなければならない。(法第170条第4項)

■健康保険印紙の受払等の報告
1.事業主は、その事業所ごとに健康保険印紙の受払及び標準賃金日額に係る保険料の納付を怠ったときの告知に係る保険料の納付の受払等に関する帳簿を備え付け、その受払等の都度、その受払等の状況を記載し、かつ、翌月末日までに、日雇特例被保険者の保険の保険者にその受払等の状況を報告しなければならない。(法第171条第1項)

2.上記1の場合において、健康保険組合を設立する事業主は、併せて当該健康保険組合に同報告をしなければならない。(法第171条第2項)

※報告は翌月末日までにしなければならない。(施行規則第149条第2項)

3.上記2の規定により報告を受けた健康保険組合は、毎年度、日雇特例被保険者の保険の保険者に当該健康保険組合を設立する事業主の前年度の受払等の報告をしなければならない。(法第171条第3項)

※報告は、毎年度における健康保険印紙の受払い及び標準賃金日額に係る保険料の納付を怠ったときの告知に係る保険料の納付状況を記載した報告書を、翌年度5月末日までに地方社会保険事務局長に提出して行うものとする。(施行規則第149条第3項)

■日雇拠出金の徴収及び納付義務
1.日雇特例被保険者の保険の保険者は、日雇特例被保険者に係る健康保険事業に要する費用(老人保健拠出金及び介護納付金の納付に要する費用を含む。)に充てるため、保険料を徴収するほか、毎年度、日雇特例被保険者を使用する事業主の設立する健康保険組合(以下「日雇関係組合」という。)から拠出金を徴収する。(法第173条第1項)

2.日雇関係組合は、日雇拠出金を納付する義務を負う。(法第173条第2項)

3.日雇拠出金の納期及び納付の額
(1)日雇拠出金の納期は、9月30日及び3月31日とする。(施行令第55条第1項)

(2)各納期に納付すべき日雇拠出金の額は、当該年度の日雇拠出金の額の2分の1に相当する金額とする。(施行令第55条第2項)

(3)上記(2)の規定にかかわらず、当該年度の日雇拠出金の額に2,000円未満の端数があるときは、9月30日の納期に納付すべき額は当該年度の日雇拠出金の額に当該端数の額を加算した額の2分の1に相当する金額とし、3月31日の納期に納付すべき額は当該年度の日雇拠出金の額から当該端数の額を控除した額の2分の1に相当する金額とする。(施行令第55条第3項)

※日雇拠出金のうち2,000円未満の端数は9月30日に納付する。

  

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