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トップページ過去問研究室(労働保険徴収法) 平成24年労災-第8問(徴収法の総則、保険関係の成立等)
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■平成24年労災-第8問(労働保険徴収法の総則、保険関係の成立等)

労働保険徴収法の総則、保険関係の成立等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)労働保険徴収法における「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであって、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)であり、労働基準法第26条に定める休業手当は賃金に含まれるが、同法第20条に定めるいわゆる解雇予告手当は賃金に含まれない。

(B)退職を事由として支払われる退職金であって、退職時に支払われるものについては、一般保険料の算定基礎となる賃金総額に算入しない。

(C)労災保険率を決定する際の事業の種類に関し、労働者派遣事業における事業の種類は、派遣労働者の派遣先での作業実態に基づき決定され、必ずしも「その他の各種事業」になるものではない。

(D)有期事業の一括は法律上一定の要件に該当する場合には当然に行われるものであり、事業主からの申請、都道府県労働局長による承認は不要である。

(E)労働保険徴収法第39条第1項においては、「国、都道府県及び市町村の行う事業その他厚生労働省令で定める事業については、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなしてこの法律を適用する。」とされている。



■解説

(A)正解
法2条、昭和25年4月10日基収950号、昭和23年8月18日基収2520号
労働保険徴収法における賃金とは、「賃金、給与、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」をいい、通貨で支払われるもののみに限らず、一定範囲の現物給与も含まれる。ここで労働の対償として支払うものとは、現実に提供された労働の直接的な対価として支払われるものを広く意味すると解されている。労働の対償であるから、一般に労働協約、就業規則(賃金規程を含む)、労働契約などにより、その支払が事業主に義務づけられているものであり、任意的なもの、恩恵的なもの、実費弁済的なものは、事業主が労働者に支払うものであっても労働の対償として支払うものではないので、「賃金」には該当しないとされている。
労働基準法26条の規定に基づく休業手当は、賃金と認められるが、同法20条の規定に基づく解雇予告手当は賃金とは認められない。
よって、問題文は正解となる。
なお、労働基準法76条の規定に基づく休業補償は、労働不能による賃金喪失に対する補償であり、労働の対償ではないので、賃金とは認められない。休業補償の額が平均賃金の60%を超えた場合についてもその超えた部分を含めて賃金とは認められない。(昭和25年12月27日基収3432号)

(B)正解
法2条、平成15年10月1日基徴発1001001号
退職を事由として支払われる退職金であって、退職時に支払われるもの又は事業主の都合等により退職前に一時金として支払われるものについては、一般保険料の算定基礎となる賃金総額に算入しないものとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、労働者が在職中に、退職金相当額の全部又は一部を給与や賞与に上乗せするなど前払いされる場合は、労働の対償としての性格が明確であり、労働者の通常の生計にあてられる経常的な 収入としての意義を有することから、原則として、一般保険料の算定基礎となる賃金総額に算入するものとされている。

(C)正解
法12条、昭和61年6月30日基発383号・発労徴41号
労働者派遣事業に係る労災保険率の適用は、派遣労働者の派遣先での作業実態に基づき「労災保険率適用事業細目表」により事業の種類を決定し、労災保険率表(則別表第一)による労災保険率を適用することとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、派遣労働者の派遣先での作業実態が数種にわたる場合には、主たる作業実態に基づき事業の種類を決定することとし、この場合の主たる作業実態は、それぞれの作業に従事する派遣労働者の数、当該派遣労働者に係る賃金総額等により判断するものとされている。

(D)正解
法7条、昭和40年7月31日基発901号
2以上の有期事業が一定の要件に該当する場合には、当然にそれらの事業が一括されて一の事業として労働保険徴収法が適用されることになり、例えば、労働保険料の申告、納付について、一般の継続事業と同様に年度更新の手続きがとられることとなる。
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
法39条1項
都道府県及び市町村の行う事業その他厚生労働省令で定める事業については、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなして労働保険徴収法を適用することとされている。
よって、「国、都道府県及び市町村の行う事業」とした問題文は誤りとなる。

  

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