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トップページ過去問研究室(労働保険徴収法) 平成29年労災-第8問(労働保険徴収法に定める賃金)
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■平成29年労災-第8問(労働保険徴収法に定める賃金)

労働保険徴収法第2条に定める賃金に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)労働者が在職中に、退職金相当額の全部又は一部を給与や賞与に上乗せするなど前払いされる場合は、原則として、一般保険料の算定基礎となる賃金総額に算入する。

(B)遡って昇給が決定し、個々人に対する昇給額が未決定のまま離職した場合において、離職後支払われる昇給差額については、個々人に対して昇給をするということ及びその計算方法が決定しており、ただその計算の結果が離職時までにまだ算出されていないというものであるならば、事業主としては支払義務が確定したものとなるから、賃金として取り扱われる。

(C)労働者が賃金締切日前に死亡したため支払われていない賃金に対する保険料は、徴収しない。

(D)労働者の退職後の生活保障や在職中の死亡保障を行うことを目的として事業主が労働者を被保険者として保険会社と生命保険等厚生保険の契約をし、会社が当該保険の保険料を全額負担した場合の当該保険料は、賃金とは認められない。

(E)住居の利益は、住居施設等を無償で供与される場合において、住居施設が供与されない者に対して、住居の利益を受ける者との均衡を失しない定額の均衡手当が一律に支給されない場合は、当該住居の利益は賃金とならない。



■解説

(A)正解
法2条2項、平成15年10月1日基徴発1001001号
労働者が在職中に、退職金相当額の全部又は一部を給与や賞与に上乗せするなど前払いされる場合は、労働の対償としての性格が明確であり、労働者の通常の生計にあてられる経常的な収入としての意義を有することから、原則として、一般保険料の算定基礎となる賃金総額に算入することとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、退職を事由として支払われる退職金であって、退職時に支払われるもの又は事業主の都合等により退職前に一時金として支払われるものについては、一般保険料の算定基礎となる賃金総額に算入しないものとされている。(昭和25年2月16日基発127号、平成15年10月1日基徴発1001001号)

(B)正解
法2条2項、昭和32年12月27日失保収652号
遡って昇給が決定し、個々人に対する昇給額が未決定のまま離職した場合において、離職後支払われる昇給差額については、個々人に対して昇給をするということ及びその計算方法が決定しており、ただその計算の結果が離職時までにまだ算出されていない場合にも、事業主としては支払義務が確定したものとなるから、賃金と認められる。
よって、問題文は正解となる。

(C)誤り
法2条2項
労働者が賃金締切日前に死亡したため支払われていない賃金についても、事業主としては、死亡前に提供された労働の対償としての賃金の支払義務が確定したものとなるため、賃金として認められ、保険料の徴収対象となる。
よって、「徴収しない。」とした問題文は誤りとなる。

(D)正解
法2条2項、昭和30年3月31日基災収1239号
従業員の退職後の生活保障や在職中の死亡保障を行うことを目的として事業主が労働者を被保険者として保険会社と生命保険等厚生保険の契約をし、会社が当該保険の保険料を全額負担した場合の当該保険料は、賃金とは認められない。
よって、問題文は正解となる。
なお、勤労者財産形成促進法に基づく勤労者の財産形成貯蓄を奨励援助するために、事業主が一定の率又は額の奨励金、財形給付金等を当該労働者に支払ったときは、その奨励金、財形給付金等は、事業主が労働者の福利促増進のために負担するものと認められるから、これを賃金として取り扱わない。(昭和50年3月31日労徴発15号)また、労働者が持家取得のため金融機関等から融資を受けた場合において、事業主が一定の率又は額の利子補給金等を当該労働者に支払ったときは、その利子補給金等も賃金として取り扱わない。(昭和50年3月31日労徴発15号)

(E)正解
法2条2項
住居の利益は、賃金になり得る。ただし、住居施設等を無償で供与される場合において、住居施設が供与されない者に対して、住居の利益を受ける者との均衡を失しない定額の均衡手当が一律に支給されない場合は、当該住居の利益は賃金とならない。
よって、問題文は正解となる。
なお、食事の利益については、賃金になり得るが、住込労働者で1日2食以上給食されることが常態にある場合を除いて、原則として、次のすべてに該当する場合は、賃金として取り扱わず、福利厚生として取り扱うこととされている。(1)給食によって賃金の減額を行わないこと。(2)労働協約、就業規則等に定められて明確な労働条件の内容となっている場合でないこと。(3)給食による客観的評価額が社会通念上僅少なものと認められる場合であること。
また、被服の利益については、賃金になり得るが、労働者が業務に従事するために支給する作業衣又は業務上着用することを条件として支給し、若しくは貸与する被服の利益は、保険料算定の基礎に算入しないこととされている。

  

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