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■平成15年労基-第3問(労働基準法に定める賃金等)

労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)ある会社においては、労働協約により、通勤費として、労働者に対して、6か月定期券を購入して支給しているが、このような通勤定期券は、労働基準法第11条の「賃金」と解される。

(B)1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には、控除した額)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うことは、労働基準法第24条違反としては取り扱わないこととされている。

(C)労働基準法第37条は、使用者が第33条又は第36条第1項の規定により労働時間を延長した場合においては、その時間の労働については、一定の方法により計算した割増賃金を支払わなければならない旨規定しているが、これは当然に通常の労働時間に対する賃金を支払うべきことを前提とするものであるから、月給制により賃金が支払われる場合であっても、当該時間外労働については、その労働時間に対する通常の賃金を支払わなければならない。

(D)裁判所は、労働基準法第26条(休業手当)、第37条(割増賃金)などの規定に違反した使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができることとされているが、この付加金の支払に関する規定は、同法第24条第1項に規定する賃金の全額払の義務に違反して賃金を支払わなかった使用者に対しても、同様に適用される。

(E)労働安全衛生法第66条の規定による健康診断の結果に基づいて、使用者が、ある労働者について、私傷病のため、同法第66条の5第1項の定めるところに従い、健康診断実施後の措置として労働時間の短縮の措置を講じて労働させた場合には、使用者は、当該労働者に対し、労働の提供のなかった限度において賃金を支払わなくても差し支えない。



■解説

(A)正解
法11条、昭和33年2月13日基発90号
現物給与である「通勤定期券」であっても「賃金」に該当する。

(B)正解
法24条、昭和63年3月14日基発150号
問題文のような事務処理は、必ずしも労働者の不利になるわけではなく、事務の便宜上の取扱いと認められるので賃金全額払いの原則に違反しないとされている。
なお、1ヶ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月に繰り越しても(カットではないので注意)問題ないとされている。

(C)正解
法37条、昭和23年3月17日基発461号
月給制により賃金が支払われている場合であっても、時間外労働をしたときは、その時間分の通常の賃金と割増賃金を支払う必要がある。
※月給は所定労働時間分の賃金になるので、時間外労働をさせた場合には、その時間分の割増賃金を支払うだけでなく、その時間分の賃金も併せて支払う必要があるということ。

(D)誤り
法20条、法26条、法37条、法39条6項、法114条
法114条の付加金の支払いに関する規定は、「解雇予告手当」、「休業手当」、「割増賃金」、「年次有給休暇の賃金」に適用されることになる。
よって、「賃金全額払の義務違反」に対しては付加金の支払いに関する規定は適用されない。

(E)正解
法24条、法26条、昭和63年3月14日基発150号
健康診断の結果に基づき、労働時間の短縮措置を講じた場合は、使用者の責めに帰すべき事由による休業に該当しない。
よって休業手当の支払いは必要なく、「ノーワーク・ノーペイの原則」により、実際に労働しなかった部分についての賃金を支払わなくても違法ではない。

  

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