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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成17年労基-第6問(就業規則)
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■平成17年労基-第6問(就業規則)

就業規則に係る最高裁の判例に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとするのが最高裁の判例である。

(B)新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきであるとするのが最高裁の判例である。

(C)就業規則は、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っているものということができるとするのが最高裁の判例である。

(D)企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであって、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めることができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、制裁として懲戒処分を行うことができるところから、使用者が労働者を懲戒するには、必ずしもあらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要するものではないとするのが最高裁の判例である。

(E)就業規則が労働者に対し、一定の事項につき使用者の業務命令に服従すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものであるかぎりにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができるとするのが最高裁の判例である。



■解説

(A)正解
法89条、法106条1項、フジ興産事件(平成15年10月10日最高裁判決)
職場秩序を乱したとして懲戒解雇処分を受けた労働者が、勤務する事業場に就業規則が備え付けられていなかったために就業規則に基づく懲戒解雇は無効であるとして訴えを提起した裁判で最高裁判所は、「使用者が労働者を懲戒するにはあらかじめ就業規則において、懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。」そして、「就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する。」と判断した。

(B)正解
法89条、法90条、法93条、秋北バス事件(昭和43年12月25日最高裁判決)
従来定年制の無かった会社で、55歳定年制を新設する就業規則の改正に伴い解雇された従業員が、本人の同意のない就業規則の改正には拘束力はないため、解雇は無効であるとして雇用関係の存在確認を求めた訴訟で、最高裁判所は問題文のような判断をした。

(C)正解
法89条、法93条、秋北バス事件(昭和43年12月25日最高裁判決)
従来定年制の無かった会社で、55歳定年制を新設する就業規則の改正に伴い解雇された従業員が、本人の同意のない就業規則の改正には拘束力はないため、解雇は無効であるとして雇用関係の存在確認を求めた訴訟で、最高裁判所は「労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めたものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っているものということができる。」と判断した。

(D)誤り
法89条、フジ興産事件(平成15年10月10日最高裁判決)、国鉄札幌運転区事件(昭和54年10月30日最高裁判決)
最高裁判所の判断では、使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において、懲戒の種別及び事由を定めておくことを要するとされている。
また、その就業規則に拘束力を生じさせるためには、適用をうける事業場の労働者に周知させておく必要があるとの判断もしている。

(E)正解
法89条、電電公社帯広局事件(昭和61年3月3日最高裁判決)
頚肩腕症候群の精密検査の受診を命じた業務命令に従わなかったこと、及びその問題にかかわる団体交渉の場に押しかけ、その間無断で職場離脱したことを理由に戒告処分にされた労働者が、処分の無効確認を求めた裁判で最高裁判所は問題文のように判断した。

  

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