社会保険労務士試験に楽に合格する方法論を研究するサイト
社会保険労務士試験情報局
トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成19年労基-第3問(労働基準法に定める平均賃金、割増賃金等)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成19年労基-第3問(労働基準法に定める平均賃金、割増賃金等)

労働基準法に定める平均賃金、割増賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)平均賃金は、原則として、これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除して算定するものとされているが、賃金がいわゆるパートタイマーに多くみられるように労働した時間によって算定される場合には、その金額は、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60を下ってはならないこととされている。

(B)平均賃金の計算においては、業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間、産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業した期間、使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児介護休業法」という。)の規定によって育児休業若しくは介護休業をした期間又は子の看護休暇を取得した期間及び試みの使用期間については、その日数及びその期間中の賃金を労働基準法第12条第1項及び第2項に規定する期間及び賃金の総額から控除する。

(C)労働基準法第37条第5項及び労働基準法施行規則第21条の規定によって、割増賃金の計算の基礎となる賃金には家族手当、住宅手当等は算入されないこととされており、例えば、賃貸住宅の居住者には3万円、持家の居住者には1万円というように、住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされている手当は、同規則第21条でいう住宅手当に該当し、同法第37条の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。(一部改正)

(D)始業時刻が午前8時、終業時刻が午後5時、休憩時間が正午から午後1時までの事業場において、残業を行い、翌日の法定休日の午前2時まで勤務したとき、午後5時から午後10時までは通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上の割増賃金、午後10時から翌日の午前2時までは6割以上の割増賃金を支払わなければならない。

(E)割増賃金の計算の便宜上、1日における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間数に1時間未満の端数がある場合は、1日ごとに、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げて計算する措置は、法違反として取り扱わないこととされている。



■解説

(A)正解
法12条1項1号
平均賃金は、原則として、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除して算定することになっている。
ただし、その原則的な計算式で算定された金額は次のうちいずれかの金額を下ってはならないとされている。

(1)賃金が、労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
(2)賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と上記(1)の金額の合算額

よって問題文は正解となる。

(B)誤り
法12条3項
平均賃金が低くなるのを防ぐために次の期間については、その日数及びその期間中の賃金は除外して平均賃金を算定することとされている。
(1)業務災害による負傷又は疾病の療養の為の休業期間
(2)産前産後の休業期間
(3)使用者の責めに帰すべき事由による休業期間
(4)育児・介護休業をした期間
(5)試みの使用期間
しかし、平均賃金を算定するときに除外する期間に「子の看護休暇を取得した期間」は含まれておらず、問題文は誤りとなる。

(C)誤り
法37条5項、則21条、平成11年3月31日基発170号
割増賃金の基礎となる賃金には、次の賃金を算入しないことになっている。
(1)家族手当
(2)通勤手当
(3)別居手当
(4)子女教育手当
(5)住宅手当
(6)臨時に支払われた賃金
(7)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
しかし、割増賃金の基礎から除外される住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱うが、例えば、住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているもの、住宅以外の要素に応じて定率又は定額で支給することとされているもの、全員に一律に定額で支給されているものは除外されないとされている。
よって、「住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているもの」を割増賃金の算定の基礎となる賃金に算入しないとした問題文は誤りである。
なお、家族手当については、扶養家族あるものに対し、その家族数に関係なく一律に支給されている手当は算定の基礎に含め(昭和22年11月5日基発231号)、通勤手当についても、距離に関係なく支払われる部分がある場合はその部分を算定の基礎に含める(昭和23年2月20日基発297号)とされている。

(D)誤り
法37条、則20条、平成6年1月4日基発1号
時間外又は休日労働が深夜に及んだ場合には、それぞれ5割以上の率、6割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
本問の事例の場合だと、午後5時から午後10時までは2割5分以上の率で、午後10時から午前0時までは5割以上(時間外労働の率2割5分+深夜業の率2割5分)の率で、午前0時から午前2時までは6割以上(休日労働の率3割5分+深夜業の率2割5分)の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
よって、「午後10時から翌日の午前2時までは6割以上の割増賃金を支払わなければならない。」とした問題文は誤りである。

(E)誤り
法24条、法37条、昭和63年3月14日基発150号
割増賃金を計算する場合の端数処理として、次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるので、法24条及び法37条違反としては取扱われない。

(1)1箇月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げること
(2)1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合に、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げること
(3) 1箇月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の割増賃金の総額に円未満の端数が生じた場合に、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げること

よって、「1日における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間数に1時間未満の端数がある場合」の設問のような事務処理は法違反となり、「法違反として取り扱わない」とした問題文は誤りである。

  

→社会保険労務士試験過去問研究室(労働基準法)に戻る
Copyright (C) 2005 社会保険労務士試験情報局 All Rights Reserved