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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成19年労基-第5問(労働基準法に定める労働時間等)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成19年労基-第5問(労働基準法に定める労働時間等)

労働基準法に定める労働時間等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)訪問介護事業に使用される者であって、月、週又は日の所定労働時間が、一定期間ごとに作成される勤務表により非定型的に特定される短時間労働者が、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間については、使用者が、訪問介護の業務に従事するため必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当する。

(B)労働基準法第32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない仮眠時間が労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が実作業に従事していない仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきであるとするのが最高裁判所の判例である。

(C)使用者は、労働基準法第109条の規定に基づき一定の労働関係に関する重要な書類を保存しなければならないこととされており、タイムカード等の記録、残業命令書及びその報告書など労働時間の記録に関する書類は、同条でいう「その他労働関係に関する重要な書類」に該当し、使用者は、これらの書類を5年間保存しなければならない。

(D)1か月単位の変形労働時間制を採用した場合、変形期間を平均し1週間当たりの労働時間が週法定労働時間以内となるようにするために行う、変形期間における所定労働時間の総枠の計算は、次の式によって行う。

その事業場の週法定労働時間×変形期間の暦日数÷7


(E)労働基準法第38条の3に規定するいわゆる専門業務型裁量労働制を採用しようとする場合において、労働時間の算定については労使協定で定めるところによることとした場合に、当該協定に定めるべき時間は、1日当たりの労働時間であり、休憩、深夜業及び休日に関する規定の適用は排除されないので、法定休日に労働させた場合には、当該休日労働に係る割増賃金を支払う必要がある。



■解説

(A)正解
法32条、訪問介護労働者の法定労働条件の確保について(平成16年8月27日基発第0827001号)
訪問介護事業においては、非定型的パートタイムヘルパー等(短時間労働者であって、月、週又は日の所定労働時間が、一定期間ごとに作成される勤務表により、非定型的に特定される労働者)が訪問介護の業務に直接従事する時間以外の時間を労働時間としていないものが認められるところであるが、訪問介護労働者の移動時間については、次の労働時間に該当する場合には、適正にこれを把握する必要があることとされている。
「移動時間とは、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間をいい、この移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものであること。具体的には、使用者の指揮監督の実態により判断するものであり、例えば、訪問介護の業務に従事するため、事業場から利用者宅への移動に要した時間や一つの利用者から次の利用者宅への移動時間であって、その時間が通常の移動に要する時間程度である場合には労働時間に該当するものと考えられること。」
よって、問題文は正解となる。
なお、訪問介護事業においては、訪問介護の業務に直接従事する時間以外の労働時間である移動時間等について、賃金支払の対象としているのかどうかが判然としないものが認められるところであるが、賃金はいかなる労働時間についても支払われなければならないものであるので、労働時間に応じた賃金の算定を行う場合は、訪問介護の業務に直接従事する時間のみならず、上記の労働時間を算定した時間数に応じた賃金の算定を行うこととされている。

(B)正解
大星ビル管理事件(平成14年2月28日最高裁判決)
ビル管理会社である控訴人会社の技術系従業員らが、24時間勤務の間に設定されている仮眠時間も会社の労働協約、就業規則にいう労働時間であるとして、労働協約、就業規則に基づき、仮眠時間に対する所定時間外勤務手当と深夜就業手当を請求した裁判において、最高裁判所は「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない仮眠時間( 以下「不活動仮眠時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。そして、不活動仮眠時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。」と判断した。
よって問題文は正解である。

(C)誤り
法109条
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならないことになっている。
タイムカード等の記録、残業命令書及びその報告書など労働時間の記録に関する書類は、「その他労働関係に関する重要な書類」に該当するため、保存期間は3年となる。
よって、「5年間保存」とした問題文は誤りである。

(D)正解
法32条の2、昭和63年1月1日基発1号、平成6年3月31日基発181号、平成7年1月1日基発1号、平成9年3月25日基発195号
1箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、変形期間を平均し1週間の労働時間が法定労働時間を超えない定めをすることが要件とされているが、これは、変形期間における所定労働時間の合計を次の式によって計算される変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内とすることが必要であるということであるとされている。
「その事業場の週法定労働時間×変形期間の暦日数÷7」
よって、問題文は正解である。

(E)正解
法38条の3、昭和63年3年14日基発150号、平成12年1月1日基発1号
専門業務型裁量労働制に係る労働時間のみなしに関する規定は、法4章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用されるものであり、第6章の年少者及び第6章の2の妊産婦等の労働時間に関する規定に係る労働時間の算定について適用されないものである。
また、労働時間のみなしに関する規定が適用される場合であっても、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されないものであるとされている。
よって、問題文は正解となる。

  

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