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■平成22年労基-第3問(労働基準法に定める賃金)

労働基準法に定める賃金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)賞与を支給日に在籍している者に対してのみ支給する旨のいわゆる賞与支給日在籍要件を定めた就業規則の規定は無効であり、支給日の直前に退職した労働者に賞与を支給しないことは、賃金全額払の原則を定めた労働基準法第24条第1項に違反するとするのが最高裁判所の判例である。

(B)結婚手当は、使用者が任意的、恩恵的に支給するという性格を持つため、就業規則によってあらかじめ支給条件が明確に定められ、その支給が使用者に義務付けられている場合でも、労働基準法第11条に定める賃金には当たらない。

(C)労働基準法の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権は2年間、同法の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。

(D)労働基準法第24条第1項の賃金全額払の原則は、労働者が退職に際し自ら賃金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、その意思表示の効力を否定する趣旨のものと解することができ、それが自由な意思に基づくものであることが明確であっても、賃金債権の放棄の意思表示は無効であるとするのが最高裁判所の判例である。

(E)労働基準法第26条に定める休業手当は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に支払が義務付けられるものであり、例えば、親工場の経営難により、下請工場が資材、資金を獲得できず休業した場合、下請工場の使用者は休業手当の支払義務を負わない。



■解説

(A)誤り
法24条、大和銀行事件(昭和57年10月7日最高裁判決)
賞与はその支給日現在の在籍者にのみ支給する旨の慣行を明文化した就業規則は有効であり、右事実関係のもとにおいては、退職後を支給日とする賞与については受給権を有しないというのが最高裁判所の判例である。
よって、「支給日の直前に退職した労働者に賞与を支給しないことは、賃金全額払の原則を定めた労働基準法第24条第1項に違反する」とした問題文は誤りである。

(B)誤り
法11条、昭和22年9月13日発基17号
結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさない。ただし、結婚手当等であって労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件の明確なものは賃金になるとされている。
よって、「就業規則によってあらかじめ支給条件が明確に定められ、その支給が使用者に義務付けられている場合でも、労働基準法第11条に定める賃金には当たらない」とした問題文は誤りとなる。

(C)正解
法115条
賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅することとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、法20条の解雇予告手当は、解雇の意思表示に際して支払わなければ解雇の効力を生じないものと解されるから、一般には解雇予告手当については時効の問題は生じない。(昭和27年5月17日基収1906号)

(D)誤り
法24条、シンガー・ソング・メシーン事件(昭和48年1月19日最高裁判決)
賃金に当る退職金債権放棄の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは有効であり、法24条1項のいわゆる賃金全額払の原則は、労働者が退職に際し自ら退職金債権を放棄する旨の意思表示の効力を否定する趣旨ではないというのが最高裁判所の判例である。
よって、「労働者が退職に際し自ら賃金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、その意思表示の効力を否定する趣旨のものと解することができ、それが自由な意思に基づくものであることが明確であっても、賃金債権の放棄の意思表示は無効」とした問題文は誤りとなる。

(E)誤り
法26条、昭和23年6月11日基収1998号
休業手当は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に支払が義務付けられるものであるが、親会社の経営難から下請工場が資材資金を獲得できず休業した場合であっても、休業手当を支払う義務がある。
よって、「下請工場の使用者は休業手当の支払義務を負わない」とした問題文は誤りである。

  

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