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■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成22年労基-第4問(労働基準法に定める労働時間等)

労働基準法に定める労働時間等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)ビルの巡回監視等の業務に従事する労働者の実作業に従事していない仮眠時間についても、労働からの解放が保障されていない場合には労働基準法上の労働時間に当たるとするのが最高裁判所の判例である。

(B)工場で就業する労働者が、使用者から、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、その装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされ、また、始業の勤怠管理は更衣を済ませ始業時に準備体操をすべく所定の場所にいるか否かを基準として定められていた場合、その装着及び更衣所等から準備体操場までの移動は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、労働基準法上の労働時間に当たるとするのが最高裁判所の判例である。

(C)労働基準法第41条の規定により、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用が除外されている同条第2号に定めるいわゆる管理監督者に該当するか否かは、経験、能力等に基づく格付及び職務の内容と権限等に応じた地位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態に即して判断される。

(D)労働基準法第33条第1項に定める災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働、休日労働については、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において行わせることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならないとされている。

(E)タクシー料金の月間水揚高に一定の歩合を乗じて賃金を算定・支給する完全歩合給制においては、時間外労働及び深夜労働を行った場合に歩合給の額の増額がなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することができないものであったとしても、歩合給の支給によって労働基準法第37条に規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたと解釈することができるとするのが最高裁判所の判例である。



■解説

(A)正解
大星ビル管理事件(平成14年2月28日最高裁判決)
労基法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない仮眠時間(以下「不活動仮眠時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。そして、不活動仮眠時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当であるというのが最高裁判所の判例である。
よって問題文は正解となる。

(B)正解
三菱重工長崎造船所事件(平成12年3月9日最高裁判決)
労働基準法32条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。
実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、始業の勤怠管理は更衣を済ませ始業時に準備体操をすべく所定の場所にいるか否かを基準として定められていた場合、その装着及び更衣所等から準備体操場までの移動は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、右着脱等に要する時間は、それが社会通念上必要と認められる限り、労働基準法上の労働時間に該当するというべきであるというのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文は正解である。

(C)正解
法41条、昭和22年9月13日発基17号、昭和63年3月14日基発150号
監督若しくは管理の地位にある者とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものとされている。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
法33条1項
災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならないとされている。
よって、問題文は正解となる。

(参考)
派遣先の使用者は、派遣先の事業場において、災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合には、派遣中の労働者に、法定時間外又は法定休日に労働させることができる。この場合に、事前に行政官庁の許可を受け、又はその暇がない場合に事後に遅滞なく届出をする義務を負うのは派遣先の使用者である。(昭和61年6月6日基発333号)

(E)誤り
高知県観光事件(平成6年6月13日最高裁判決)
歩合給で雇用されているタクシー運転手に対する時間外および深夜労働の割増賃金につき、歩合給にくみ込んで支払っているという会社側の主張に対し、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外および深夜の割増賃金に当たる部分とを判別できないとして、右割増賃金の支払いが命ぜられた判決において最高裁判所は、支給された歩合給の額が、時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして、この歩合給の支給によって、法37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべきであり、時間外及び深夜の労働について、法37条及び労働基準法施行規則19条1項6号の規定に従って計算した額の割増賃金を支払う義務があると判断した。
よって、「歩合給の支給によって労働基準法第37条に規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたと解釈することができるとするのが最高裁判所の判例である」とした問題文は誤りとなる。

  

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