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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成23年労基-第1問(労働基準法の総則等)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成23年労基-第1問(労働基準法の総則等)

労働基準法の総則等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)労働基準法第3条は、法の下の平等を定めた日本国憲法第14条と同じ事由で、人種、信条、性別、社会的身分又は門地を理由とした労働条件の差別的取扱を禁止している。

(B)何人も、他の法律の定め如何にかかわらず、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

(C)公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に付する旨の就業規則条項は、公民権行使の保障を定めた労働基準法第7条の趣旨に反し、無効のものと解すべきであるとするのが最高裁判所の判例である。

(D)労働基準法に定める「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいい、この定義に該当する場合には、いかなる形態の家事使用人にも労働基準法が適用される。

(E)労働基準法に定める賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者又は顧客が労働者に支払うすべてのものをいう。



■解説

(A)誤り
法3条
労基法3条は、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。 」と規定しており、すべての労働条件について差別待遇を禁止しているが、いかなる理由に基づくものもすべてこれを禁止しているわけでなく、労基法3条で限定的に列挙している国籍、信条又は社会的身分を理由とする場合のみ禁止している。
一方、日本国憲法14条1項では「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 」と規定しているが、これは、近代自由平等の思想に立脚し、国民の法の前の平等をうたったもので、あって、世界各国憲法に共通した根本的理念となっている。
よって、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地を理由とした労働条件の差別的取扱を禁止」とした問題文は誤りとなる。

(B)誤り
法6条
労基法6条には、「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」と規定されており、「他の法律の定め如何にかかわらず」とした問題文は誤りとなる。

(C)正解
十和田観光電鉄事件(昭和38年6月21日)
「公職の就任を、会社に対する届出事項とするにとどまらず、使用者の承認にかからしめ、しかもそれに違反した者に対しては制裁罰としての懲戒解雇を課するものである。しかし、労働基準法7条が、特に、労働者に対し労働時間中における公民としての権利の行使および公の職務の執行を保障していることにかんがみるときは、公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に附する旨の前記条項は、右労働基準法の規定の趣旨に反し、無効のものと解すべきである。」というのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文は正解となる。

(D)誤り
法9条、法116条2項
労働基準法上で、労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者と定義されているが、家事使用人については労働基準法は適用されないことになっている。
労働基準法上での家事使用人であるか否かは、従事する作業の種類、性質の如何等を勘案して具体的に当該労働者の実態により判断すべきであり、労働契約の当事者の如何に関係なく決定されるべきものであるので、例えば、法人に雇われ、その役職員の家庭において、その家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している者は、家事使用人である。一方、個人家庭における家事を事業として請負う者に雇われて、その指揮命令のもとに当該家事を行う者は家事使用人に該当しないとされている。(昭和63年3月14日基発150号・婦発47号)
よって、「いかなる形態の家事使用人にも労働基準法が適用される」とした問題文は誤りとなる。

(E)誤り
法11条
労働基準法で、賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうと定義されている。
よって、「使用者又は顧客が労働者に支払うすべてのもの」とした問題文は誤りとなる。

(参考)
チップは、旅館従業員等が客から受け取るものであって賃金ではない。なお、無償あるいは極めて低廉な価格で食事の給付を受け、又は当該旅館等に宿泊を許されている場合には、かかる実物給与及び利益は賃金とみなすべきである。(昭和23年2月3日基発164号)

  

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