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■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成23年労基-第6問(労働基準法の賃金等)

労働基準法の賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)労働安全衛生法第66条による健康診断の結果、私傷病を理由として医師の証明に基づき、当該証明の範囲内において使用者が休業を命じた場合には、当該休業を命じた日については労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するので、当該休業期間中同条の休業手当を支払わなければならない。

(B)労働者が業務命令によって指定された時間、指定された出張・外勤業務に従事せず内勤業務に従事した場合には労働者は債務の本旨に従った労務の提供をしたものであり、使用者が業務命令を事前に発して、その指定した時間については出張・外勤以外の労務の受領をあらかじめ拒絶していたとしても、当該労働者が提供した内勤業務についての労務を受領したものといえ、使用者は当該労働者に対し当該内勤業務に従事した時間に対応する賃金の支払義務を負うとするのが最高裁判所の判例である。

(C)労働協約において稼働率80%以下の労働者を賃上げ対象から除外する旨の規定を定めた場合に、当該稼働率の算定に当たり労働災害による休業を不就労期間とすることは、経済的合理性を有しており、有効であるとするのが最高裁判所の判例である。

(D)労働者が5分遅刻した場合に、30分遅刻したものとして賃金カットをするという処理は、労務の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について労働基準法第24条の賃金の全額払の原則に反し違法であるが、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として同法第91条の制限内で行う場合には、同法第24条の賃金の全額払の原則に反しない。

(E)労働基準法第37条に定める割増賃金の基礎となる賃金(算定基礎賃金)はいわゆる通常の賃金であり、家族手当は算定基礎賃金に含めないことが原則であるから、家族数に関係なく一律に支給されている手当は、算定基礎賃金に含める必要はない。



■解説

(A)誤り
法26条、昭和23年10月21日基発1529号、昭和63年3月14日基発150号
労働安全衛生法66条の規定による健康診断の結果に基づいて使用者が労働時間を短縮させて労働させたときは、使用者は労働の提供のなかった限度において賃金を支払わなくても差支えないとされている。
よって、「当該休業期間中同条の休業手当を支払わなければならない」とした問題文は誤りとなる。
ただし、使用者が健康診断の結果を無視して労働時間を不当に短縮もしくは休業させた場合には、法26条の休業手当を支払わなければならない場合の生ずることもあるとされている。

(B)誤り
水道機工事件(昭和60年3月7日)
外勤・出張拒否闘争に対し使用者が賃金の全額をカットしたため、労働者らが内勤業務に従事したことを理由に賃金の支払を求めた事例‭において、最高裁判所は、業務命令によって指定された時間、その指定された出張・外勤業務に従事せず内勤業務に従事したことは、債務の本旨に従った労務の提供をしたものとはいえず、また、使用者は、本件業務命令を事前に発したことにより、その指定した時間については出張・外勤以外の労務の受領をあらかじめ拒絶したものと解すべきであるから、労働者らが提供した内勤業務についての労務を受領したものとはいえず、したがって、使用者は、労働者らに対し右の時間に対応する賃金の支払義務を負うものではないと判断している。
よって、「使用者は当該労働者に対し当該内勤業務に従事した時間に対応する賃金の支払義務を負うとするのが最高裁判所の判例である」とした問題文は誤りとなる。

(C)誤り
日本シェーリング事件(平成元年12月14日)
稼働率80%以下の者を賃上げ対象から除外するとし、年次有給休暇、産前産後休業、労働災害による休業、ストライキ等による不就労を稼働率算定の不就労時間とする旨の労働協約条項の効力が争われた事件において、最高裁判所は、労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を基礎として稼働率を算定する限りにおいては、その効力を否定すべきいわれはないが、反面、同条項において、労働基準法又は労働組合法上の権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎としている点は、労働基準法又は労働組合法上の権利を行使したことにより経済的利益を得られないこととすることによって権利の行使を抑制し、ひいては、右各法が労働者に各権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものというべきであるから、公序に反し無効であるといわなければならないと判断している。
よって、「労働災害による休業を不就労期間とすることは、経済的合理性を有しており、有効であるとするのが最高裁判所の判例である」とした問題文は誤りとなる。

(D)正解
法24条1項、昭和61年3月14日基発150号
遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し、違法である。なお、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として、法91条(制裁規定の制限)の制限内で行う場合には、全額払の原則には反しないものであるとされている。
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
法37条、昭和22年11月5日基発231号
扶養家族ある者に対し、その家族数に関係なく一律に支給されている手当は家族手当とみなさないとされ、従ってかかる手当は割増賃金の基礎に入れるべきであるとされている。
よって、「算定基礎賃金に含める必要はない」とした問題文は誤りとなる。

  

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