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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成25年労基-第6問(労働基準法に定める労働契約等)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成25年労基-第6問(労働基準法に定める労働契約等)

労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)労働基準法は、同法の定める基準に達しない労働条件を定める労働契約について、その部分を無効とするだけでなく、無効となった部分を同法所定の基準で補充することも定めている。

(B)使用者は、満60歳以上の労働者との間に、5年以内の契約期間の労働契約を締結することができる。

(C)使用者は、期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の際に、労働者に対して、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項を、書面の交付により明示しなければならない。

(D)労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定め又は損害賠償額を予定する契約をすることを使用者に禁止しているが、その趣旨は、このような違約金制度や損害賠償額予定の制度が、ともすると労働の強制にわたり、あるいは労働者の自由意思を不当に拘束し、労働者を使用者に隷属させることとなるので、これらの弊害を防止しようとする点にある。

(E)労働契約を締結する際に、労働者の親権者が使用者から多額の金銭を借り受けることは、人身売買や労働者の不当な足留めにつながるおそれがあるため、当該労働者の賃金と相殺されるか否かを問わず、労働基準法第17条に違反する。



■解説

(A)正解
法13条
労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準によることとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、この規定は、民法の一般規定に従えば、契約中強行法規に違反する部分が契約の主たる内容である場合は、契約全体が無効とされ、また、契約の一部が強行法規違反として無効とされる場合においては、その無効とされた部分は空白となるものと解され、無効な契約に基づいて労働した場合の法律関係が複雑になり、労働者保護に欠けるところとなるので、無効部分の補充規定を置き、違法契約による労働条件の不明確化を立法的に解決したものである。

(B)正解
法14条1項
満60歳以上の労働者の場合は、その者がどのような業務に就く場合であっても労働契約期間の上限は5年となる。
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
法15条1項、則5条1項、平成24年10月26日基発1026第2号
使用者が労働者に対して明示しなければならない労働条件のうち、期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結である場合は、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準を、書面を交付することにより明示することが義務づけられている。
よって、問題文は正解となる。

(参考)
労働条件の明示事項

■絶対的明示事項(必ず明示する義務がある事項)
労働契約の期間に関する事項
期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
※期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限る。
就業場所、従事すべき業務に関する事項
始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項(交代勤務の場合の交代時間など)
賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金は除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期、昇給に関する事項
退職に関する事項(解雇の事由を含む)
■相対的明示事項(定めをすれば明示する義務がある事項)
退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び臨時に支払われる賃金並びに最低賃金額に関する事項
労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
安全及び衛生に関する事項
職業訓練に関する事項
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
表彰及び制裁に関する事項
休職に関する事項
■労働条件の明示方法
1.絶対的明示事項
書面を交付(昇給に関する事項は除く)
2.相対的明示事項
口頭又は書面(口頭でも問題なし。)

(D)正解
法16条
労働契約の期間の途中において労働者が転職したり、帰郷する等、労働契約の不履行の場合に、一定額の違約金を定めたり、又は労働契約の不履行や労働者の不法行為に対して一定額の損害賠償を支払うことを労働者本人又はその身元保証人と約束する慣行が従来我が国にみられたが、こうした制度は、ともすると労働の強制にわたり、あるいは労働者の自由意思を不当に拘束し、労働者を使用者に隷属せしめることとなるので、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)では、こうした違約金制度や損害賠償予定の制度を禁止し、労働者が違約金又は賠償予定額を支払わされることをおそれて心ならずとも労働関係の継続を強いられること等を防止している。
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
法17条
労働基準法第17条(前借金相殺の禁止)の規定は、前借金と賃金を相殺することを禁止し、金銭貸借関係と労働関係を完全に分離することにより金銭貸借に基づく身体的拘束の発生を防止することを目的としたものである。そのため、法17条では前借金そのものは禁止せず、単に賃金と前借金を相殺することを禁止するにとどめたものである。
よって、「当該労働者の賃金と相殺されるか否かを問わず、労働基準法第17条に違反する。」とした問題文は誤りとなる。
なお、前借金制度により返済完了までは労働すべきことを義務づけ、又は労働者が退職を申し出た場合に未返済の前借金を即座に返還しなければこれを承認しないと脅かし、労働を強制することは、法第5条(強制労働の禁止)に違反するものと解される。

  

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