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■平成27年労基-第1問(労働基準法の総則等)

労働基準法の総則等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)労働基準法は、労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならないとしている。

(B)労働基準法第3条の禁止する「差別的取扱」とは、当該労働者を不利に取り扱うことをいい、有利に取り扱うことは含まない。

(C)労働基準法第4条は、賃金について、女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをすることを禁止しているが、賃金以外の労働条件についてはこれを禁止していない。

(D)強制労働を禁止する労働基準法第5条の構成要件に該当する行為が、同時に刑法の暴行罪、脅迫罪又は監禁罪の構成要件にも該当する場合があるが、労働基準法第5条違反と暴行罪等とは、法条競合の関係(吸収関係)にあると解される。

(E)形式上は請負契約のようなかたちをとっていても、その実体において使用従属関係が認められるときは、当該関係は労働関係であり、当該請負人は労働基準法第9条の「労働者」に当たる。



■解説

(A)正解
法1条1項
労働条件の原則として「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」とされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、本条は、労働者に人格として価値ある生活を営む必要を充たすべき労働条件を保障することを宣明したものであって、本法各条の解釈にあたり基本観念として常に考慮されなければならないとされている。(昭和22年9月13日発基17号)

(B)誤り
法3条
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならないとされている。
この「差別的取扱」をするとは、当該労働者を有利又は不利に取扱うことをいう。(何をもって有利とし又は不利とするかは一般の社会通念に従うことになる。)
よって、「有利に取り扱うことは含まない。」とした問題文は誤りとなる。
なお、「その他の労働条件」には、解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含む。(昭和23年6月16日基収1365号、昭和63年3月14日基発150号)

(C)正解
法4条
使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならないこととされている。
なお、本条は、賃金についてのみ差別的取扱いを禁止したものであり、その他の労働条件についての差別的取扱いについては本条違反の問題は生じない。しかしながら、募集・採用、配置(業務の配分・権限の付与を含む。)・昇進・降格・教育訓練、一定の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新についての性別を理由とする差別的取扱いの禁止については、男女雇用機会均等法に規定がある。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
法5条
法5条(強制労働の禁止)の構成要件に該当する行為が、同時に刑法の暴行罪、脅迫罪又は監禁罪の構成要件にも該当する場合があるが、このことは、本条が暴行罪等の構成要件をもその構成要件中に含んでいることの当然の結果であって、この場合における本条違反と暴行罪等の関係は、観念的競合又は牽連犯をもって論ずべきでなく、例えば、刑法第222条の脅迫罪と同法223条の強要罪との関係の場合と同様、法条競合の関係(吸収関係)にあると解すべきである。
すなわち、暴行罪等の罪は、本条違反の罪に吸収されているとみるべきであり、したがって、一つの行為が本条の構成要件のみならず暴行罪等の構成要件にも該当する場合には、本条違反の罪のみが成立して、刑法の暴行罪等は成立する余地がないものと解される。
よって、問題文は正解となる。

(E)正解
法9条
請負契約による下請負人は、当該業務を自己の業務として注文主から独立して処理するものである限り、たとえ本人が労務に従事することがあっても本条の「労働者」となることはない。
例えば、農家又は工場がその事業経営上必要な建物その他の施設を大工に修理させる場合は、一般には請負契約によるもので、大工は本条の「労働者」にはあたらない。
しかし、形式上は請負のようなかたちをとっていても、その実体において使用従属関係が認められるときは、当該関係は労働関係であり、当該請負人は本条の「労働者」となる。
よって、問題文は正解となる。

  

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