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■平成27年労基-第3問(労働基準法に定める労働契約等)

労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)労働協約に定める基準に違反する労働契約の部分を無効とする労働組合法第16条とは異なり、労働基準法第13条は、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とすると定めている。

(B)契約期間の制限を定める労働基準法第14条の例外とされる「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」とは、その事業が有期的事業であることが客観的に明らかな場合であり、その事業の終期までの期間を定める契約であることが必要である。

(C)労働基準法第15条は、使用者が労働契約の締結に際し労働者に明示した労働条件が実際の労働条件と相違することを、同法第120条に定める罰則付きで禁止している。

(D)労働基準法第17条は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金とを相殺することを禁止し、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離することにより金銭貸借に基づく身分的拘束の発生を防止することを目的としたものである。

(E)使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後の30日間は、労働基準法第81条の規定によって打切補償を支払う場合、又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となりその事由について行政官庁の認定を受けた場合を除き、労働者を解雇してはならない。



■解説

(A)正解
法13条
労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準によることとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、この規定は、民法の一般規定に従えば、契約中強行法規に違反する部分が契約の主たる内容である場合は、契約全体が無効とされ、また、契約の一部が強行法規違反として無効とされる場合においては、その無効とされた部分は空白となるものと解され、無効な契約に基づいて労働した場合の法律関係が複雑になり、労働者保護に欠けるところとなるので、無効部分の補充規定を置き、違法契約による労働条件の不明確化を立法的に解決したものである。

(B)正解
法14条
「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」とは、例えば4年間で完了する土木工事において、技師を4年間の契約で雇入れる場合のごとく、その事業が有期的事業であることが客観的に明らかな場合であり、その事業の終期までの期間を定める契約であることが必要とされている。
よって、問題文は正解となる。

(C)誤り
法15条
使用者に明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができることになっており、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、必要な旅費を負担しなければならないこととされている。
しかし、労働条件が事実と相違することによる罰則は規定されていない。労働者の労働条件は、現実には労働協約又は就業規則の定めるところによって律せられるわけであって、労働契約自体は有効に成立することになる。
なお、使用者が法15条1項の規定に違反して明示すべき範囲の労働条件を明示しない場合は法120条第1号により30万円以下の罰金に処せられるが、これは、労働条件を明示しなかったという使用者の不作為が処罰の対象とされるためである。
よって、問題文は誤りとなる。

(D)正解
法17条、昭和22年9月13日発基17号、昭和33年2月13日基発90号
労働することを条件とする前貸しの債権には、前借金のほかに、前借金に追加して労働者ないしその親権者などに渡される金銭であって前借金と同じ目的を持つものが含まれる。いかなるものをもって労働することを条件とするとみるかについては、使用者が前貸しの債権を労働者が労働によって取得する賃金と相殺することによってその債権を返済させる目的で貸し付けた前借金のように金銭貸借関係と労働関係が密接に関係し、身分的拘束を伴うものを指すと解されている。
したがって、労働者が使用者から人的信用に基づいて受ける金融又は賃金の前払のような単なる弁済期の繰上げ等で明らかに身分的拘束を伴わないと認められるものは、労働することを条件とする債権ではないと解される。
よって、問題文は正解となる。

(E)正解
法19条
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後休業期間及びその後30日間は、解雇してはならないことになっている。
ただし、使用者が、法81条の規定による打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(その事由について行政官庁の認定を受ける必要がある。)においては解雇制限されないことになっている。
よって、問題文は正解となる。

  

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