社会保険労務士試験に楽に合格する方法論を研究するサイト
社会保険労務士試験情報局
トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成27年労基-第4問(労働基準法に定める賃金等)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成27年労基-第4問(労働基準法に定める賃金等)

労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)労働基準法第24条第1項に定めるいわゆる賃金直接払の原則は、例外のない原則であり、行政官庁が国税徴収法の規定に基づいて行った差押処分に従って、使用者が労働者の賃金を控除のうえ当該行政官庁に納付することも、同条違反となる。

(B)過払いした賃金を精算ないし調整するため、後に支払わるべき賃金から控除することは、その金額が少額である限り、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれがないため、労働基準法第24条第1項に違反するものではないとするのが、最高裁判所の判例である。

(C)退職金は労働者の老後の生活のための大切な資金であり、労働者が見返りなくこれを放棄することは通常考えられないことであるから、労働者が退職金債権を放棄する旨の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであるか否かにかかわらず、労働基準法第24条第1項の賃金全額払の原則の趣旨に反し無効であるとするのが、最高裁判所の判例である。

(D)労働協約、就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確である場合の退職手当は、労働基準法第11条に定める賃金であり、同法第24条第2項の「臨時に支払われる賃金」に当たる。

(E)労働基準法第24条第2項に定める一定期日払の原則は、期日が特定され、周期的に到来することを求めるものであるため、期日を「15日」等と暦日で指定する必要があり、例えば「月の末日」とすることは許されない。



■解説

(A)誤り
法24条1項
行政官庁が国税徴収法の規定に基づいて行った差押処分に従って、使用者が労働者の賃金を控除のうえ当該行政官庁に納付することは、「賃金直接払いの原則」に違反しない。
よって、問題文は誤りとなる。
なお、民事執行法に基づく差押えについても、同様に「賃金直接払いの原則」に違反しないものと解されている。

(B)誤り
福島県教組事件(昭和44年12月18日)
適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、法24条1項但書によって除外される場合にあたらなくても、その行使の時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば、同項の禁止するところではないと解するのが相当である。この見地からすれば、許さるべき相殺は、過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならないものと解せられるというのが最高裁判所の判例である。
よって、「その金額が少額である限り、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれがないため」とした問題文は誤りとなる。

(C)誤り
シンガー・ソング・メシーン事件(昭和48年1月19日)
賃金に当る退職金債権放棄の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは有効であり、法24条1項のいわゆる賃金全額払の原則は、労働者が退職に際し自ら退職金債権を放棄する旨の意思表示の効力を否定する趣旨ではないというのが最高裁判所の判例である。
よって、「労働者の自由な意思に基づくものであるか否かにかかわらず、労働基準法第24条第1項の賃金全額払の原則の趣旨に反し無効である」とした問題文は誤りとなる。

(D)正解
法11条、昭和29年9月13日発基17号
労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件が明確である場合の退職手当は法11条の賃金であり、法24条2項の「臨時の賃金等」に当るとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさないが、結婚手当等であって労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件の明確なものは賃金に当るとされている。(昭和29年9月13日発基17号)

(E)誤り
法24条2項
「一定の期日」は、期日が特定されるとともに、その期日が周期的に到来するものでなければならない。必ずしも、月の「15日」あるいは「10日及び20日」等と暦日を指定する必要はないから、月給について「月の末日」、週給について「土曜日」等とすることは差支えないが、「毎月15日から20日までの間」等のように日が特定しない定めをすること、あるいは、「毎月第2土曜日」のように月7日の範囲で変動するような期日の定めをすることは許されない。
ただし、所定支払日が休日に当たる場合には、その支払日を繰り上げる(又は繰下げる)ことを定めるのは「一定期日払の原則」に違反しない。
よって、問題文は誤りとなる。
なお、賃金の支払日は、毎月払の原則又は労働協約に反しない限り、労働協約又は就業規則によって自由に定め、又は変更し得るものであるから、使用者が事前に法90条の手続に従って就業規則を変更する限り支払期日が変更されても問題ないとされている。

  

→社会保険労務士試験過去問研究室(労働基準法)に戻る
Copyright (C) 2005 社会保険労務士試験情報局 All Rights Reserved