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■平成28年労基-第1問(労働基準法の総則等)

労働基準法の総則等に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

(ア)労働基準法第1条は、労働保護法たる労働基準法の基本理念を宣明したものであって、本法各条の解釈にあたり基本観念として常に考慮されなければならない。

(イ)労働基準法第2条第1項により、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」ため、労働組合が組織されている事業場では、労働条件は必ず団体交渉によって決定しなければならない。

(ウ)労働基準法第3条は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、労働条件について差別することを禁じているが、これは雇入れ後における労働条件についての制限であって、雇入れそのものを制限する規定ではないとするのが、最高裁判所の判例である。

(エ)労働基準法第6条は、法律によって許されている場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならないとしているが、その規制対象は、私人たる個人又は団体に限られ、公務員は規制対象とならない。

(オ)労働協約、就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確にされていても、労働者の吉凶禍福に対する使用者からの恩恵的な見舞金は、労働基準法第11条にいう「賃金」にはあたらない。

(A)(アとウ)

(B)(イとエ)

(C)(ウとオ)

(D)(アとエ)

(E)(イとオ)



■解説

(ア)正解
法1条、昭和22年9月13日発基17号
法1条は、労働者に人格として価値ある生活を営む必要を充たすべき労働条件を保障することを宣明したものであって、労働基準法各条の解釈にあたり基本観念として常に考慮されなければならないものとされている。
よって、問題文は正解となる。

(イ)誤り
法2条1項
法2条1項の「対等の立場」とは、形式的のみならず実質的に対等の立場をいうもので、社会的、経済的な力関係を離れて相互の人格を尊重する立場を意味する。しかし、そのような対等の立場というものは、個々の労働者と使用者の間では事実上困難であるので、団結権、団体交渉権の保護というものがこれを確保する働きをなすのである、しかし、本条は、右の原則を明らかにしたのみであって、現実に労働組合があるかどうか、また、団体交渉で決定したかどうかは、本条の問うところではない。
よって、「労働条件は必ず団体交渉によって決定」とした問題文は誤りとなる。

(ウ)正解
法3条、三菱樹脂事件(昭和48年12月12日)
法3条(均等待遇)では、使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならないと定められているが、最高裁判所は「労働基準法3条は労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは雇入れ後における労働条件についての制限であって、雇入れそのものを制限する規定ではない。」としている。
よって、問題文は正解となる。

(エ)誤り
法6条、昭和23年3月2日基発381号
法6条(中間搾取の排除)では、何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならないと定められている。この違反行為の主体は「他人の就業に介入して利益を得る」第三者であって、「何人も」とは本条の適用を受ける事業主に限定されず、個人、団体又は公人たると私人たるとを問わない。従って、公務員であっても違反行為の主体となる。
よって、「公務員は規制対象とならない。」とした問題文は誤りとなる。

(オ)誤り
法11条、昭和22年9月13日発基17号
結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさないこととされているが、結婚手当等であって労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件の明確なものは賃金に該当するものとされている。
よって、問題文は誤りとなる。

※正解の組合せは、(ア)と(ウ)であるため、(A)が正解となる。

  

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