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■平成28年労基-第3問(労働基準法に定める賃金等)

労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について当該労働者が指定する銀行口座への振込みによることができるが、「指定」とは、労働者が賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば同意が特段の事情のない限り得られているものと解されている。

(B)労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合でも、使用者は当該賃金債権の譲受人に対してではなく、直接労働者に対し賃金を支払わなければならないとするのが、最高裁判所の判例である。

(C)1か月における時間外労働の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる事務処理方法は、労働基準法第24条及び第37条違反としては取り扱わないこととされている。

(D)使用者は、労働者が出産、疾病、災害等非常の場合の費用に充てるために請求する場合には、いまだ労務の提供のない期間も含めて支払期日前に賃金を支払わなければならない。

(E)労働基準法第27条に定める出来高払制の保障給は、労働時間に応じた一定額のものでなければならず、労働者の実労働時間の長短と関係なく1か月について一定額を保障するものは、本条の保障給ではない。



■解説

(A)正解
法24条1項、則7条の2第1項、昭和63年1月1日基発1号
使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができることになっている。
このうち、「同意」については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問わないものであり、「指定」とは、労働者が賃金の振込対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば、同意が特段の事情のない限り得られているものとされる。
また、「振込」とは、振り込まれた資金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得るように行われることを要するものとされている。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
法24条1項、電電公社小倉電話局事件(昭和43年3月12日)
最高裁判所は「法24条1項が「賃金は直接労働者に支払わなければならない。」旨を定めて、使用者たる賃金支払義務者に対し罰則をもってその履行を強制している趣旨に徴すれば、労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同条が適用され、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならず、したがって、右賃金債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されないものと解するのが相当である。」としている。
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
法24条1項、法37条1項、昭和63年3月14日基発150号
割増賃金を計算する場合の端数処理として、次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるので、法24条及び法37条違反としては取扱われない。
(1)1箇月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げること
(2)1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合に、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げること
(3) 1箇月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の割増賃金の総額に円未満の端数が生じた場合に、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げること
よって、問題文は正解となる。

(D)誤り
法25条
労働者が支払期日前の支払を請求することができ、使用者がこれに応じなければならない賃金は「既往の労働に対する賃金」であり、「既往」とは、通常は請求の時以前を指すが、労働者から特に請求があれば、支払の時以前と解すべきである。いずれにしても、使用者は、特約のない限り、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金を支払う義務はないものとされている。
よって、「いまだ労務の提供のない期間も含めて」とした問題文は誤りとなる。

(E)正解
法27条
法27条の保障給は、労働時間に応じた一定額のものでけれればならず、1時間につきいくらと定める時間給であることを原則とし、労働者の実労働時間の長短と関係なく単に1か月について一定額を保障するものは、本条の保障給ではないとされている。
よって、問題文は正解となる。
ただし、月、週その他一定期間について保障給を定める場合であっても、当該保障給につき基準となる労働時間数(通常は当該一定期間における所定労働時間数と一致する。)が設定され、労働者の実労働時間数がこれを上回ったときはその上回った時間数につき増額されるようなものは、本条の保障給とみるべきである。なお、労働者の実労働時間数が保障給の基準となる労働時間数を下回ったときに、その下回った時間数に応じ減額されないものは、厳密な意味では、労働時間に応じているとはいえないが、減額されないから保障給ではないというのは妥当ではなく、増額措置がとられているときに限り、本条の保障給とみて差し支えないものと考えられている。

  

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