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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成29年労基-第5問(労働基準法の総則等)
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■平成29年労基-第5問(労働基準法の総則等)

労働基準法の総則等に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

(ア)労働基準法第3条は、使用者は、労働者の国籍、信条、性別又は社会的身分を理由として、労働条件について差別的取扱をすることを禁じている。

(イ)労働基準法第5条に定める強制労働の禁止に違反した使用者は、「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」に処せられるが、これは労働基準法で最も重い刑罰を規定している。

(ウ)労働基準法第6条は、法律によって許されている場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならないとしているが、「業として利益を得る」とは、営利を目的として、同種の行為を反覆継続することをいい、反覆継続して利益を得る意思があっても1回の行為では規制対象とならない。

(エ)労働者(従業員)が「公職に就任することが会社業務の逐行を著しく阻害する虞れのある場合においても、普通解雇に附するは格別、同条項〔当該会社の就業規則における従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇する旨の条項〕を適用して従業員を懲戒解雇に附することは、許されないものといわなければならない。」とするのが、最高裁判所の判例である。

(オ)医科大学附属病院に勤務する研修医が、医師の資質の向上を図ることを目的とする臨床研修のプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に医療行為等に従事することは、教育的な側面を強く有するものであるため、研修医は労働基準法第 9条所定の労働者に当たることはないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

(A)一つ
(B)二つ
(C)三つ
(D)四つ
(E)五つ



■解説

(ア)誤り
法3条
労基法3条では、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と規定されており、性別を理由とした差別的取扱いの禁止については規定されていない。
よって、問題文は誤りとなる。

(イ)正解
法5条、法117条
労基法5条では、「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」と規定されており、この規定に違反した場合は、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処せられる。これは労働基準法で最も重い刑罰である。
よって、問題文は正解となる。

(ウ)誤り
法6条、昭和23年3月2日基発381号
労基法6条では、「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」と規定されている。
このうち「業として利益を得る」とは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいう。従って1回の行為であっても、反復継続して利益を得る意思があれば充分であり、主業として為されると副業として為されるとを問わないこととされている。
よって、「反覆継続して利益を得る意思があっても1回の行為では規制対象とならない。」とした問題文は誤りとなる。
なお、「利益」とは、手数料、報償金、金銭以外の財物等如何なる名称たるとを問わず、使用者より利益を得る場合のみに限らず、労働者又は第三者より利益を得る場合をも含む。

(エ)正解
十和田観光電鉄事件(昭和38年6月21日)
市議会議員選挙に立候補し当選した労働者が、会社に対し、議員に就任したこと、公務就任中は休職の取扱いにしてもらいたいことを申し出たが、会社側は、従業員が会社の承認を得ずに公職に就任した場合は懲戒解雇する旨の就業規則の規定に該当するとして、懲戒解雇に付した。
それに対し、労働者は、このような就業規則の規定は労基法7条等に反し無効であって、それゆえ懲戒解雇も無効であると主張して訴えを提起した。
その訴えに対して、最高裁判所は、「公職の就任を使用者の承認事項として、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に付する旨の就業規則は労働基準法第7条に違反して無効であり、この場合、当該就業規則に基づく懲戒解雇について、普通解雇に付するは格別、懲戒解雇に付することは許されないとする」と判断した。

(オ)誤り
関西医科大学研修医事件(平成17年6月3日)
研修医の労働者性について、臨床研修は、医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定しており、研修医が医療行為等に従事する場合は、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、研修医は労働基準法9条所定の労働者に当るとするのが、最高裁判所の判例である。
よって、問題文は誤りとなる。

※誤っているものは、(ア)(ウ)(オ)であるため、(C)が正解となる。

  

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