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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成30年労基-第4問(労働基準法の総則)
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■平成30年労基-第4問(労働基準法の総則)

労働基準法の総則に関する次のアからオの記述のうち、正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

(ア)労働基準法第1条にいう「人たるに値する生活」には、労働者の標準家族の生活をも含めて考えることとされているが、この「標準家族」の範囲は、社会の一般通念にかかわらず、「配偶者、子、父母、孫及び祖父母のうち、当該労働者によって生計を維持しているもの」とされている。

(イ)労働基準法第3条にいう「賃金、労働時間その他の労働条件」について、解雇の意思表示そのものは労働条件とはいえないため、労働協約や就業規則等で解雇の理由が規定されていても、「労働条件」にはあたらない。

(ウ)労働基準法第4条の禁止する賃金についての差別的取扱いとは、女性労働者の賃金を男性労働者と比較して不利に取り扱う場合だけでなく、有利に取り扱う場合も含まれる。

(エ)いわゆるインターンシップにおける学生については、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合でも、不測の事態における学生の生命、身体等の安全を確保する限りにおいて、労働基準法第9条に規定される労働者に該当するとされている。

(オ)いわゆるストック・オプション制度では、権利付与を受けた労働者が権利行使を行うか否か、また、権利行使するとした場合において、その時期や株式売却時期をいつにするかを労働者が決定するものとしていることから、この制度から得られる利益は、それが発生する時期及び額ともに労働者の判断に委ねられているため、労働の対償ではなく、労働基準法第11条の賃金には当たらない。

(A)(アとイ)
(B)(アとウ)
(C)(イとエ)
(D)(ウとオ)
(E)(エとオ)



■解説

(ア)誤り
昭和22年9月13日発基17号、昭和22年11月27日基発401号
労働者が人たるに値する生活を営むためには、その標準家族の生活をも含めて考えることとされているが、これは、労働条件に関する基本原則を明らかにしたものであって、標準家族の範囲はその時の社会の一般通念によって理解されるべきもとされている。
よって、問題文は誤りとなる。

(イ)誤り
法3条、昭和23年6月16日基収1365号、昭和63年3月14日基発150号
解雇の意思表示そのものは労働条件とはいえないが、労働協約、就業規則等で解雇の基準又は理由が規定されていれば、それは労働するに当っての条件として法3条の労働条件となるものとされている。
よって、問題文は誤りとなる。

(ウ)正解
法4条、昭和22年9月13日発基17号、平成9年9月25日基発648号
職務、能率、技能、年齢、勤続年数等によって、賃金に個人的差異のあることは、法4条に規定する差別的取扱いではないが、例えばこれらが同一である場合において、男性はすべて月給制、女性はすべて日給制とし、男性たる月給者がその労働日数の如何にかかわらず月に対する賃金が一定額であるに対し、女性たる日給者がその労働日数の多寡によってその月に対する賃金が男性の一定額と異なる場合は、法4条違反となる。
なお、差別的取扱いをするとは、不利に取扱う場合のみならず有利に取扱う場合も含むものとされている。
よって、問題文は正解となる。

(エ)誤り
法9条、平成9年9月18日基発636号
一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働者に該当しないものとされている。
よって、問題文は誤りとなる。
なお、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられ、また、この判断は、個々の実態に即して行われることになっている。

(オ)正解
法11条、平成9年6月1日基発412号
ストック・オプション制度では、権利付与を受けた労働者が権利行使を行うか否か、また、権利行使するとした場合において、その時期や株式売却時期をいつにするかを労働者が決定するものとしていることから、この制度から得られる利益は、それが発生する時期及び額ともに労働者の判断に委ねられているため、労働の対償ではなく、法11条の賃金の当らないとされている。
よって、問題文は正解となる。

※正解の組合せは、(ウ)と(オ)であるため、(D)が正解となる。

  

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