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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成30年労基-第6問(労働基準法に定める賃金等)
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■平成30年労基-第6問(労働基準法に定める賃金等)

労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)派遣先の使用者が、派遣中の労働者本人に対して、派遣元の使用者からの賃金を手渡すことだけであれば、労働基準法第24条第1項のいわゆる賃金直接払の原則に違反しない。

(B)使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺は、当該同意が「労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは」、労働基準法第24条第1項のいわゆる賃金全額払の原則に違反するものとはいえないとするのが、最高裁判所の判例である。

(C)労働基準法では、年俸制をとる労働者についても、賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないが、各月の支払いを一定額とする(各月で等分して支払う)ことは求められていない。

(D)ストライキの場合における家族手当の削減が就業規則(賃金規則)や社員賃金規則細部取扱の規定に定められ異議なく行われてきている場合に、「ストライキ期間中の賃金削減の対象となる部分の存否及びその部分と賃金削減の対象とならない部分の区別は、当該労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らし個別的に判断するのを相当」とし、家族手当の削減が労働慣行として成立していると判断できる以上、当該家族手当の削減は違法ではないとするのが、最高裁判所の判例である。

(E)労働安全衛生法第66条による健康診断の結果、私傷病のため医師の証明に基づいて使用者が労働者に休業を命じた場合、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。



■解説

(A)正解
法24条1項、昭和61年6月6日基発333号
派遣中の労働者の賃金を派遣先の使用者を通じて支払うことについては、派遣先の使用者が、派遣中の労働者本人に対して、派遣元の使用者からの賃金を手渡すことだけであれば、直接払の原則には違反しないものとされている。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
日新製鋼事件(平成2年11月26日)
「労働基準法24条1項本文の定めるいわゆる賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべきであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであるが、労働者がその自由な意思に基づき右相殺に同意した場合においては、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である。」とするのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
法24条
賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないことになっており、年俸制の場合も同様である。しかし、各月の支払いを一定額とすることは求められていない。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
三菱重工長崎造船所事件(昭和56年9月18日)
「ストライキ期間中の賃金削減の対象となる部分の存否及びその部分と賃金削減の対象とならない部分の区別は、当該労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らし個別的に判断するのを相当」とし、家族手当の削減が労働慣行として成立していると判断できる以上、当該家族手当の削減は違法ではないとするのが、最高裁判所の判例である。
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
法26条、昭和23年10月21日基発1529号、昭和63年3月14日基発150号
労働安全衛生法第66条の規定による健康診断の結果に基いて使用者が労働時間を短縮させて労働させたときは、使用者は労働の提供のなかった限度において賃金を支払わなくても差し支えない。
よって、「平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」とした問題文は誤りとなる。
ただし、使用者が健康診断の結果を無視して労働時間を不当に短縮もしくは休業させた場合には、法26条の休業手当を支払わなければならない場合の生ずることもある。

  

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