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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成14年労災-第5問(損害賠償との調整)
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■平成14年労災-第5問(損害賠償との調整)

損害賠償との調整に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度で保険給付をしないことができる。この場合において、対象となる保険給付は、災害発生後3年以内に支給事由が生じた保険給付(年金たる保険給付については、この3年間に係るものに限る。)とされている。

(B)政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。この場合において、対象となる保険給付は、災害発生後3年以内に支給事由が生じた保険給付(年金たる保険給付については、この3年間に係るものに限る。)とされている。

(C)労働者又はその遺族が事業主から損害賠償を受けることができる場合であって、保険給付(一定のものを除く。)を受けるべきときに、同一の事由について損害賠償(当該保険給付によっててん補される損害をてん補する部分に限る。)を受けたときは、政府は、厚生労働大臣が定める基準により、その価額の限度で保険給付をしないことができる。

(D)企業内の労災補償は、労災保険の保険給付の上積みとして行われるのが通例であるので、労働協約、就業規則その他の諸規程からみて労災保険の保険給付に相当するものであることが明らかでない限り、保険給付の支給調整は行われない。

(E)特別支給金は、保険給付としてではなく 労働福祉事業の一環として支給されるものであるが、各保険給付に対応してそれと一体的に支給されるものであり、その法的性格も保険給付と実質的に同じく損害てん補の性質を有するので、その価額の限度において、保険給付とともに損害賠償との調整が行われる。



■解説

(A)正解
法12条の4第2項、昭和41年6月17日基発610号
保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、政府が保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得し、また、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができるとされている。
これは、同一の事由について保険給付の支給も受け、損害賠償も受けるとなると災害が二重に填補されることになるから、保険給付が先行した場合は、損害賠償請求権を政府が代位取得(これに基づき政府は加害者から求償する)し、損害賠償が先行した場合については、政府が保険給付の責を免れること(保険給付の控除)を定めたものである。
問題文は保険給付の控除についてであるが、控除の対象となる保険給付は、損害賠償額に達するまで支給停止されることになる。
しかし、災害発生後3年以内に支給事由が生じた保険給付に限られている。(民法の規定で不法行為に基づく民事損害賠償請求権の時効が3年であるため)

(B)正解
保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、政府が保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得し、また、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができるとされている。
これは、同一の事由について保険給付の支給も受け、損害賠償も受けるとなると災害が二重に填補されることになるから、保険給付が先行した場合は、損害賠償請求権を政府が代位取得(これに基づき政府は加害者から求償する)し、損害賠償が先行した場合については、政府が保険給付の責を免れること(保険給付の控除)を定めたものである。
問題文は損害賠償請求権の代位取得と求償についてであるが、政府が加害者に対して行う求償権の行使は、支給した保険給付の額が、代位取得した損害賠償額に達するまで行われるが、災害発生後3年以内に支給事由が発生した保険給付に限られている。(民法の規定で不法行為に基づく民事損害賠償請求権の時効が3年であるため)

(C)正解
法附則64条2項
労災保険は、本来事業主が行うべき災害補償責任を代行する目的で定められた制度であるため、被災労働者等が事業主から同一の事由について損害賠償を受けた場合には、政府は、労働政策審議会の議を経て厚生労働大臣が定める基準により、その価額の限度で、保険給付をしないことができるとされている。

(D)正解
法附則64条2項、昭和56年6月12日発基60号
企業内労災補償は、一般的にいって労災保険給付が支給されることを前提としながらこれに上積みして給付する趣旨のものであるので、企業内労災補償については、その制度を定めた労働協約、就業規則その他の規程の文面上労災保険給付相当分を含むことが明らかである場合を除き、労災保険給付の支給調整を行わないとされている。
なお、労災保険給付が将来にわたり支給されることを前提としてこれに上積みして支払われる示談金及び和解金、また、単なる見舞金等民事損害賠償の性質をもたないものについても、労災保険給付の支給調整を行わないこととされている。

(E)誤り
法12条の4、法附則64条
特別給付金は、労働福祉事業として行われるものであり、保険給付とは異なるので、民事損害賠償との調整は行われない。

  

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