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■平成18年労災-第7問(第三者の行為による損害の賠償)

保険給付と第三者の行為による損害の賠償との関係について、次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

(B)政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度で保険給付をしないことができる。

(C)保険給付に付随して支給される特別支給金は、実質的に保険給付と同じく損害のてん補の意義をもつものであるので、その支給の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合には、保険給付に準じて損害賠償との調整が行われる。

(D)労働者又はその遺族が事業主から損害賠償を受けることができる場合であって、保険給付(一定のものを除く。)を受けるときに、同一の事由について損害賠償(当該保険給付によっててん補される損害をてん補する部分に限る。)を受けたときは、政府は、厚生労働大臣が定める基準により、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。

(E)適用事業の事業主が保険給付の上積みとして独自に行う災害補償については、保険給付と重複するものでない限り、これによって保険給付の調整が行われることはない。



■解説

(A)正解
法12条の4第1項
政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得することになっている。
よって、問題文は正解である。

(B)正解
法12条の4第2項
保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができることになっている。
よって、問題文は正解である。

(C)誤り
法12条の4、特別支給金規則20条
特別支給金規則に、労災保険法の第三者行為災害の場合における調整規定を準用する規定がないため、特別支給金については、損害賠償との調整は行われない。(損害賠償の代位取得も行われず、同一事由について損害賠償を受けた場合であっても、特別支給金は支給される)
よって、「保険給付に準じて損害賠償との調整が行われる」とした問題文は誤りである。
なお、特別支給金については、同一事由により他の社会保険から保険給付を受けた場合でも支給調整の対象とならず、保険関係成立届を怠っている間の災害等に関する事業主からの費用徴収の対象にもならない。
また、労災保険法の不服申立ての規定も適用されないので、特別支給金の支給に関して不服がある場合は、行政不服審査法の規定が適用されることになる。

(D)正解
法附則64条2項
労働者又はその遺族が、当該労働者を使用している事業主又は使用していた事業主から損害賠償を受けることができる場合であって、保険給付を受けるべきときに、同一の事由について、損害賠償(当該保険給付によっててん補される損害をてん補する部分に限る。)を受けたときは、政府は、労働政策審議会の議を経て厚生労働大臣が定める基準により、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。
よって、問題文は正解となる。
なお、障害(補償)年金及び遺族(補償)年金については、前払一時金最高限度額に相当する期間までは、事業主から損害賠償を受けた場合でも支給調整されないことになっているので注意すること。

(E)正解
法附則64条2項、昭和56年6月12日発基第60号
企業内労災補償は、一般的にいって労災保険給付が支給されることを前提としながらこれに上積みして給付する趣旨のものであるので、企業内労災補償については、その制度を定めた労働協約、就業規則その他の規程の文面上労災保険給付相当分を含むことが明らかである場合を除き、労災保険給付の支給調整を行わないこととされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、労災保険給付が将来にわたり支給されることを前提としてこれに上積みして支払われる示談金及び和解金、単なる見舞金等民事損害賠償の性質をもたないものについても労災保険給付の支給調整を行わないこととされている。

  

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