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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成19年労災-第2問(給付基礎日額)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成19年労災-第2問(給付基礎日額)

次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)給付基礎日額は、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額とされているが、この場合において、同条第1項の平均賃金を算定すべき事由の発生した日は、業務上の事由又は通勤による負傷、疾病、障害若しくは死亡の原因である事故の発生した日とされる。

(B)休業補償給付又は休業給付(以下この問において「休業補償給付等」という。)の額の算定に用いられる給付基礎日額には、原則として、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額が用いられるが、休業補償給付等を支給すべき事由が生じた日が当該休業補償給付等に係る療養を開始した日から起算して1年6か月を経過した日以後の日である場合において、四半期(1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月)ごとの毎月勤労統計における労働者1人当たりの平均給与額が休業補償給付等の算定事由発生日の属する四半期の平均給与額(「毎月きまって支給する給与」の1か月平均額)の100分の110を超え、又は100分の90を下るに至ったときは、その上昇し、又は低下するに至った四半期の翌々四半期の初日以後に支給事由が生じた休業補償給付等については、その上下した数値を労働基準法第12条の平均賃金に相当する額に乗じてスライドさせた額が給付基礎日額として用いられる。

(C)年金たる保険給付の額の算定に用いられる給付基礎日額には、原則として、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額が用いられるが、 毎月勤労統計における労働者1人当たりの平均給与額が給付基礎日額の算定事由発生日の属する年度(4月から翌年3月まで)における平均給与額の100分の110を超え、又は100分の90を下るに至った場合は、その上下した比率を基準として厚生労働大臣が定める率を労働基準法第12条の平均賃金に相当する額に乗じてスライドさせた額が、算定事由発生日の属する年度の翌々年度の8月以降の給付基礎日額として用いられる。

(D)給付基礎日額については、厚生労働省令で定める年齢階層ごとに厚生労働大臣が最低限度額又は最高限度額を定めており、休業補償給付等又は年金たる保険給付を支給すべき事由が生じた時期にかかわらず、その額の算定に用いられる給付基礎日額が当該最低限度額に満たず、又は当該最高限度額を超える場合には、この最低限度額又は最高限度額が当該休業補償給付等又は年金たる保険給付の額の算定基礎として用いるべき給付基礎日額となる。

(E)障害補償一時金若しくは障害一時金又は遺族補償一時金若しくは遺族一時金の額の算定に用いる給付基礎日額のスライドは、年金たる保険給付の額の算定に用いる給付基礎日額のスライドに準ずる。



■解説

(A)誤り
法8条1項
給付基礎日額は、労働基準法12条の平均賃金に相当する額とされている。
そして、平均賃金を算定すべき事由の発生した日とは、業務上の事由又は通勤による負傷若しくは死亡の原因である事故が発生した日又は診断によって疾病の発生が確定した日(算定事由発生日)とされている。
よって、「平均賃金を算定すべき事由の発生した日は、業務上の事由又は通勤による負傷、疾病、障害若しくは死亡の原因である事故の発生した日」とした問題文は誤りである。(算定事由発生日に障害が含まれない点、疾病については診断によって疾病の発生が確定した日である点から誤りとなる。)

(B)誤り
法8条の2第1項
休業補償給付等の額の算定の基礎となる給付基礎日額は、原則として労働基準法12条の平均賃金に相当する額とされているが、休業補償給付等の支給が長期に及んだ場合には、賃金水準の変動に応じて実質的な価値を維持するためにスライド制が適用され、また年齢に応じた所得補償を行うために年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額が適用されることになっている。
そのうちスライド制は、四半期ごとの平均給与額が、算定事由発生日の属する四半期(すでにスライドされた休業給付基礎日額が適用されているときは、スライド改定された四半期の前々四半期)の平均給与額の100分の110を超え、又は100分の90を下るに至った場合において、その上昇し、又は低下するに至った四半期の翌々四半期に属する最初の日より労働基準法12条の平均賃金に相当する額に厚生労働大臣が定める率を乗じることによって行われることになっている。
よって、スライド制が適用されるのが「休業補償給付等に係る療養を開始した日から起算して1年6か月を経過した日以後の日」とした点、「上下した数値を労働基準法第12条の平均賃金に相当する額に乗じてスライドさせた額が給付基礎日額として用いられる」とした点から問題文は誤りとなる。
なお、休業補償給付等に係る療養を開始した日から起算して1年6か月を経過した日以後の日からは、年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額が適用される。(スライド制を適用した後に年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額が適用する。)

(C)誤り
法8条の3第1項
年金たる保険給付の額の算定に用いられる給付基礎日額(年金給付基礎日額)には、原則として、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額が用いられるが、算定事由発生日の属する年度の翌々年度の8月以後の分として支給する年金たる保険給付については、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額に当該年金たる保険給付を支給すべき月の属する年度の前年度(当該月が4月から7月までの月に該当する場合にあっては、前々年度)の平均給与額を算定事由発生日の属する年度の平均給与額で除して得た率を基準として厚生労働大臣が定める率を乗じて得た額を年金給付基礎日額とすることとされている。
よって、年金給付基礎日額に適用されるスライド制は、平均給与額の少しの変動でも改定される完全自動賃金スライド制であり、「平均給与額の100分の110を超え、又は100分の90を下るに至った場合は、その上下した比率を基準として厚生労働大臣が定める率を労働基準法第12条の平均賃金に相当する額に乗じてスライド」とした問題文は誤りとなる。
なお、年金給付基礎日額についても年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額が適用されるが、休業給付基礎日額の場合と異なり、支給事由の生じた最初の月から適用されることになっている。(スライド制を適用した後に年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額が適用する。)

(D)誤り
法8条の2第2項、法8条の3第2項
年金給付基礎日額については、支給事由の生じた最初の月から年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額が適用されることになっているが、休業給付基礎日額については、休業補償給付等に係る療養を開始した日から起算して1年6か月を経過した日以後の日から年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額が適用されることになっている。
よって、「休業補償給付等又は年金たる保険給付を支給すべき事由が生じた時期にかかわらず」とした問題文は誤りである。
なお、適用される年齢についても、休業給付基礎日額は「被災した労働者の四半期の初日における年齢」で判断し、年金給付基礎日額は「被災した労働者の8月1日における年齢」で判断することとされており、異なっているので注意すること。

(E)正解
法8条の4
一時金の給付基礎日額の算定に用いるスライド制は、年金給付基礎日額と同様の方法で算定されることになっている。
よって、問題文は正解である。
なお、一時金の給付基礎日額については、年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額が適用されないので注意すること。

  

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