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■平成20年労災-第1問(保険給付等)

次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、以下において、「労災保険法」とは「労働者災害補償保険法」のことであり、「労災保険」とは「労働者災害補償保険」のことである。

(A)試みの使用期間中で雇入れ後14日未満の者には、労災保険法は適用されない。

(B)派遣労働者は、派遣元事業主に雇用される労働者であるが、派遣先の指揮命令を受けて従事した労働によって生じた業務災害については、派遣先を労災保険の適用事業として保険給付が行われる。

(C)労災保険の保険給付は、いずれも、その事由が生じた場合に、当該保険給付を受けることができる者からの請求に基づいて行われる。

(D)中小事業主及び一人親方等の特別加入者は、適用事業に使用される労働者とみなされ、労災保険のすべての保険給付が行われる。

(E)事業主が労災保険に係る保険関係の成立の届出をせず、保険料を納付していない場合であっても、その事業に使用される労働者が労災保険法第7条第1項に定める保険給付の受給を制限されることはない。この場合において、政府は、所定の価額の限度で、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を当該事業主から徴収することができることとされている。



■解説

(A)誤り
法3条、労基法9条
労働基準法9条により、労働者とは職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいうと定義されており、試みの使用期間中の者であっても労働者となる。
そして、労災保険法では、労働者を使用する事業を適用事業とすると定義しているため、試みの使用期間中で雇入れ後14日未満の者であっても労災保険法の適用を受ける。
よって、問題文は誤りとなる。

(B)誤り
法3条、昭和61年6月30日基発383号
労災保険法に関しては、法第3条1項は「労働者を使用する事業を適用事業とする」と規定しており、この「使用する」は労働基準法等における「使用する」と同様労働契約関係にあるという意味に解されており、また、労働基準法上の災害補償責任が派遣元事業主に課される以上、労災保険法と労働基準法との関係を考慮すれば、労災保険法の適用についても同様に取り扱い、派遣元事業主を労災保険の適用事業とすることが適当である。このため、労働者派遣法においても労災保険法の適用について定める特段の規定は設けられていない。
よって、「派遣先を労災保険の適用事業として保険給付が行われる。」とした問題文は誤りとなる。

(C)誤り
法12条の8第2項・3項、則18条の2第1項ほか
傷病(補償)年金については、業務上の事由又は通勤により被災した労働者が法定の支給要件を満たした場合に所轄労働基準監督署長が職権で支給決定を行うこととされている。
よって、「いずれも、その事由が生じた場合に、当該保険給付を受けることができる者からの請求に基づいて行われる。」とした問題文は誤りとなる。

(D)誤り
法26条1項、法35条1項、平成13年3月30日基発233号
二次健康診断等給付は、事業主による業務軽減などの適切な予防対策に結びつけることを趣旨としているが、特別加入者については、安衛法の適用がないことから定期健康診断等の適用対象となっておらず、健康診断の受診について自主性に任されていることから二次健康診断等給付の対象としないこととされている。
また、一人親方等の特別加入者のうち住居と就業の場所との間の往復の状況等から通勤と業務の明確な区分がつきにくい、個人タクシー業者や個人貨物運送業者などには通勤災害が適用されないこととされている。
よって、「労災保険のすべての保険給付が行われる。」とした問題文は誤りとなる。

(E)正解
法31条1項
事業主が労災保険に係る保険関係の成立の届出をせず、保険料を納付していない場合であっても、労働者は保険給付を制限されることはない。
この場合に事業主が故意又は重大な過失により保険関係成立届を提出しない期間中(認定決定後の期間は除く)、または、事業主が概算保険料のうち一般保険料を納付しない期間中(督促状の指定期限後の期間に限る。)に発生した事故について保険給付をおこなったときは、政府は、業務災害に関する保険給付にあっては、労働基準法の規定による災害補償の価額の限度で、通勤災害に関する保険給付にあっては通勤災害を業務災害とみなした場合に支給されるべき業務災害に関する保険給付に相当する労働基準法の規定による災害補償の価額の限度で、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することができるとされている。
よって、問題文は正解となる。

  

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