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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成22年労災-第1問(労働者災害補償保険の保険給付)
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■平成22年労災-第1問(労働者災害補償保険の保険給付)

労働者災害補償保険の保険給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、以下において、「労災保険」とは「労働者災害補償保険」のこと、「労災保険法」とは「労働者災害補償保険法」のこと、「労災保険法施行規則」とは「労働者災害補償保険法施行規則」のことである。

(A)労災保険の保険給付は、業務災害に対する迅速公正な保護だけでなく、通勤災害に対しても同様な保護をするために行われるものであるが、通勤災害に関しては、業務災害に係る介護補償給付に対応する保険給付は定められていない。

(B)労災保険の保険給付のうち、業務災害に関する保険給付は、労働基準法に規定する災害補償の事由が生じた場合にのみ行われるのであって、その種類は、給付を受けるべき者の請求に基づく療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料及び介護補償給付に限られる。

(C)偽りその他不正の手段により労災保険の保険給付を受けた者がある場合において、その保険給付が事業主の虚偽の報告又は証明をしたために行われたものであるときは、保険給付を受けた者ではなく事業主が、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部を政府に返還しなければならない。

(D)一人親方等の特別加入者のうち、漁船による水産動植物の採捕の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者は、自宅から漁港までの移動が通勤とみなされ、通勤災害に関しても労災保険の適用を受けることができる。

(E)遺族補償給付を受ける権利を有する同順位者が2人以上ある場合の遺族補償給付の額は、遺族補償年金にあっては労災保険法別表第1に規定する額を、遺族補償一時金にあっては同法別表第2に規定する額を、それぞれ同順位者の人数で除して得た額となる。



■解説

(A)誤り
法24条
通勤災害に関する保険給付として介護給付が設けられている。
よって、「通勤災害に関しては、業務災害に係る介護補償給付に対応する保険給付は定められていない」とした問題文は誤りとなる。
なお、介護給付は、障害年金又は傷病年金を受ける権利を有する労働者が、その受ける権利を有する障害年金又は傷病年金の支給事由となる障害であって厚生労働省令で定める程度のものにより、常時又は随時介護を要する状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けている間(次に掲げる間を除く。)、当該労働者に対し、その請求に基づいて行うこととされている。
1.障害者支援施設(生活介護を受けている場合に限る)
2.病院又は診療所
3.特別養護老人ホーム
4.原子爆弾被爆者特別養護ホーム
5.厚生労働大臣が定める施設

(B)誤り
法12条の8
業務災害に関する保険給付(傷病補償年金及び介護補償給付を除く。)は、労働基準法に規定する災害補償の事由又は船員法に規定する災害補償の事由のうち一定のものが生じた場合に、補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行うこととされている。
また、業務災害に関する保険給付には、療養補償給付、休業補償給付、傷病補償年金、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料及び介護補償給付が設けられている。
よって、「労働基準法に規定する災害補償の事由が生じた場合にのみ行われる」とした点、業務災害に関する保険給付について「傷病補償年金」の記述が抜けている点から問題文は誤りとなる。

(C)誤り
法12条の3第2項
偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者がある場合において、事業主が虚偽の報告又は証明をしたためその保険給付が行なわれたものであるときは、政府は、その事業主に対し、保険給付を受けた者と連帯して保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部の徴収金の納付を命ずることができるとされている。
よって、「保険給付を受けた者ではなく事業主が、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部を政府に返還しなければならない」とした問題文は誤りである。
なお、この場合の徴収金については、実際に受けた保険給付のうち、偽りその他不正の手段により給付を受けた部分に相当する価額に限られている。(昭和40年7月31日基発906号)

(D)誤り
法35条1項、則46条の22の2
一人親方等の特別加入者のうち、漁船による水産動植物の採捕の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者について、住居と就業の場所との間の往復の実態が明確ではないこと等から、通勤災害の保護の対象とされないことになっている。
よって、「自宅から漁港までの移動が通勤とみなされ、通勤災害に関しても労災保険の適用を受けることができる」とした問題文は誤りとなる。

(参考)
一人親方等の特別加入者のうち、住居と就業の場所との間の往復の実態が明確ではないこと等から通勤災害の対象とされていない者
1.個人タクシー業者・個人貨物運送業者
2.漁船による自営漁業者(船員法1条に規定する船員が行う事業を除く)
3.特定農作業従事者
4.指定農業機械作業従事者
5.危険有害な作業に従事する家内労働者等

(E)正解
法16条の3第2項、法16条の8第2項
遺族補償年金を受ける権利を有する者が2人以上あるとき、遺族補償年金の額は別表第一に規定する額をその人数で除して得た額、遺族補償一時金の額は別表第二に規定する額をその人数で除して得た額とされている。
よって、問題文は正解となる。

  

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