社会保険労務士試験に楽に合格する方法論を研究するサイト
社会保険労務士試験情報局
トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成23年労災-第4問(労災保険給付)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成23年労災-第4問(労災保険給付)

労災保険に関する次の記述のうち正しいものはどれか。

(A)労災保険法第7条に規定する通勤の途中で合理的経路を逸脱した場合でも、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱の間も含め同条の通勤とする。

(B)保険給付に関する決定についての審査請求に係る労働者災害補償保険審査官の決定に対して不服のある者は、再審査請求をした日から3か月を経過しても裁決がないときであっても、再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経ずに、処分の取消しの訴えを提起することはできない。

(C)介護補償給付は、月を単位として支給されるが、その月額は、常時又は随時介護を受ける場合に通常要する費用を考慮して厚生労働大臣が定める額とする。

(D)療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、3年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、5年を経過したときには、時効によって消滅する。

(E)労働者の死亡前に、当該労働者の死亡によって遺族補償年金を受けることができる先順位の遺族となるべき者を故意に死亡させた者のみ、遺族補償年金を受けることができる遺族とされない。



■解説

(A)誤り
法7条3項
通勤の途中において、労働者が逸脱、中断する場合には、その後は就業に関してする往復行為というよりも、むしろ、逸脱又は中断の目的に関してする行為と考えられるので、その後は一切通勤とは認められないこととなるのであるが、これについては、通勤の実態を考慮して、法律で例外が設けられ、通勤の途中で日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものを、やむを得ない事由により最小限度の範囲で行うために逸脱又は中断をする場合には、当該逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は通勤と認められることとされている。
よって、「当該逸脱の間も含め同条の通勤とする」とした問題文は誤りとなる。

(B)誤り
法40条
処分の取消しの訴えは、当該処分についての再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができないこととされているが、次のいずれかに該当するときは、労働保険審査会の裁決を経なくても提起することが認められている。
(1)再審査請求がされた日から3箇月を経過しても裁決がないとき
(2)再審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるときその他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき
よって、「再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経ずに、処分の取消しの訴えを提起することはできない」とした問題文は誤りとなる。

(C)正解
法19条の2
介護補償給付は、月を単位として支給するものとし、その月額は、常時又は随時介護を受ける場合に通常要する費用を考慮して厚生労働大臣が定める額とすることとされている。
よって、問題文は正解となる。

(D)誤り
法42条
療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、2年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、5年を経過したときは、時効によって消滅することとされている。
よって、「3年を経過したとき」とした問題文は誤りとなる。
なお、療養(補償)給付のうち療養の給付については、現物給付であるために時効の問題は生じないが、療養の費用の支給を受ける権利は、療養に要する費用を支払った日ごとにその翌日から2年で時効消滅することになる。

(参考)
時効期間と消滅時効のまとめ
保険給付 起算日 時効期間
療養(補償)給付
(療養の費用の支給)
療養の費用を支払った日の翌日 2年
休業(補償)給付 休業の日ごとにその翌日 2年
障害(補償)年金前払一時金 傷病が治った日の翌日 2年
遺族(補償)年金前払一時金 労働者が死亡した日の翌日 2年
葬祭料(葬祭給付) 労働者が死亡した日の翌日 2年
介護(補償)給付 介護を受けた月の翌月の初日 2年
二次健康診断等給付 労働者が一次健診の結果を了知し得る日の翌日 2年
障害(補償)年金 傷病が治った日の翌日 5年
障害(補償)一時金 傷病が治った日の翌日 5年
障害(補償)年金差額一時金 労働者が死亡した日の翌日 5年
遺族(補償)年金 労働者が死亡した日の翌日 5年
遺族(補償)一時金 労働者が死亡した日の翌日 5年

(E)誤り
法16条の9
遺族補償給付の受給資格の欠格としては次のように規定されている。
(1)労働者を故意に死亡させた者は、遺族補償給付を受けることができる遺族としない。
(2)労働者の死亡前に、当該労働者の死亡によって遺族補償年金を受けることができる先順位又は同順位の遺族となるべき者を故意に死亡させた者は、遺族補償年金を受けることができる遺族としない。
(3)遺族補償年金を受けることができる遺族を故意に死亡させた者は、遺族補償一時金を受けることができる遺族としない。労働者の死亡前に、当該労働者の死亡によって遺族補償年金を受けることができる遺族となるべき者を故意に死亡させた者も、同様とする。
(4)遺族補償年金を受けることができる遺族が、遺族補償年金を受けることができる先順位又は同順位の他の遺族を故意に死亡させたときは、その者は、遺族補償年金を受けることができる遺族でなくなる。この場合において、その者が遺族補償年金を受ける権利を有する者であるときは、その権利は、消滅する。
よって、「先順位の遺族となるべき者を故意に死亡させた者のみ」とした問題文は誤りとなる。(労働者を故意に死亡させた者、労働者の死亡前に、当該労働者の死亡によって遺族補償年金を受けることができる先順位又は同順位の遺族となるべき者を故意に死亡させた者についても遺族補償年金を受けることができる遺族とされないため)

  

→社会保険労務士試験過去問研究室(労災保険法)に戻る
Copyright (C) 2005 社会保険労務士試験情報局 All Rights Reserved