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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成24年労災-第7問(心理的負荷による精神障害の認定基準)
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■平成24年労災-第7問(心理的負荷による精神障害の認定基準)

厚生労働省労働基準局長通知(「心理的負荷による精神障害の認定基準について」平成23年12月26日付け基発1226第1号。以下「認定基準」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、本問において「対象疾病」とは、「認定基準で対象とする疾病」のことである。


(A)認定基準においては、次のいずれの要件も満たす場合に、業務上の疾病として取り扱うこととしている。
@対象疾病を発病していること。
A対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
B業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。

(B)認定基準における対象疾病の発病に至る原因の考え方は、環境由来の心理的負荷(ストレス)と、個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり、心理的負荷が非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神的破綻が起こるし、逆に脆弱性が大きければ、心理的負荷が小さくても破綻が生ずるとする「ストレス−脆弱性理論」に依拠している。

(C)認定基準においては、「業務による強い心理的負荷」について、精神障害を発病した労働者がその出来事及び出来事後の状況が持続する程度を主観的にどう受け止めたかではなく、職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価されるとしている。

(D)認定基準においては、例えば対象疾病の発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行っていたときには、手待時間が多いなど労働密度が特に低い場合を除き、心理的負荷の総合評価を「強」と判断するとしている。

(E)認定基準においては、労災保険法第12条の2の2が労働者が故意に死亡したときは、政府は保険給付を行わないと規定していることから、業務により精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合には、業務起因性は認められないとしている。



■解説

(A)正解
平成23年12月26日基発1226第1号
次のいずれの要件も満たす対象疾病は、業務上の疾病として取り扱うこととされている。
(1)対象疾病を発病していること。
(2)対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
(3)業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。
また、要件を満たす対象疾病に併発した疾病については、対象疾病に付随する疾病として認められるか否かを個別に判断し、これが認められる場合には当該対象疾病と一体のものとして、業務上の疾病として取り扱うこととされている。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
平成23年12月26日基発1226第1号
対象疾病の発病に至る原因の考え方は、環境由来の心理的負荷(ストレス)と、個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり、心理的負荷が非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神的破綻が起こるし、逆に脆弱性が大きければ、心理的負荷が小さくても破綻が生ずるとする「ストレス−脆弱性理論」に依拠している。
このため、心理的負荷による精神障害の業務起因性を判断する要件としては、対象疾病の発病の有無、発病の時期及び疾患名について明確な医学的判断があることに加え、当該対象疾病の発病の前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められることを掲げている。
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
平成23年12月26日基発1226第1号
強い心理的負荷とは、精神障害を発病した労働者がその出来事及び出来事後の状況が持続する程度を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価されるものであり、「同種の労働者」とは職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者をいう。
さらに、これらの要件が認められた場合であっても、明らかに業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したと認められる場合には、業務起因性が否定されるため、認定要件(A肢の内容)が定められた。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
平成23年12月26日基発1226第1号
発病日から起算した直前の2か月間に1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった場合等には、心理的負荷の総合評価を「強」と判断することとされている。
よって、問題文は正解となる。
また、極度の長時間労働は、心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等の原因となることから、発病日から起算した直前の1か月間におおむね160時間を超える時間外労働を行った場合等には、当該極度の長時間労働に従事したことのみで心理的負荷の総合評価を「強」と判断することとされている。

(E)誤り
平成23年12月26日基発1226第1号、平成11年9月14日付け基発第545号
業務により精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、あるいは自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定し、業務起因性を認めることとされている。
よって、「業務起因性は認められない」とした問題文は誤りとなる。

  

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