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■平成25年労災-第2問(労災保険法の保険給付)

労災保険に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)休業補償給付は、労働者が業務上の傷病により療養のため労働不能の状態にあって賃金を受けることができない場合であれば、出勤停止の懲戒処分のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日についても支給される。

(B)政府は、保険給付に関して必要であると認めるときは、保険給付を受け、又は受けようとする者に対し、その指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができ、その者が命令に従わないときは、保険給付の支払を一時差し止めることができる。

(C)土木工事及び重機の賃貸のそれぞれを業として行っていた事業主の、労働者を使用することなく行っていた重機の賃貸業務に起因する死亡につき、同事業主が労働者を使用して行っていた土木工事業について労災保険法第33条第1項に基づく加入申請の承認を受けていれば、同法に基づく保険給付の対象になる。

(D)業務災害による身体の部位の機能障害と、そこから派生した神経症状が、医学的にみて一個の病像と把握される場合には、当該機能障害と神経症状を包括して一個の身体障害と評価し、その等級は重い方の障害等級による。

(E)介護補償給付の額は、常時介護を要する状態の被災労働者については、支給すべき事由が生じた月において介護に要する費用として支出された額が、労災保険法施行規則に定める額に満たない場合にあっては、当該介護に要する費用として支出された額である。



■解説

(A)正解
法14条、浜松労基署長(雪島鉄工所)事件(昭和58年10月13日最高裁判所判決)
最高裁判所の判例では、休業補償給付は、労働者が業務上の傷病により療養のため労働不能の状態にあって賃金を受けることができない場合に支給されるものであり、右の条件を具備する限り、その者が休日又は出勤停止の懲戒処分を受けた等の理由で雇用契約上賃金請求権を有しない日についても、休業補償給付の支給がされると解するのが相当であるとされている。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
法47条の2、法47条の3
行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受け、又は受けようとする者(遺族補償年金又は遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む。)に対し、その指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができ、労働者等がこの命令に違反して診断を受けない場合には、保険給付の支払の一時差止めが行われることがある。
よって、問題文は正解となる。

(C)誤り
法33条、法34条、姫路労基署長(井口重機)事件(平成9年1月23日最高裁判所判決)
土木工事及び重機の賃貸を業として行っていた事業主が、土木工事業についてのみ特別加入の承認を受けていた場合、重機の賃貸業務に起因する死亡に関しては、労働者災害補償保険法に基づく保険給付を受けることはできない。
よって、「同法に基づく保険給付の対象になる。」とした問題文は誤りとなる。

(参考)
中小企業事業主等の業務の内容は、労働者と異なり、労働協約、就業規則、労働契約などによって特定されないので、災害の業務上外の認定に困難を生ずる場合が少なくない。そこで、特別加入申請書に、業務の内容を記載させ、これをもって業務上外の認定の一資料としているのである。したがって、この業務の内容の記載は、特別加入予定者の業務の範囲を明確に特定しうる程度(例えば、就業時間の明示など)に具体性をもってなされなければならない。(昭和40年11月1日基発1454号)

(D)正解
法15条、平成18年1月25日基発125002号、玉名労働基準監督署長事件(昭和55年年3月27日最高裁判決)
重い外傷又は疾病により器質的又は機能的障害を残す場合には、一般に患部に第12級又は第14級程度の疼痛等神経症状を伴うが、これを別個の障害としてとらえることなく、器質的又は機能的障害と神経症状のうち最も重い障害等級によることとされている。
よって、問題文は正解となる。

(E)正解
法19条の2、則18条の3の4
支給すべき事由が生じた月(介護を受け始めた月)における介護補償給付の額は、その月に介護費用として支出された額(実費)が支給される。(上限額の適用あり)
なぜなら、併せて親族等に介護を受けた場合であっても介護を受け始めた月については、最低保障額の適用がなく、上限額の範囲内で、その月に介護費用として支出された額(実費)が支給されることになるためである。
また、介護費用を支出しないで、親族等による介護を受けたとしても、同じく介護を受け始めた月については、最低保障額の適用がなく、支出した費用がない以上、介護補償給付は支給されないためである。
よって、問題文は正解となる。

  

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