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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成26年労災-第1問(業務上災害等)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成26年労災-第1問(業務上災害等)

業務上災害等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)自動車運転手が、長距離定期貨物便の運送業務の途上、会社が利用を認めている食堂前に至ったので、食事のために停車し食堂へ向かおうとして道路を横断中に、折から進行してきた自動車にはねられて死亡した災害は業務上とされている。

(B)自動車運転手Aは、道路工事現場に砂利を運搬するよう命ぜられ、その作業に従事していた。砂利を敷き終わり、Aが立ち話をしていたところ、顔見知りのBが来て、ちょっと運転をやらせてくれと頼んで運転台に乗り、運転を続けたが、Aは黙認していた。Bが運転している際、Aは車のステップ台に乗っていたが、Bの不熟練のために電柱に衝突しそうになったので、とっさにAは飛び降りようとしたが、そのまま道路の外側にはね飛ばされて負傷した。このAの災害はAの職務逸脱によって発生したものであるため、業務外とされている。

(C)事業場施設内における業務に就くための出勤又は業務を終えた後の退勤で「業務」と接続しているものは、業務行為そのものではないが、業務に通常付随する準備後始末行為と認められている。したがって、その行為中の災害については、労働者の積極的な私的行為又は恣意行為によるものと認められず、加えて通常発生しうるような災害である場合は、業務上とされている。

(D)上司の命により従業員の無届欠勤者の事情を調査するため、通常より約30分早く「自宅公用外出」として自宅を出発、自転車で欠勤者宅に向かう途中電車にはねられ死亡した災害は業務上とされている。

(E)明日午前8時から午後1時までの間に、下請業者の実施する隣町での作業を指導監督するよう出張命令を受け、翌日、午前7時すぎ、自転車で自宅を出発し、列車に乗車すべく進行中、踏切で列車に衝突し死亡したが、同人が乗車しようとしていた列車が通常の通勤の場合にも利用していたものである場合は、通勤災害とされている。



■解説

(A)正解
法7条、昭和32年7月19日基収4390号
就業中の労働者の行為は、一般に業務行為であるが、その間においても、用便や飲水などの行為によって、一時的に業務行為から離れ、作業が中断される場合がある。これらの用便行為等は、業務行為そのものとはいえないが、それが生理的必要によるものである限り、業務行為に付随する行為とみることができる。
このことから、定期便トラックの運転手が運転途上食事のために停車し道路横断中に生じた死亡事故は、業務上とされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、作業時間中に飲水のために立入禁止区域に入ろうとしてドック内に転落した労働者の死亡(昭和23年9月28日基収2997号)、作業時間中に用便に行く途中の事故(昭和24年11月22日基収5759号)、風に飛ばされた帽子を拾おうとして自動車にはねられたトラック助手の死亡(昭和25年5月8日基収1006号)、自動車前方の日蔭に降りて手待時間の仮眠中における運転助手の轢死事故(昭和25年11月20日基収2970号)、作業時間中炊事場へ湯を飲みに行きその帰途で生じた負傷事故(昭和26年9月6日基災収2455号)は、いずれも業務上とされている。

(B)正解
法7条、昭和26年4月13日基収1497号
作業中に発生した災害は、大部分が業務災害であると思われるが、災害発生の具体的事情によって、果たして業務に従事していたといえるかどうか、業務に従事していたとしてもその災害が業務外の事由によって生じたものでないかどうかを考えて業務上外の認定をする必要がある。
問題文の事例のように、顔見知りの他人の興味に応じて運転をさせて生じた事故による砂利トラック運転手の負傷は、恣意的行為、業務逸脱行為といえ、業務に必要又は合理的行為ともいえないため、業務外の負傷といえる。
よって、問題文は正解となる。
なお、泥酔してトラックから転落した助手の死亡(昭和24年7月15日基災収3845号)、人員整理に関し会社と労働組合との抗争中に被解雇者が強行就労し、作業中に負傷した場合(昭和28年12月18日基収4466号)は、いずれも業務外の負傷とされている。

(C)正解
法7条、昭和50年12月25日基収1724号
事業場施設内における業務に就くための出勤または業務を終えた後の退勤で「業務」と接続しているものは、業務行為そのものではないが、業務に通常付随する準備後始末行為と認められる。
準備後始末行為は、業務と接続する行為と認められること、災害が労働者の積極的な私的行為または恣意行為によるものとは認められないこと及び災害が通常発生しうるような災害であるときには、事業主の支配下に伴う危険が現実化した災害であるとされ、業務災害として取り扱うことされている。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
法7条、昭和24年12月15日基収3001号
通勤(出勤及び退勤)は、労働者の業務に必然的に伴うものであり、その途上は業務と密接な関連性をもっているのは事実であるが、一般には、いまだ事業主の支配下にあるとはいえないから、業務遂行性はないことになる。したがって、その間に発生した災害は業務起因性が認められず、業務外の災害となるのが原則である。
しかし、同じく通勤途上の災害であっても、出勤途中又は退勤途中で用務を行う場合の業務遂行性の有無については次の諸点をもって判断し、これらの点について積極的に解すべき事情があれば一般に業務遂行性があるものとされる。
(1)事業主の業務命令があったかどうか。明示の業務命令はなかったとしても当該労働者として職務上当然行うことが予想される用務があったかどうか。
(2)用務の遂行にあたり、通常の通勤時間、通勤順路、通勤方法等と著しく異なった時間、順路、方法等による必要性があったかどうか。
以上の点から考えると、出勤途上に部下の無届欠勤者の事情調査(慣例による)を行うため欠勤者宅へ赴く途中の交通事故は業務上と判断される。
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
法7条、昭和34年7月15日基収2980号
出張中は、その用務の成否や遂行方法などについて包括的に事業主が責任を負っている以上、特別の事情がない限り、一応出張過程の全般について事業主の支配下にあるといってよく、一応その過程全般を業務行為とみるのが実際的である。しかしながら、その間にはさまざまな私的行為が行われ得るし、また、出張の性質上、ある程度私的行為が介在することは、むしろ通常あり得ることである。さらに、業務行為に含まれ得る付随行為の範囲も、事業主の管理下にある場合より広くなるのは当然である。
したがって、出張中の個々の行為については積極的な私用・私的行為等にわたるものを除き、それ以外は一般に出張に当然又は通常伴う行為とみて、業務遂行性を認めるのが相当である。
問題文の事例のように、乗車しようとしていた列車が通常の通勤の場合にも利用していたものである場合であっても業務災害となる。
よって、「通勤災害とされている。」とした問題文は誤りとなる。
なお、出張地外で催し物を見物後その帰途において生じた自動車事故(昭和27年12月1日基収4772号)、出張先において「子供に土産物を買いにいく」といって行方不明となり失踪宣告された場合(昭和36年12月26日基収3262号)は、業務外とされている。

  

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