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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成26年労災-第6問(事業主からの費用徴収)
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■平成26年労災-第6問(事業主からの費用徴収)

政府が保険給付を行ったとき、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収できる事故として、正しいものはどれか。

(A)事業主が重大でない過失により、保険関係の成立につき、保険関係が成立した日、事業主の氏名又は名称及び住所、事業の種類、事業の行われる場所その他厚生労働省令で定める事項を政府に届出していない期間中に生じた事故

(B)事業主が、労働保険の事業に要する費用にあてるために政府に納付すべき一般保険料を納付せず、その後、政府から督促を受けるまでの期間中に生じた事故

(C)事業主が、労働保険の事業に要する費用にあてるために政府に納付すべき一般保険料を納付し、その後、重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故

(D)事業主が、労働保険の事業に要する費用にあてるために政府に納付すべき第一種特別加入保険料を納付せず、その後、政府から督促を受けるまでの期間中に生じた事故

(E)事業主が、労働保険の事業に要する費用にあてるために政府に納付すべき第二種特別加入保険料を納付せず、その後、政府から督促を受けるまでの期間中に生じた事故



■解説

(A)誤り
法31条1項
事業主が、故意又は重大な過失により労災保険に係る保険関係成立届の提出を怠っていた期間(事業主が所定の納期限までに概算保険料申告書を提出しないため政府が当該事業について職権により概算保険料の額をしたときは、その決定のあった日の前日までの期間)中に発生した業務災害又は通勤災害について保険給付を行った場合には、事業主の注意を促すため、政府はその保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することとされている。
よって、「重大でない過失」の場合は事業主からの特別の費用徴収は行われないため、問題文は誤りとなる。
なお、「故意又は重大な過失」については、所轄労働基準監督署長等から加入勧奨を受けたにもかかわらず、相当期間内に保険関係成立届を提出しない場合には、当該未手続事業主が労災保険に係る保険関係成立届の提出を怠っていたことについて故意又は重大な過失があるものとして取り扱われている。

(B)誤り
法31条1項
事業主が概算保険料を納付しない期間(督促状に指定する期限までの期間は除く。)中に発生した業務災害又は通勤災害について保険給付を行った場合には、政府はその保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することとされている。
よって、事業主からの特別の費用徴収の対象となるのは、督促状の指定期限を過ぎても納付しない間(天災事変その他やむを得ない事由により保険料を納付することができなかったと認められる場合を除く。)に生じた事故であるため、「政府から督促を受けるまでの期間中に生じた事故」とした問題文は誤りとなる。
なお、概算保険料について延納が認められている場合においては、事故発生の日の属する期について保険料が完納されていれば、その前期について保険料の滞納があっても、費用徴収の対象とはならない。

(C)正解
法31条1項
事業主の故意又は重大な過失によって発生した業務災害について保険給付を行った場合には、政府はその保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、通勤災害については、業務災害の場合と異なり、故意又は重大な過失のある事業主からの費用徴収について規定していないが、これは、通勤災害については、事業主の支配下、管理下で発生するものでなく、事業主にその防止責任を問い得ないものだからである。

(D)誤り
法34条1項
保険事故が、第1種特別加入保険料が滞納されている期間中に生じたものであるときは、政府は、当該事故に係る保険給付の全部又は一部を行わないことができる。これらの者の業務災害の原因である事故が事業主の故意又は重大な過失によって生じたものであるときも同様とすることとされている。
よって、「第一種特別加入保険料を納付せず、その後、政府から督促を受けるまでの期間中に生じた事故」について事業主からの特別の費用徴収の対象とした問題文は誤りとなる。
なお、法31条1項の規定による事業主からの特別の費用徴収は、事業主の責めに帰すべき事由などにより保険給付を行った場合に、その保険給付に要した費用を当該事業主から徴収することができる旨を定めるものであるが、特別加入した中小事業主等は、その実態は事業主か、さもなければ事業主と一心同体ともいうべき家族従事者などであるので、これらの者に保険給付を行い、それに要する費用を事業主から徴収する制度は、いたずらに保険事務を煩雑にする結果となるため、事業主の責めに帰すべき事由などにより中小事業主等に保険給付を行うことになった場合には、当該保険給付の支給制限を行うこととし、法31条の規定にはよらないことにしている。

(E)誤り
法35条1項
保険事故が、第2種特別加入保険料が滞納されている期間中に生じたものであるときは、政府は、当該事故に係る保険給付の全部又は一部を行わないことができることとされている。
よって、「第二種特別加入保険料を納付せず、その後、政府から督促を受けるまでの期間中に生じた事故」について事業主からの特別の費用徴収の対象とした問題文は誤りとなる。
なお、法31条1項の規定(事業主からの特別の費用徴収)は、事業主の責めに帰すべき事由などにより保険給付を行った場合に、その保険給付に要した費用を当該事業主から徴収することができる旨定めるものであるが、事業主とみなされる団体は、あくまで保険技術上の擬制事業主であり、保険料の実質的負担は特別加入している一人親方等及び特定作業従事者であるので、これらの者に保険給付を行い、それに要する費用を当該団体から徴収する制度は、擬制事業主を実質的な事業主同一に扱う不合理があるばかりでなく、いたずらに保険事務を煩雑にし、ひいては、当該団体と一人親方等及び特定作業従事者との間に複雑な内部問題を残し結果になりかねない。そこで、第31条の規定によらず、第二種特別加入保険料滞納期間中の事故については支給制限を行うこととされている。

  

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