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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成28年労災-第2問(業務起因性)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成28年労災-第2問(業務起因性)

業務起因性に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)道路清掃工事の日雇い労働者が、正午からの休憩時間中に同僚と作業場内の道路に面した柵にもたれて休憩していたところ、道路を走っていた乗用車が運転操作を誤って柵に激突した時に逃げ遅れ、柵と自動車に挟まれて胸骨を骨折した場合、業務上の負傷と認められる。

(B)炭鉱で採掘の仕事に従事している労働者が、作業中泥に混じっているのを見つけて拾った不発雷管を、休憩時間中に針金でつついて遊んでいるうちに爆発し、手の指を負傷した場合、業務上の負傷と認められる。

(C)戸外での作業の開始15分前に、いつもと同様に、同僚とドラム缶に薪を投じて暖をとっていた労働者が、あまり薪が燃えないため、若い同僚が機械の掃除用に作業場に置いてあった石油を持ってきて薪にかけて燃やした際、火が当該労働者のズボンに燃え移って火傷した場合、業務上の負傷と認められる。

(D)建設中のクレーンが未曽有の台風の襲来により倒壊するおそれがあるため、暴風雨のおさまるのを待って倒壊を防ぐ応急措置を施そうと、監督者が労働者16名に、建設現場近くの、山腹谷合の狭地にひな壇式に建てられた労働者の宿舎で待機するよう命じたところ、風で宿舎が倒壊しそこで待機していた労働者全員が死亡した場合、その死亡は業務上の死亡と認められる。

(E)以前にも退勤時に約10分間意識を失ったことのある労働者が、工場の中の2℃ の場所で作業している合間に暖を採るためストーブに近寄り、急な温度変化のために貧血を起こしてストーブに倒れ込み火傷により死亡した場合、業務上の死亡と認められる。



■解説

(A)正解
法7条、昭和25年6月8日基災収1252号
休憩時間中は、事業主の管理下にある限り、なお事業主の支配下にあり、その点では業務遂行性があるが、原則として自由行動を許されているのであるから、その間の個々の行為それ自体は私的行為といわなければならない。したがって、休憩時間中の災害は、それが事業場施設(又はその管理)に起因することが証明されない限り、一般には、私的行為に起因するものと推定され、業務起因性は認められないことになる。
しかしながら、休憩時間中の個々の行為には、それ自体としては私的行為であっても、もし就業中であったならば業務行為に含まれたであろうとみられるものがある。すなわち、用便等の生理的必要行為、作業と関連がある各種の必要行為、合理的行為等がそれぞれある。
このような行為は、一見それ自体としては私的行為とみられるものであっても、事業主の支配下にある限り、事業主の支配下にあることに伴う行為として業務に付随する行為とみるのが相当であり、単に休憩時間中という時間的区分のみをもって、就業中の業務的付随行為と認定上区分することは合理的ではない。このような業務付随行為とみるべき行為以外の積極的な私的行為(例えば、キャッチボール等)を行っている場合には、その間に発生した災害については、施設(又はその管理)に起因することが証明されない限り、一般に業務起因性を認めることができないのはいうまでもない。
問題文の事例のように、道路の傍らで休憩していた道路清掃日雇労働者の自動車事故は業務上の負傷に該当することとされた。
よって、問題文は正解となる。
なお、トロの安全設備不備による構内通行中の事故(昭和23年3月25日基災収1205号)、休憩中に水汲みに行って転落した日雇労働者の死亡、(昭和24年12月28日基災収4173号)、車両の多い現場内で休憩中の土工の自動車事故(昭和40年4月30日昭和39労第43号)、作業場近くの崖下の日蔭で昼食中の岩石落下による死亡(昭和27年10月13日基災収3552号)、休憩中に喫煙しようとしたところガソリンのしみた作業衣に引火し火傷した場合(昭和30年5月12日基発298号)、作業場近くの岩屋で昼食中の落盤事故(昭和33年2月12日基収574号)はいずれも業務上とされ、拾った不発雷管を休憩中にもてあそんで起こした爆発事故(昭和27年12月1日基災収3907号)は業務外とされた。

(B)誤り
法7条、昭和27年12月1日基災収3907号
休憩時間中は、事業主の管理下にある限り、なお事業主の支配下にあり、その点では業務遂行性があるが、原則として自由行動を許されているのであるから、その間の個々の行為それ自体は私的行為といわなければならない。したがって、休憩時間中の災害は、それが事業場施設(又はその管理)に起因することが証明されない限り、一般には、私的行為に起因するものと推定され、業務起因性は認められないことになる。
しかしながら、休憩時間中の個々の行為には、それ自体としては私的行為であっても、もし就業中であったならば業務行為に含まれたであろうとみられるものがある。すなわち、用便等の生理的必要行為、作業と関連がある各種の必要行為、合理的行為等がそれぞれある。
このような行為は、一見それ自体としては私的行為とみられるものであっても、事業主の支配下にある限り、事業主の支配下にあることに伴う行為として業務に付随する行為とみるのが相当であり、単に休憩時間中という時間的区分のみをもって、就業中の業務的付随行為と認定上区分することは合理的ではない。このような業務付随行為とみるべき行為以外の積極的な私的行為(例えば、キャッチボール等)を行っている場合には、その間に発生した災害については、施設(又はその管理)に起因することが証明されない限り、一般に業務起因性を認めることができないのはいうまでもない。
問題文の事例のように、拾った不発雷管を休憩中にもてあそんで起こした爆発事故は業務外の負傷に該当することとされた。
よって、問題文は誤りとなる。

(C)正解
法7条、昭和23年6月1日基発1458号
事業場施設の利用中、その利用に起因して災害が発生したときは、それが当該施設(又はその管理)に起因していることが証明されれば業務起因性が認められることになり、この証明がなければ、一般には業務起因性が認められないこととなる。
問題文の事例のように、作業開始前の焚火による火傷は業務上の負傷に該当することとされた。
よって、問題文は正解となる。
なお、寄宿舎浴場で入浴中の感電死(昭和23年1月7日基災発29号)、船中の給食による食中毒(昭和26年2月16日基災発111号)、造材事業場附属寄宿舎の火事による死傷(昭和33年9月8日基収3264号)、事業場附属寄宿舎内で火災を発生せしめ焼死した場合(昭和39年12月26日基収5754号)はいずれも業務上とされている。隣の飯場からもらった飯ずしによる食中毒(昭和32年7月31日昭和32労第4号)は業務外とされた。

(D)正解
法7条、昭和29年11月24日基収5564号
天災地変、すなわち暴風雨、水害、地震、土砂崩れ、雪害、落雷、噴火等は、それ自体としては業務と無関係な自然現象であるが、業務の性質や内容、作業条件や作業環境、あるいは事業場施設の状況などからいって、天災地変に際して災害を被りやすい事情にある場合には、天災地変による災害の危険も業務に伴う危険(又は事業主の支配下にあることに伴う危険)としての性質を帯びてくる。したがって、天災地変に起因する災害も、同時に、天災地変による災害を被りやすい業務上の事情があって、その事情と相まって発生したものと認められる場合には、業務に伴う危険が現実化して発生したものとして業務起因性を認めることができる。しかしながら、天災地変による被災の危険性の高い業務上の事情があっても、天災地変の規模が特に大きい場合には、業務起因性が問題とならないことがある。すなわち、そのような場合には、危険な業務上の事情がなかったとしても同じように天災地変によって被災してであろうと認めることがあるからである。
問題文の事例のように台風による寄宿舎倒壊による死傷は、業務上の災害とされた。
なお、大雨後の坑内浸水による溺死事故(昭和23年9月28日基収2565号)、台風による漁船乗組員の遭難(昭和24年9月5日基発785号、昭和24年9月9日基災収5084号)、暴風雨下の倒木による山林労働者の死亡(昭和25年4月12日基収469号)、落雷によって誘発されたダイナマイト爆発による負傷(昭和30年3月28日基収225号)、雪泡による飯場の倒壊での負傷(昭和31年2月29日基収1180号)、風雨下の船上作業中の落雷事故(昭和31年5月28日基収3399号)、暴風雨下の宿舎流失による死亡(昭和32年12月14日基収6974号)、火山爆発によりロープウェイ工事中の労働者が噴石を受けて死亡した場合(昭和33年8月4日基収4633号)、土砂崩壊による電車の埋没事故(昭和36年12月15日基収10062号)、土砂崩壊によるバスの埋没事故(昭和38年5月15日基収2034号)はいずれも業務上の災害とされ、他方、「カマイタチ」による裂傷(昭和31年1月31日基収6516号)、何ら設備に欠陥のみられない事業場における旋風による作業中の事故(昭和37年4月3日基収523号)は、いずれも業務外とされた。
よって、問題文は正解となる。

(E)正解
法7条、昭和38年9月30日基収2868号
作業中に発生した災害は、大部分が業務災害であると思われるが、災害発生の具体的事情によって、果たして業務に従事していたといえるかどうか、業務に従事していたとしてもその災害が業務外の事由によって生じたものでないかどうかを考えて業務上外の認定をする必要がある。
問題文の事例のように、就業時間中に寒冷のため作業場のストーブの傍に寄ったところ貧血を生じて昏倒し火傷により死亡した場合は、業務上の災害と該当することとされた。
よって、問題文は正解となる。
なお、電車の発車に際し乗客満員のためやむなく連結機に飛び乗ろうとして転落死した車掌の場合(昭和25年5月11日基収1391号)、上司の雑用をしていた用務員の感電死(昭和25年11月10日基収3237号)、野菜採取中に隣家の馬に蹴られた農業労働者の死亡(昭和34年4月28日基収141号)、建築作業中の突風による建物倒壊による負傷(昭和26年9月27日基災収1798号)、作業中にハブに咬まれた配管工の負傷(昭和27年9月6日基災収3026号)、強要されて道路工に運転させたために生じた運転手の事故(昭和30年5月21日基収457号)はいずれも業務上とされた。
また、泥酔してトラックから転落した助手の死亡(昭和24年7月15日基災収3845号)、顔見知りの他人の興味に応じて運転をさせて生じた事故による砂利トラック運転手の負傷(昭和26年4月13日基収1497号)、人員整理に関し会社と労働組合との抗争中に被解雇者が強行就労し、作業中に負傷した場合(昭和28年12月18日基収4466号)は、いずれも業務外の負傷とされている。

  

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