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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成29年労災-第5問(通勤災害)
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■平成29年労災-第5問(通勤災害)

通勤災害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)退勤時に長男宅に立ち寄るつもりで就業の場所を出たものであれば、就業の場所から普段利用している通勤の合理的経路上の災害であっても、通勤災害とは認められない。

(B)療養給付を受ける労働者は、一部負担金を徴収されることがある。

(C)移動の途中の災害であれば、業務の性質を有する場合であっても、通勤災害と認められる。

(D)通勤災害における合理的な経路とは、住居等と就業の場所等との間を往復する場合の最短距離の唯一の経路を指す。

(E)労働者が転任する際に配偶者が引き続き就業するため別居することになった場合の、配偶者が住む居宅は、「住居」と認められることはない。



■解説

(A)誤り
法7条2項・3項、昭和50年1月17日基収2653号
通勤経路を逸脱し又は中断した場合は、逸脱又は中断の間及びその後の移動は通勤に該当しないが、たとえ長男宅に立ち寄るつもりで就業の場所を出た場合であっても、就業の場所から普段利用している通勤の合理的経路上で災害にあったときは、通勤災害と認められる。
よって、「通勤災害とは認められない。」とした問題文は誤りとなる。

(B)正解
法31条2項・3項
通勤災害により療養給付を受ける労働者から一部負担金を徴収することとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、次の場合は一部負担金の徴収が除外されることになっている。
(1)第三者の行為によって生じた事故により療養給付を受ける者
(2)療養の開始後3日以内に死亡した者その他休業給付を受けない者
(3)同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者
(4)特別加入者

(C)誤り
法7条2項、法22条、昭和48年11月22日 基発644号、平成28年12月28日基発1228第1号
「業務の性質を有するもの」とは、当該移動による災害が業務災害と解されるものをいい、この場合は通勤災害でなく、業務災害となる。
よって、「通勤災害と認められる。」とした問題文は誤りとなる。
具体例としては、事業主の提供する専用交通機関を利用してする通勤、突発的事故等による緊急用務のため、休日又は休暇中に呼出しを受け予定外に緊急出勤する場合がこれにあたる。

(D)誤り
法7条2項、昭和48年11月22日 基発644号、平成28年12月28日基発1228第1号
「合理的な経路及び方法」とは、当該移動の場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段等をいうものとされている。
よって、「最短距離の唯一の経路を指す。」とした問題文は誤りとなる。

(E)誤り
法7条2項、昭和48年11月22日 基発644号、平成28年12月28日基発1228第1号
「住居」とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となるところを指すものとされている。
したがって、就業の必要性があって、労働者が家族の住む場所とは別に就業の場所の近くに単身でアパートを借りたり、下宿をしてそこから通勤しているような場合は、そこが住居である。さらに通常は家族のいる所から出勤するが、別のアパート等を借りていて、早出や長時間の残業の場合には当該アパートに泊り、そこから通勤するような場合には、当該家族の住居とアパートの双方が住居と認められる。また、長時間の残業や、早出出勤及び平成13年2月1日付け基発第75号通達における新規赴任、転勤のため等の勤務上の事情や、交通ストライキ等交通事情、台風などの自然現象等の不可抗力的な事情により、一時的に通常の住居以外の場所に宿泊するような場合には、やむを得ない事情で就業のために一時的に居住の場所を移していると認められるので、当該場所を住居と認めて差し支えない。
逆に、友人宅で麻雀をし、翌朝そこから直接出勤する場合等は、就業の拠点となっているものではないので、住居とは認められない。
よって、問題文は誤りとなる。
なお、転任等のやむを得ない事情のために同居していた配偶者と別居して単身で生活する者や家庭生活の維持という観点から自宅を本人の生活の本拠地とみなし得る合理的な理由のある独身者にとっての家族の住む家屋については、当該家屋と就業の場所との間を往復する行為に反復・継続性が認められるときは住居と認めて差し支えない。

  

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