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■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成29年労災-第7問(労災保険制度)

労災保険制度に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)労災保険法による保険給付は、同法所定の手続により行政機関が保険給付の決定をすることにより給付の内容が具体的に定まり、受給者は、それ以前においては政府に対し具体的な一定の保険給付請求権を有しないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

(B)労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使とはいえず、被災労働者又はその遺族の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

(C)最高裁判所の判例においては、労災保険法第34条第1項が定める中小事業主の特別加入の制度は、労働者に関し成立している労災保険の保険関係を前提として、当該保険関係上、中小事業主又はその代表者を労働者とみなすことにより、当該中小事業主又はその代表者に対する法の適用を可能とする制度である旨解説している。

(D)保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。

(E)
労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。



■解説

(A)正解
正木土建日雇労働者事件(昭和29年11月26日)
労働者災害補償保険法による保険給付は、同法所定の手続により行政機関が保険給付の決定をすることによって給付の内容が具体的に定まり、受給者は、これによって、始めて政府に対し、その保険給付を請求する具体的権利を取得するのであり、従って、それ以前においては、具体的な、一定の保険金給付請求権を有しないとするのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文は正解となる。

(B)誤り
中央労働基準監督署長(労災就学援護費)事件(平成15年9月4日)
労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当であるとするのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文は誤りとなる。

(C)正解
広島中央労働基準監督署長(労災特別加入)事件(平成24年2月24日)
中小事業主の特別加入の制度は、労働者に関し成立している労災保険の保険関係を前提として、当該保険関係上、中小事業主又はその代表者を労働者とみなすことにより、当該中小事業主又はその代表者に対する法の適用を可能とする制度とするのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
法12条の5第1項
保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されない。
よって、問題文は正解となる。
なお、「退職」とは、使用者による解雇、労働者の自由意思表示による任意退職、労働契約の期間満了による自動退職、定年退職等の理由の如何を問わず労働関係の終了することをいい、事業の廃止に伴う労働関係の終了も例外ではないとされている。

(E)正解
法12条の2の2第1項
労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わないこととされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、一般に故意とは、自分の行為が一定の結果を生ずべきことを認識し、かつ、この結果を生ずることを認容することをいう。ただし、被災労働者が結果の発生を認容していても業務との因果関係が認められる事故については、給付制限の適用はないとされている。(昭和40年7月31日基発901号)
また、「保険給付を行わない」としているのは、業務又は通勤との事故の因果関係が故意によって中断されるからである。

  

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