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■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成20年雇用-第7問(雇用保険制度)

雇用保険制度に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)厚生労働大臣は、事業主による届出又は被保険者若しくは被保険者であった者による請求がなくても、職権によって、労働者が被保険者となったこと又は被保険者でなくなったことの確認を行うことができる。

(B)国庫は、求職者給付(高年齢求職者給付金を除く。)及び雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金及び高年齢再就職給付金を除く。)に要する費用の一部を負担するが、その額は、当分の間、本来の規定による負担額の100分の55に相当する額とされている。

(C)教育訓練給付に関して厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練実施者が、偽りの証明をしたために教育訓練給付が不当に支給された場合、政府は、当該教育訓練実施者に対しても、教育訓練給付の支給を受けた者と連帯して、同給付の返還や納付を命ぜられた金額の納付をするよう命ずることができる。

(D)失業等給付の支給を受ける権利は、2年を経過したときは時効によって消滅するが、失業等給付の不正受給が行われたときに政府がその返還を受ける権利は、会計法の規定に従って、5年間これを行わないときに、時効により消滅する。

(E)雇用保険法における罰則には、いわゆる両罰規定が設けられており、法人(法人でない労働保険事務組合を含む。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して違反行為をしたときは、行為者に対する処罰に加えて、その法人又は人に対しても所定の罰金刑が科される。



■解説

(A)正解
法9条1項
厚生労働大臣は、事業主からの届出又は労働者からの確認請求のない場合であっても、職権で被保険者資格の得喪の確認をなし得ることになっている。
例えば、事業所廃止等で事業主が届出を怠り、一部の離職者から確認請求があったときに他の離職者について行われることが考えられる。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
法66条、法附則13条
国庫は、原則として、日雇労働求職者給付金以外の求職者給付(高年齢求職者給付金を除く。)についてはその要する費用の4分の1、日雇労働求職者給付金についてはその要する費用の3分の1、雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金及び高年齢再就職給付金を除く。)についてはその要する費用の8分の1、広域延長給付が行われる場合は、広域延長給付を受ける者の係る求職者給付に要する費用の3分の1を負担することとしているが、負担率については、当分の間、原則の負担割合による額の100分の55に相当する額とされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、就職促進給付、教育訓練給付、高年齢求職者給付金、高年齢雇用継続給付、雇用保険二事業については、国庫負担は行われない。

(C)正解
法10条の4第2項
教育訓練実施者が、偽りの証明をしたために教育訓練給付が不当に支給された場合、政府は、当該教育訓練実施者に対しても、教育訓練給付の支給を受けた者と連帯して、同給付の返還や納付を命ぜられた金額の納付をするよう命ずることができる。
よって、問題文は正解となる。
なお、具体的には、教育訓練について(1)教育訓練受講の事実がないにもかかわらず、偽造し、変造し、若しくは虚偽の記載をした支給申請書又は他人の支給申請書を不正に使用し提出した場合(2)他人の被保険者証又は受給資格者証を使用して虚偽の申請書を提出した場合、(3)教育訓練給付金についての不正の行為があるにもかかわらず、支給申請に係る公共職業安定所の調査・質問に虚偽の陳述をした場合が該当するとされている。

(D)誤り
法74条
失業等給付の支給を受ける権利、又はその返還を受ける権利若しくは納付命令に係る納付すべき金額を徴収する権利等の金銭債権の消滅時効は2年とされている。
よって、不正受給が行われた場合の返還命令等の場合の時効を「会計法の規定に従って、5年間」とした問題文は誤りとなる。
なお、民法は、一般債権は10年間行使しないときに消滅するとし、会計法は、金銭の給付を目的とする国の権利及び金銭の給付を目的とする国に対する権利は5年間で消滅するとしているが、雇用保険法における金銭の徴収権、保険給付を受ける権利等はその行使が容易であり、また、これらの権利関係をいたずらに長期にわたって不安定な状態の下に置くことは、煩雑な事務をますます複雑化するおそれがあるので、民法及び会計法に対する特別法的規定として、2年の短期消滅時効にかかわせることとしたものである。

(E)正解
法86条1項
法人(法人でない労働保険事務組合を含む。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関して、違反行為をした場合に、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても所定の罰金刑が科されることになっている。
よって、問題文は正解となる。
なお、この規定は、違反行為の防止のためには、単に行為者を罰するのみでなく、代表者、代理人等の行為について本人をも罰則の対象とすることにより、さらにその効果が期待されるからである。
また、罰金刑に限定されているのは、法人の場合は本質的に懲役刑は科し得ないわけであり、自然人の場合は不可能ではないが、連座的に懲役刑までを科するのは行きすぎと考えられるからである。

  

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