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■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法)




■家族療養費(法第110条)

1.家族療養費とは?
被扶養者が療養を受けた場合には、被保険者の対する「療養の給付(法第63条)」、「入院時食事療養費(法第85条)」、「特定療養費(法第86条)」、「療養費(法第87条)」に相当するものとして家族療養費が支給される。

2.被扶養者
被扶養者が被扶養者でなくなれば打ち切られる。(昭和29年5月17日保文発第6116号)

3.家族療養費の支給を受けるのは?
家族療養費の支給を受けるのは、被保険者であって被扶養者ではない。したがって、被保険者が死亡すれば打ち切られる。(昭和27年10月3日保文発第5383号)

4.自己負担額
(1)原則 
療養(食事療養は除く)につき算定した費用の額(その額が現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養の要した費用の額)の100分の30

(2)三歳未満の被扶養者
被扶養者が三歳に達する日の属する月以前である場合は、100分の20

※「三歳に達する日」とは、三歳の誕生日の前日であり、月の初日に生まれた者以外は、誕生月までの負担割合が100分の20である。

(3)70歳以上の被扶養者
1.原則
被扶養者(下記2の場合は除く)が70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合は、100分の10

2.例外
法第74条第1項第3号に該当する被保険者(70歳以上で一定以上所得の被保険者)その他政令で定める被保険者の被扶養者が、70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合は、100分の20

(参考)
政令で定める被保険者とは?
老人保健法の規定による医療を受けることができる者(法第74条第1項第3号に掲げる場合に該当する者を除く。)であって、その被扶養者が療養を受ける月の標準報酬月額が28万円以上の者。
ただし、被保険者及びその被扶養者(70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合に該当する者又は老人保健法の規定による医療を受けることができる者に限る。)について厚生労働省令で定めるところにより算定した収入の額が621万円に満たない者については、適用しない。

(4)食事療養を受けた場合
標準負担額を負担する。

(標準負担額)
1.原則
1日につき780円

2.例外
(1)市区町村民税非課税者(又は免除者)、標準負担額の軽減の適用により生活保護による保護を要しないようになる者
1日につき650円

(2)上記(1)の者の直近1年間の入院日数が90日を超えた場合
1日につき500円

(3)上記(1)(2)のうち、被保険者及び全ての被扶養者の所得が一定の基準に満たない場合等に該当する高齢受給者
1日につき300円

5.家族療養費の支給に関して準用される規定とその内容について
(1)療養の給付(法第63条)
療養の範囲は被保険者と同様。療養担当機関については、そのうち自ら選定する機関で療養をうける。

(2)保険医又は保険薬剤師(法第64条)
保険医療機関若しくは特定承認保険医療機関において被扶養者の診療に従事する医師若しくは歯科医師、又は保険薬局において被扶養者のための調剤に従事する薬剤師は、保険医又は保険薬剤師でなければならない。

(3)保険医療機関又は保険薬局の責務(法第70条第1項)
保険医療機関若しくは保険薬局又は特定承認保険医療機関は、被扶養者の療養を担当するにあたっては、保険医又は保険薬剤師に厚生労働省令で定めるところにより療養を担当しなければならない。

※厚生労働省令とは、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」、「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」のこと。

(4)保険医又は保険薬剤師の責務(法第72条第1項)
保険医又は保険薬剤師は、被扶養者の診療または調剤にあたり、厚生労働省令で定めるところに従って診療又は調剤にあたらなければならない。

※厚生労働省令とは、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」、「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」のこと。

(5)厚生労働大臣の指導(法第73条)
保険医療機関若しくは保険薬局又は特定承認保険医療機関は被扶養者の療養について、保険医又は保険薬剤師は被扶養者の診療及び調剤におついて、療養の給付又は特定療養費と同様、厚生労働大臣(地方社会保険事務局長の権限委任)の指導を受ける。

(6)療養の給付に関する費用(法第76条第3項から第6項)
被扶養者の療養についても診療報酬についても診療報酬についての割引契約を結ぶことができること(健康保険組合の場合は厚生労働大臣の認可(国の開設する保険医療機関等又は特定承認保険医療機関を除き、地方厚生支局長に委任)を得て)被扶養者に関する診療報酬についても保険者は審査・支払いをなすが、これに関する事務を社会保険診療報酬支払基金に委託することができる等。

(7)保険医療機関又は保険薬局の報告等(法第78条)
厚生労働大臣(地方社会保険事務局長にも権限を委任)は、被扶養者の療養についても、監査を行うことができる。

(8)保険者が指定する病院等における療養の給付(法第84条第1項)
事業主医局・薬局及び健康保険組合直営医療機関・薬局において、被扶養者に対して行われる療養についての準則は、療養担当規則の例による。

(9)入院時食事療養費(第85条第8項)
被扶養者が食事療養を受けた場合、保険医療機関等又は特定承認保険医療機関は、被扶養者に対して、費用の支払いと引換えに領収証を交付しなければならない。その領収証の記載にあたっては、被扶養者が保険医療機関等または特定承認保険医療機関に支払う費用の額のうち、標準負担額とその他の費用とを区分して記載すること。

(10)特定療養費(法第86条第6項)
被扶養者が特定承認保険医療機関において療養を受けた場合及び保険医療機関等において選定療養を受けた場合には、当該特定承認保険医療機関又は保険医療機関等は、被扶養者に対して、費用の支払いと引換えに領収証を交付しなければならない。その領収証の記載にあたっては、被扶養者が特定承認保険医療機関等に支払う費用の額のうち、健康保険上の自己負担の額といわゆる差額とを区分して記載すること。

(11)療養費(法第87条)
被扶養者についても、家族療養費の給付をなすことが困難な場合等においては、療養費の支給をすることができる。なお、この準用規定があるので、現物給付的取扱いが本則であると解されている。(昭和24年6月6日保文発第1019号)

(12)被保険者が日雇労働者又はその被扶養者になった場合(法第98条)
被保険者が資格喪失して、日雇特例被保険者となり、かつ、その被扶養者につき家族療養費の支給を受けていれば、法第98条の規定により家族療養費が支給される。

■家族訪問看護療養費(法第111条)

1.家族訪問看護療養費とは?
内容については、被保険者に対する訪問看護療養費と同様で、指定訪問看護につき、指定訪問看護に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定めることにより算定した費用の額の100分の70(被扶養者が3歳未満の場合は100分の80、70歳以上の場合は100分の90(一定以上所得者である70歳以上の被保険者の被扶養者である場合には100分の80)に相当する額が給付される。

2.被扶養者
被扶養者が被扶養者でなくなれば打ち切られる。(昭和29年5月17日保文発第6116号)

3.家族訪問看護療養費の支給を受けるのは?
家族訪問看護療養費の支給を受けるのは、被保険者であって被扶養者ではない。したがって、被保険者が死亡すれば打ち切られる。(昭和27年10月3日保文発第5383号)

4.家族訪問看護療養費の支給に関して準用される規定とその内容について
(1)訪問看護療養費の支給(法第88条第2項)
保険者は被扶養者が疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者であって、規則第67条の基準に適合している者であると認めるときは、家族訪問看護療養費を支給する。
ただし、他の訪問看護ステーションにより、現に指定訪問看護を受けているときは、この限りではない。すなわち、利用者は同時に二箇所以上の訪問看護ステーションから指定訪問看護を受けることはできない。

(2)被保険者証の提出(法第88条第3項)
被扶養者(または被扶養者であった者)は、指定訪問看護事業者から家族訪問看護療養費にかかる指定訪問看護を受けようとするときは、被保険者証を提出し、自己の選定する指定訪問看護事業者から指定訪問看護を受けることになる。

(3)訪問看護療養費の支給(法第88条第6項から第11項まで、及び第13項)
家族訪問看護療養費の現物給付方式、指定訪問看護事業者の利用者に対する領収証の交付、保険者の指定訪問看護事業者より家族訪問看護療養費の請求を受けたときの審査・支払い、当該審査・支払いの社会保険診療報酬支払基金への委託等

(4)指定訪問看護事業者の責務(法第90条第1項)
指定訪問看護事業者は、法第92条第2項に規定する指定訪問看護の事業の運営に関する基準、訪問看護を受ける者の心身の状況等に応じて、適切な指定訪問看護を提供しなければならない。

(5)厚生労働大臣の指導(法第91条)
指定訪問看護事業者及び当該指定にかかる訪問看護事業所の看護師その他の従事者は、被扶養者の指定訪問看護についても同様に、厚生労働大臣(地方社会保険事務局長にも権限を委任)の指導を受けなければならない。

(6)指定訪問看護の事業の運営に関する基準(法第92条第2項、第3項)
被扶養者の指定訪問看護に対しても、指定訪問看護の事業の運営に関する基準は厚生労働大臣が定める。このうち、指定訪問看護の取扱いに関する部分については、中央社会保険医療協議会に諮問しなければならない。

(7)指定訪問看護事業者等の報告等(法第94条)
厚生労働大臣(地方社会保険事務局長にも権限を委任)は、被扶養者の指定訪問看護についても、監査を行うことができる。

(8)被保険者が日雇労働者又はその被扶養者になった場合(法第98条)
被保険者が資格喪失して、日雇労働者になった場合で、かつ、その被扶養者につき家族訪問看護療養費の支給を受けていれば、法第98条の規定により引き続き家族訪問看護療養費が支給される。

■家族移送費(法第112条)

家族移送費の支給用件については、移送費の支給要件と同様。

(参考)
移送費の支給要件

■家族埋葬料(法第113条)

1.被扶養者が死亡したとき
(1)死産児の場合
死産児は被扶養者に該当にないので家族埋葬料は支給しない。(昭和23年保文発第898号)

(2)生産児死亡の場合
分娩後2、3時間経過した生産児死亡の場合は支給される。このような場合、戸籍上は氏名を記載しないときが多いが、事実を立証できるときに戸籍上の氏名の有無を問わず右のように取り扱う。(昭和22年7月3日保発第797号)

(3)行方不明になった場合
被扶養者が行方不明となり、生死不明のまま法定期間を経過したので家庭裁判所の失踪宣告を受けたときは、行方不明になった当時その被扶養者を扶養していた被保険者が失踪宣告のあったときに現に健康保険の被保険者であるときに限り、その被保険者に対して失踪宣告により死亡したとみなされた時点において被扶養者(引き続いて被扶養者であったものとみなす)の死亡があったものとみなして、家族埋葬料を支給する。(昭和32年9月13日保文発第7932号)

2.「被保険者に対し」の疑義解釈
別居したる兄弟共に被保険者である父(兄弟共に等分の扶養により生計を維持し弟と同居する父)が死亡したる場合の家族埋葬料は、いずれか一方に支給すべきか、両方に支給すべきか、一方に支給すべきとすれば、事実埋葬を行いたる埋葬認可申請人に支給すベきか、とい問題が生ずるが、弟と同居する父に対して、その弟が兄弟と共に等分の扶養費を負担している場合には、その父は弟である被保険者の被扶養者として取り扱い、その家族埋葬料は弟である被保険者にだけ支給すべきである。(昭和23年4月28日保発第623号)

3.家族埋葬料の支給金額
家族埋葬料の支給金額は10万円となっている。(施行令第40条)

■家族出産育児一時金(法第114条)

1.被扶養者が出産したとき
平成14年の法改正前は、「配偶者」と規定されていた。
よって法改正前は被扶養者である配偶者の出産のみに支給されていたが、現行はすべての被扶養者の出産に対して支給されるようになった。

(参考)
従来の規定(法改正前)では、例えば、妊娠中に配偶者と死別し、親である被保険者の被扶養者となった場合や、息子夫婦が失業し、当該被保険者の被扶養者となった場合に出産した場合等には、出産育児一時金が支給されないとい状況が生じ、従来より制度の見直しが求められていたため。

2.支給を受ける者
支給を受けるのは被保険者である。よって、家族出産育児一時金は、被保険者が死亡すれば支給されず、被保険者資格喪失後の出産については支給されない。

3.家族出産育児一時金
家族出産育児一時金の支給金額は30万円となっている。(施行令第36条)

  

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